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コラム・インタビュー

現役医師の医療コンサルが教える、医療機器導入にひそむ落とし穴~小児科編~

医療機器・システム
株式会社TTコンサルティング 医師 武井 智昭

独立を果たし、開業医として診療所を経営する立場になった医師は、しばしば診療所内の医療機器にも「独自のこだわり」を発揮しがちです。しかし、高額な医療機器を導入するときには、価格、使用頻度、果ては消費電力まで、細かい部分のチェックや比較検討が極めて重要になります。事例をもとに、失敗しない医療機器の導入のポイントを見ていきます。

「必要な機器」をすべてそろえるのは「不可能」な話

自分の診療所でおこなう検査に必要な機器をすべてそろえるのは、限られた予算では不可能です。

そのため、診療所への医療機器の導入は、経営者である院長が、実際に医療機器を使用するスタッフの立場で考えつつ、本体価格とランニングコスト、費用対効果を加味したうえで、購入するか、断念するのか、あるいはリース契約を結ぶのか、予算の範囲内で決める必要があります。

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費用面以外にも、勤務医であれば、病院の管理のうえで当たり前のように使用していた医療機器を、実際に自分の管轄で管理できるのか、自分の診療方針に本当に必要なのか、外注で対応できるのか、といったことを「経営者視点」で考え、決断する必要があります。

開業する診療科が内科系なら、血液検査の結果が迅速にわかるようにしたい、と思う院長は多いでしょう。とくに、「自動血球測定機器(白血球数、CRP)」「生化学検査測定機器(電解質、腎機能、肝機能、血糖など)」などのニーズは比較的高いと思われます。

このように、院長としては、自分自身の専門科目によって必要となる医療機器はある程度絞り込むことができますが、経営者としては、実際の来院患者数のうち、どれくらいの件数の検査を実施しているのか、というシミュレーションが必要となります。

開業を志すドクターの多くは、医療機器の本体価格について意識的にチェックしているようです。卸業者からも、ある程度ディスカウントされた額での販促を受け、なにを導入するか決定していることも多くあります。

しかし、購入時に注意をすべき項目はほかにもあるのです。

見通しの甘いまま医療機器を購入した顛末

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事例として、ある小児科が見通しの甘いまま医療機器を購入した顛末から、注意点をみていきます。

A小児科は、どのようなお子さんも、まずは自分自身で診察し、インフルエンザ・コロナウイルス・アデノウイルスなどの迅速検査はもちろん「子どもになにか起きてしまってはいけない」「すべて自院で完結したい」というコンセプトのもと、一般的には総合病院で実施するような血液検査のための自動血球測定機器(末梢血液検査とCRP)、生化学検査測定機器に加え、血液ガス分析機器、レントゲン検査、果ては輸液管理(点滴)まで、すべて購入をしたうえで開院しました。

診療のコンセプトとしては、実に素晴らしいものです。しかし、A小児科の院長には2つの視点が欠けていました。

ひとつ目は「実際の診療報酬算定による収入はいくらなのか」という視点です。

6歳未満の小児では、小児科診療料(初診599点)が包括されています。そのため、どれだけ検査をしても診療報酬で算定ができないという現実を、A小児科院長は知らなかったのです。

※令和4年4月の改定による点数です。なお、令和6年6月からは604点に引き上げられます。

もうひとつが「導入した医療機器の使用頻度は運営状態にマッチするのか」という視点です。

小児科は受診者の多くが未就学児であり、急性上気道炎・急性胃腸炎などの発熱性疾患も、ワクチンの普及などにより、発熱が続くといった重症化のケースは圧倒的に減少しています。

このため、迅速に血液検査を必要とする症例はほとんどなく、1日1~2例あればよいほうでした。さらに、生化学検査・血液ガス分析機器に至っては、月に1回も使用しないことも多く、常に洗浄液だけが機械の中を回っている、という惨憺たる状態となってしまい、保守契約費などのランニングコストばかりが高くつく結果となってしまったのです。

A医院の院長のように、どれだけ崇高な理念やビジョンを持っていたとしても、医療機器を活用できない、採算が取れない、といったことになれば、医院の経営状態に悪い影響を及ぼしかねません。

医療機器の導入には、診療報酬などの経営的な問題や、実際の患者ニーズとの乖離といった点を、値段の問題以上に入念にシミュレーションする必要があるのです。

「医療機器購入」のための戦略的視点4つ

それでは、医療機器の購入に関して、どのような戦略をとればよいでしょうか?

①本当に「開業時に必要」なのか

多くの医療機関は、開業時点では患者数もまだ多くありません。そのため、医療機器を使用する場面も少なく、開業当時からは必要でないものもあります。

したがって、ある程度受診患者数が増加して診療所の経営が軌道に乗り、受診患者の検査ニーズが増えてきてから、院内における追加投資(医療機器の追加購入)をする、という方法も選択肢のひとつです。

ドクターのなかには、「開院時からよい医療を提供しなければ、患者さんは増加しない」と自分で自分を洗脳してしまう方もいます。もちろん開業時のコンセプトは大事ですが、追加の資金調達ができるのか、導入するスペースがあるのか、メンテナンスできる人員を確保できるのか...といった点も、医療機器の導入には重要な要件となります。

②医療機器購入の方法

医療機器は、新品購入のみならず、中古品、リースなど、予算やニーズに合わせた購入方法が多数あります。

リース契約の場合は、中途解約が困難であり違約金が高くなる、全体的な支出が増加する、というデメリットもありますが、初期費用が少なくすむこと、月々の支払が一定のためペイするために必要な検査数も明確であること、保守契約などのメンテナンスがリース会社に委託できること、といったメリットもあります。

③診療報酬に生かされるか

前述のA小児科の例のように、迅速に血液データが判明する体制が整っていると、医師側でも治療方針を決めやすく、お子さんの発熱が続いて心配する親御さんの安心にもつながる、というメリットはありましたが、どれだけ検査を実施しても診療報酬に加算されない、ということを理解していませんでした。

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実際に導入する際には、医療機器を使用することによって生じる収入と、メンテナンスの費用・機器の価格を考えたうえで黒字運営になるかどうかを考慮する必要があります。

同時に、検査の所要時間や、故障時の対応(代替機の対応)なども契約時に把握しておく必要があります。

④様々な医療機器を試してみる

開業するドクターの多くは、開業前に勤務先で使用していた馴染みのある医療機器を選ぶ傾向にあります。

操作方法もわかっており、使い勝手がよい、というのが理由で、その気持ちはよくわかります。

しかし、先入観を持たずにさまざまな医療機器に触れ合うことで、本当に患者さんに必要なものかどうか、再考するきっかけになると思います。

ぜひ、導入を決める前にさまざまな医療機器に触れてみて、本当に必要なものを選ぶようにしましょう。

最後に、意外な盲点になるケースとして、電力が足りず医療機器が使えない、ということもあります。意気揚々とレーザー治療器やCTを導入したものの、テナント物件の電力では使用ができなかった...ということも実際に起こっています。

電気量が多すぎて診療所のブレーカーがたびたび落ちてしまうようでは、診療継続は不可能です。

必要な電気量やプラグに関しては必ずチェックをしてください。

株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭

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