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コラム・インタビュー

クリニック開業時の費用「どこまで〈経費〉として認められる?」...税理士が解説

お金の話
メディカルサポート税理士法人 代表税理士 鶴田 幸之

開業を決心すると、さまざまな人に会いに行ったり、開業セミナーに参加したりすることで、多くの出費が発生します。これらの「開業にかかった出費(以下「開業経費」といいます)」を、開業準備中からキチンと整理整頓しておくことで、後日大きな節税効果を得ることが可能です。ここでは、開業経費を上手に使う方法について見てきます。

どんなものが「開業経費」になる?

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クリニック開業準備において経費になるものの例として、まずは下記のようなものが挙げられます。領収書をきちんと整理して取っておくほか、帳簿にも記載しておくようにします。

  • 開業に関するセミナーへの参加費用(交通費含む)
  • 開業相談や打合せの際に発生した飲食代(手土産代や交通費含む)
  • 開業のために購入したPC代(インターネット回線代等を含む)
  • 開業用に作成した名刺、チラシなどの広告宣伝費
  • 専門書や事務用品などの購入費

上記のよくある費用以外の、見逃しがちな開業経費について下記にまとめました。

【車両】

開業後は自家用車をクリニックの車両として計上できますので、現在使用されている車両の売買契約書も保管しておいたほうが良いでしょう。

【冠婚葬祭費用】

クリニック開業に関し、お世話になっている方について、ご祝儀や香典をお渡しした場合、その金額も開業経費として計上して差し支えないでしょう。その場合、領収書はもらえませんので、結婚式であれば招待状、香典であれば香典返しの葉書にお渡しした金額を記載して領収書の代わりとします。

【領収書がないもの】

打合せの際に自販機でジュースを買って差入れた、セミナー会場までの電車の切符を購入したなど、出費があっても領収書がもらえないケースも発生します。この場合、出金伝票(100円ショップに売っています)に支出の内容を記載して、領収書の代わりとします。自販機代や切符代が1,000円以下など常識的な額であれば問題ないでしょう。

開業経費はいつまで遡っていい?

では、開業経費として認められるものは、どのくらいの期間まで遡ってOKなのでしょうか? 実は、その期間は明確には決まってはいません。「開業しようと思い立ち、準備を始めた時点からの出費」が開業経費となります。

したがって、数年前に発生した出費であったとしても、キチンと領収書が整理されており、支出の理由を税務署に証明することができれば、開業経費に入れても大丈夫です。

何年遡れるかよりも、クリニック開業とその出費の関連性が、客観的に証明できることのほうが重要だからです。

「開業経費」を最大限有効に活用する

まずは、税金の計算方法から学んでいきましょう。[図表1]を見て下さい。例えば、100円の売り上げがあったとして、その経費が80円、利益が20円だとします。

税金の計算は「利益20円」に対して税率を乗じますが、所得税等(住民税を含む)は累進課税をとっているため、利益が多額であればあるほど高い税金がかかることになります。

[図表1]税金計算のイメージ

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「売上100円-経費80円=利益20円」

つまり上記20円に課税される税額は、最低で3円(=20円×最低税率15%)、最高で11円(=20円×最高税率55%)となります。

開業準備にかかった経費は「開業費」という繰延資産(経費の塊のようなもの)として計上します。この開業費はとても便利なもので、任意償却(=経費にするタイミングを納税者が自由に決めることができる)となっています。

ということは、開業当初の大して利益が出ていないタイミングで開業費を経費にするよりも、クリニックの経営が軌道に乗り、多額の利益が出始めたときに経費にしたほうが、節税効果が高いことになります。

上記の場合、20円の開業費を税率15%の時に償却すれば節税効果は3円、55%のときに償却すれば節税効果は11円となり、同じ20円の開業費でも上手く使うことにより、節税効果は8円(=11円-3円)の差が生じます。

筆者の経験上、クリニックの経営が軌道に乗り、その結果として多額の利益(課税所得1,000万円以上)が出始めるのは3~5年後です。その頃になると税の負担感が増しますので、上手に開業費を償却(=経費にする)しながら納税額をコントロールし、その後タイミングを見計らって医療法人化を検討したほうがいいでしょう。

「開業挨拶状送付リストの作成」「HPの作成」を急ぐべきワケ

あくまでも私見ですが、これまでの経験上、開業にあたってはできるだけ速やかに「開業挨拶状送付リストの作成」「HPの作成」をしておくことをお勧めしています。

「開業挨拶状」の送付は、低コストで宣伝効果が高い!

開業挨拶状はコストが低い割には宣伝効果が高いため、できれば300名位には送りたいものです。そのため、送付リストを早めに作成しておきます。

仮に、挨拶状の送付代が1枚当たり100円だとすると30,000円(=@100×300名)のコストがかかります。

内科の場合、患者1人当たりのレセプト単価は平均して約10,000円ですから開業挨拶状をきっかけとして3名以上、つまり1%(=3名÷300枚)の患者様に来院してもらえれば、コストはペイします。

筆者の経験上、挨拶状を見て診療に訪れる方は、1%以上はいらっしゃいます。その点からも、これから出会うさまざまな方と積極的に名刺交換を行っておき、送付先を増やしてみてはどうでしょうか。

早めにHPを作成し、ある程度「育成」して準備する

HPは、作ったからといってすぐに検索エンジンでヒットする訳ではありません。通常は検索エンジンでヒットするまでに、約1ヵ月程度かかります。

検索エンジンにヒットするかどうかで、アクセス数は大きく変化します。早めにHPを作成しておき、HP内のブログ等を更新しておきましょう。開業挨拶状にもURLを記載しておくと、検索する人が増えてヒットしやすくなります。HP業者が用意したテンプレートを使って作成しただけでは、だれもHPを見てくれません。

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「医師になろうと思ったきっかけ」、「地域医療に貢献できること」などドクターのパーソナリティをいかに親しみやすくHP上で表現するかが大切です。そのように考えると、HPの作成そのものよりも、HPへ載せる記事作りのほうを、早めに着手すべきかもしれません。

開業時の集客と告知ルートを考える

以下は、福岡近郊のベッドタウンにあるクリニックの開業時の実際のデータです。

[図表2]開業後1年間の患者ルート

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【仮説】

クチコミでの来院は、わずか10%のみです。つまり、90%の患者様がクチコミ以外の理由で来院していることになります。したがって、開業当初は「いかにわかりやすい告知をするか」が最も重要だと思われます。

[図表3]月ごとの患者ルート

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【仮説】

HP作成の効果が出始めるのは、4~6ヵ月程度経過してからだと考えられます。つまり、クリニック開業時直後のスタートダッシュを考えた場合、「HPを作ったから大丈夫」と安易に考えるのではなく、内覧会やポスティング、看板などのわかりやすい告知方法が重要であるといえます。

これらの情報が開業されるドクターの皆さまのお役に立つのであれば幸いです。

メディカルサポート税理士法人
代表税理士 鶴田 幸之

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