コラム・インタビュー
クリニック開業時の「融資」を通すポイント...最新の傾向と対策【現役医師が助言】

個人によるクリニックの開業には、診療科や立地条件にもよりますが、5,000万円から1億円の資金が必要とされています。しかし、この資金を自己資金だけで賄うことのできる方はほぼいないため、多くの医師は融資を認可されたうえでの開業となります。ここでは、開業時に融資を受ける時に留意するポイント、融資をより有利な条件で認可されるポイントなどをお伝えします。
0.1%の金利の違いが、返済額にも経営にも大きく影響

資金繰りの上での重要なポイントは、なんといっても「金利」です。クリニックの開業では多額の借り入れを行うため、わずか0.1%の違いが総返済額や経営に大きく響いてきます。
お金を貸す側も、リスクがなさそうなら低金利で、リスクが懸念されるなら金利を上げていきます。そのため、複数の金融機関と粘り強く交渉し、比較検討するのがよいでしょう。
一般的に、融資先は都市銀行・地方銀行・医師信用組合が多い傾向ですが、金利は1.5~2.0%以下で抑えることを推奨します。2.1%~3.0%など高い場合は、心証がよくない、リスクがありそうだと認識されていると思ったほうがいいでしょう。
借入先の候補
下記、借入先の候補について見ていきましょう。
都市銀行
都市部を中心に全国へ支社・支店を展開しており、資本となる資金・信用力があります。主に規模の大きい法人・富裕層が対象です。ローン商品のラインナップも多い反面、審査は医師の人間性・ビジョンよりは、経営の成否という収益性を優先する傾向があります。
地方銀行
地域密着型の銀行ですが、地域における支社・支店数が多く、地元でのさまざまな情報を有しています。地域貢献も目的のひとつであることから、開業後にも長い付き合いとなりやすい傾向です。医師・スタッフの給与振込指定のほか、地元ならではの住宅ローン、個人的なローンなども利用することで、クリニックと金融機関がWIN-WINの関係を構築しやすいといえます。
医師信用組合
医師会が関与し、医師会加入を前提とした医師信用組合は、開業ローンに融通が利くことが多いといえます。医師会員の相互扶助も目的のため、さまざまなローン商品があります。医師会加入ローン(300万円程度、無利子)をエントリーモデルに、以後は医療機器購入・運転資金・施設増改築、職員の賞与支給などのクリニック関連のものから、個人・法人として自動車購入、ご子息の医学部教育ローン、フリーローンなど生活に密着した商品も多くあります。担保がなくても8,000万円、担保があれば1億を超える融資でも、有利な金利での提案事例もあり、返済期間も10~35年までと配慮されています。
返済能力の判断基準について
返済能力の判断は、クリニックの売上(保険+公費+自費)から、職員の給与・家賃・光熱費・薬品代の経費を引いて算出した利益の割合が重要となります。3年経過で利益率20%超見込みがあるかどうかなど、長期的な目線での審査が実施されます(3年経過で赤字見込みなら当然不可ですが)。とくに都市銀行ではこの審査が厳しく、当然ですが、不採算案件には融資しません。
例として、一般的な内科クリニックで年間6,000万円の売上とする場合、内科の診療単を7,500円とすると、年間8,000人、月にして666人、月20日稼働として33人の患者来院が基準となります。
損益分岐点となる患者数を算出してから、クリニックに必要な床面積・スタッフの数(20~25名に1名程度)を算出すれば、テナント料・内装工事代金・人件費なども試算が可能となります。このため、物件を探すにあたり、見込みの売上と患者数から、クリニックの面積・規模・営業スタイルを考えることで、初期に必要な資金が算出できます。
最も重要なのは「面談」
これまでの融資では、「提出された事業計画書に基づく収支見込」という数字が重視されてきましたが、近年では、開業予定医師のビジョン・人間性・そしてキャリアを審査で重要視する傾向となってきました。
金融機関のスタッフは面談において、ドクターの人柄と人間性、誠実性を重視しています。また、コミュニケーションをしっかり取れるか、常識的な社会性を有しているかも評価します。

金銭の貸し借りは信用をもとに成立します。これまでのキャリアから、開業予定の地域医療のみならず、福祉・介護、地元町内会・商工会などを含めて馴染めそうか、今後のクリニックのビジョンを未来志向で明るく話せるか、今後も長いお付き合いをしたいと思えるか...等の観点から好印象を持たれた医師なら、信用され、融資も有利に展開されるといえます。
開業の理念・コンセプトは明確か
同時に、開業の理念・コンセプトが明確であることも重要です。とくに近隣クリニックとの差別化を明確に説明・アピールできることは、融資獲得に必須です。「導入予定の医療機器による専門性」「365日の診療・準夜帯も診療」「年齢を問わず家族を診療する」などが具体例です。
開業の動機、クリニックのセールスポイントを事業計画書に集約し、それを展開して自分の言葉で説明できることが重要です。「〇〇のメディア出演多数」「△△注射を売りにした営業展開での増患」等の内容では、事業計画としては難しいといえます。
開業時には、いくつかの金融機関と交渉を行いますが、融資不可となることも、融資を承認されても予定融資額を下回ることも、利率が高いこともあるでしょう。
金融機関ごとに審査基準・審査をする人も異なりますが、融資が不利になった場合は、事業計画書を指摘事項などに基づいて適宜ブラッシュアップを粘り強さも重要です。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者 株式会社コスモス薬品
本社は福岡県福岡市博多区。東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33期連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業支援にも注力し、2024年現在、開業物件数は約350店舗。
集患に有利なドラッグストア併設型クリニックを全国各地で提案している。

弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。