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コラム・インタビュー

いくら問題アリのスタッフでも...いまの時代は絶対NG!「パワハラ退職奨励」の恐るべきリスク

採用・教育・労務
株式会社TTコンサルティング 医師 武井 智昭

クリニックを運営するなかで、組織風土の状況や能力や性格の違いによって、スタッフ間に軋轢が生じることがあります。クリニックを管理・運営する院長・事務長としても、退職してほしいスタッフがいる場合には、常勤・非常勤などの雇用形態に関わらず「退職勧奨」を行う必要性があります。しかし、その方法を誤ると、退職の無効・損害賠償請求・労働基準監督署からの立ち入り調査などに発展するリスクがあります。ここでは、「パワハラ退職勧奨」になりかねない危険なケースと、その回避方法について解説します。

退職勧奨の手順

退職勧奨による自己都合退職への誘導には、最低でも3回の指導・面談が必要です。

前提として、クリニック全体を掌握している院長あるいは事務長は、スタッフからの苦情や業務上のトラブルなどの相談を事前に受けていることが多いと思います。

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まずは、相談に来る職員から、事実に客観性があるかを確認します。可能であれば、他のスタッフ(業種を変えた視点がよい)からも類似の意見があるかどうかを確認します。

①該当スタッフとの面談・指導

クリニックの院長は、まず当該スタッフに話をして、クレームが出た内容の事実確認を淡々と行い、改善策を一緒に考えます。この時点から、指導内容などを記録に残してください。

②該当スタッフとの再度の面談・指導

以後、1~2週間以上の期間をもって改善がない場合には、再度面談・指導を行います。ここで、実際の生じたトラブルの内容と、クリニックの営業としての損害(例としてワクチンの請求ミス、会計のミス、処置困難、ミスコミュニケーションなどの例)を話します。2回目の時点で、今後改善がない場合には退職勧奨もせざるを得ない旨を通告します。

③該当スタッフとの3度目の面談

3回目の時点での面談があれば、当該スタッフも「いよいよか」と理解することになります。告知内容は2回目と同じですが、累計したクリニックとしての損失という客観的事実を伝え、スタッフとして雇用継続はむずかしいこと、退職時期などを具体的に進めていきます。

許されない「パワハラまがいの退職勧奨」の具体例

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従業員を追い詰める

退職勧奨において、クリニックの管理者側は優位にあることを忘れてはなりません。退職の同意を得ようとするあまり、急ぎ口調となり、心理的に退職へと追い込むことで、相手が「パワハラ」と認識すれば、その行動はNGとなります。

身体的かつ精神的な攻撃

スタッフに直接的な暴力を振るうことは言語道断ですが、大声で怒鳴る、「お前なんかやめてしまえ」などと罵倒する、椅子や机・本を叩いて威圧的な態度をとるなどはすべて厳禁です。ひと昔前の熱血漢にはありがちですが、このご時世では時代錯誤です。

過大な要求を突きつける

他スタッフに比べて過大な目標や日常業務を突きつけ、実行できなかったことを叱責して自信喪失させ、退職を仕向けるという方法も不可です。反対に、「追い出し部屋」に閉じ込めて他スタッフとの交流を断つ、仕事をわざと与えないといった行為も、精神的なダメージとなりパワハラ認定されます。

従業員のプライベートを追及する

親族の介護や子どもの教育など、クリニック運営とはまったく関係がないプライベートなことを詮索し、それを理由として退職を迫ることもパワハラ認定されます。

パワハラ認定された場合のリスク

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当該スタッフが少しでも疑義を残した場合には、再度、スタッフを変えて退職勧奨を時間かけて実行することが望ましいといえます。このとき、退職勧奨をしたのが院長であれば事務長が再度行うなど、ボイスチェンジをすることも大事です。

それでも、相手が少しでも退職勧奨を「パワハラ」と思ったのであれば、民事訴訟へと発展するリスクがあります。また、その結果として退職が無効となった場合、下記のリスクがあります。

従業員への金銭支給

クリニックは当該スタッフに対して職場を離れた期間での見込み賃金の支給(民法536条)、これに加えて管理者への安全配慮義務違反(労働契約法第5条)、使用者責任(民法第715条)に基づき、追加として損害賠償請求が課せられます。

退職の無効

従業員による退職意思が会社の強制と判定された場合には、退職そのものが無効となり、雇用を継続する必要があります。解雇を主張しても解雇権濫用となり受理されません。この場合、他スタッフが人間関係悪化や雰囲気の悪化を懸念して退職という流れを避けることはむずかしいといえます。

退職勧奨は慎重に...プロへの相談も不可欠

パワハラ認定されてしまえば、上記のみならず、厚生労働大臣による行政処分や労働基準監督署の立ち入り調査なども相次いで発生するなど、診療に支障が生じるケースも考えられます。

あくまで退職勧奨は任意(当該スタッフ)の意見を尊重し、それでも困難であれば普通解雇として取り扱う、退職金の増額などの手段をとる、といったことも大切です。トラブルを未然に防ぐためにも、事前に社労士・弁護士を含めて相談することを推奨します。

株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭

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