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コラム・インタビュー

医師の「働き方改革」が〈クリニック開業〉〈クリニック経営〉に与える影響

採用・教育・労務
医療法人 梅華会 理事長 梅岡比俊

前回の記事『いよいよ迫る2024年...「医師の働き方改革」が病院勤務医に与える影響は?』では、働き方改革が及ぼす影響について勤務医の目線でお話しましたが、今回は経営者の目線から、クリニック開業やクリニック経営に与える影響について解説します。

患者様が増えれば、業務量が増加するのは必然

筆者はこれまでにたくさんの経営者を見てきましたが、経営がうまくいく医師は、患者様も多く抱えています。

患者様がたくさん来院されるということは、そのぶん、事務作業が増加します。事務作業が増加すれば、残業も増えることになり、それらに対処するために人を雇用すれば、そのぶん教育に労力がかかり、また、人間関係の問題が発生するリスクも上がります。

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一方、経営者になると、労働基準法でいう「役員」として扱われることから、雇用保険には加入できず、労働時間の上限もありません。

仕事量が増えると、自分ひとりでは首が回らなくなる可能性がありますが、首が回らなくなったとしても、それが人生において本当にやりたいこと、打ち込みたいことであり、自分が納得してやっているのであれば、それもひとつの選択だといえます。

「金銭的に余裕はできたが、時間がない」という状況でいいのか?

筆者がクリニックの開業医向けに運営しているコミュニティー「M.A.F」(https://maf-j.com/)でいつもお伝えしているのは、「医師にとって真の幸せはなにか」ということです。

経営がうまくいくことは、関わる人を広く幸せにするということです。つまり、スタッフ、患者様、取引先の方々すべてが幸せであり、なにより、経営者自身も幸せであることです。

ただし、先生たちが求めているゴールをどこに設定するかによって、幸せの考え方は異なります。これまで「金銭的に余裕はできたが、時間が足りない」という医師をたくさん見てきましたが、本当にそのような人生がよいものかどうか、深く考えていただきたいと思います。

筆者が2018年に出版した『ドクターの"働き方改革"28メソッド』という本にも書いたのですが、「ワークライフバランス」は極めて重要です。

開業医なら、医師の資産である「時間」をどう使うのか。

医師の時間を診察に使うのは当然ですが、医師でなくてもできることに使う時間を、どのようにして権限委譲するのかを考えてほしいのです。チームで仕事をするのであれば、医師としての働き方改革は、経営者の立場にある開業医に対しても通用すると、筆者は確信しています。

「働き方改革」が実現できた事例に倣い、スタッフに権限移譲しよう

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ですが、そこでひとつ問題が生じます。それは「チーム」で仕事をする以上、優秀な人材がいなければ、働き方改革は実現できないということです。

しかし、できないケースではなく、実現できた方々の状況をしっかりと確認してみてください。実現できていると思われる先輩や後輩、同僚の話を聞いてください。あるいは、いまの筆者を見て下さい。そこにヒントがあるはずです。

働き方改革実現のために「人を雇う」と決断する前に、いま現場にいるスタッフで、先生のことをよく知り、考え方を理解している人を活かすことを考えるのもひとつの方法です。

先生に付随している仕事は、日勤簿の管理や事務作業、税理士や銀行との折衝、あるいは患者様からのご指摘やトラブル対応まで、ありとあらゆる範囲のものがあるでしょう。

そのなかで「経営者でなくても、対応可能ではないか」という仕事があれば、それをスタッフに託してみてはいかがでしょうか。

筆者が知る限り、現場出身のスタッフは現場以外の仕事を好まない傾向にありますが、現場以外にも大事な業務は山ほどあります。それを理解してもらい、臆さずにやってもらいましょう。

現場ではない部分でクリニックの価値を高めるのはとても重要なことですが、それを経営者である医師がやるのは、経営者の貴重な時間を費やすということです。スタッフからは意見が出るかもしれませんが、先生でなくてもできる仕事をスタッフたちへと託していくことは、先生にとって大きな働き方改革につながるのではないでしょうか。

事務作業から、患者様との信頼関係づくりの時間へシフトしよう

この働き方改革こそ、真に医師をサポートするという意味で大事なことだと思っています。

権限をスタッフに委譲していき、経営者である医師は、いま日本政府が打ち出している方針に沿って、診療だけ行う態勢へと整えていくのです。

クラークを置くことも医師のサポートのひとつです。クラークを教育するのは大変ですし、人件費の負担増加もありますが、先生のこれから先何十年と続く開業医ライフのなかで、事務作業にどれだけ莫大な時間が費やされ、患者様とのコミュニケーションの時間を奪われるのかを考えてみてください。

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筆者は、患者様の目を見て話すことがなにより大切だと思っています。その大切な時間が事務作業で奪われるのは、あまりにもったいない話です。

大切な時間を事務作業ではなく、患者様とのコミュニケーションの時間に使うことで、患者様により信頼いただけるクリニック作りができると思います。

患者様も、薬だけをもらいにクリニックを訪れているわけではありません。医師とのコミュニケーションを通じて信頼関係が築かれ、治療への相乗効果へとつながっていきます。

筆者は開業して15年経ち、診察の時間こそ減りましたが、患者様との繋がりは心の底からいつも実感しています。

開業医の先生方、これから開業医を目指す先生方も、ぜひ患者様とのコミュニケーションに重きを置いた働き方改革を検討されてはいかがでしょうか。

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理事長 梅岡比俊

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