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コラム・インタビュー

いよいよ迫る2024年...「医師の働きかた改革」が病院勤務医に与える影響は?

経営・戦略
医療法人 梅華会 理事長 梅岡比俊

これまでの日本の医療は、医師の長時間労働によって支えられてきた側面があります。しかし、少子化の進展で医療を担う人材確保の困難が予想される一方、医療はますます高度化するなど、医師への負担増が懸念されます。そのような背景から、国民のためにも医師のためにも持続可能な医療提供体制を維持するため、「医師の働き方改革」が実施されることになりました。しかし、現状の医療現場と目標との間には大きなギャップが存在します。

「働き方改革」、実現できれば素晴らしいが...

現場に立つ医師や医療関係のスタッフの方ならおわかりのように、現在の勤務医の方たちの就労状況には余裕がなく、だれもがギリギリの状況に置かれています。

そのようななか、働き方改革による勤務上限が設定され、順守を求められるようになれば、医師たちは現状の勤務状況から脱却し、就労を軽減するためのさまざまな選択肢が求められることになります。もちろんそれには「よい部分」もありますが、同時に「悪い部分」もでてくるのではないかと、現場に立つ立場から懸念しています。

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まず「良い部分」ですが、これは医師が今までおこなっていた、いわゆる診療とは直接関係のない事務的な作業を軽減し、医師が一層診療に集中できるよう環境設定が進むだろうという点です。

もちろん、これまでも病棟にいるクラークが、書類関係やカルテ入力など、仕事をサポートしてきました。しかし実際には、すべての医療機関においてクラークによるサポートが行き渡っているわけではなく、やむなく医師自身が行っているというケースもままあります。

しかし、今回の働き方改革によって、医師には医師にしかできない業務だけを担っていただき、それ以外の業務は専任のスタッフが対応するという体制ができることで、医師の業務の負担軽減につながるといえるでしょう。

しかし「悪い部分」としては、医師の就労時間の点の線引きの問題が依然として残ることがあげられます。勤務終了後も、看護師からの電話で対応を求められるのはよくあることです。

このようなケースは、労働基準法に照らせば「勤務扱い」なわけですが、こういった事例の蓄積を明らかにすることで、医師の勤務時間が正確に申告できるしくみができれば素晴らしいでしょう。しかし、現状のような就労状況のまま「働き方改革」が実施され、就労の申告が行われれば、勤務時間が長すぎることで病院側はペナルティを課されるリスクがありますし、勤務する医師たちを守り切れていないとして、問題になる可能性も高いといえます。こういったリスクを回避するため、医療機関側の運用が「玉虫色」になってしまうかもしれません。

医師は強い使命感を持つ一方、労働基準法等については、一般の会社員の方々より知識のない方が多いのではないでしょうか。とはいえ、現場の医師たちも、現状に「仕事のあり方」という課題があることは理解しています。筆者も経験がありますが、当直の翌日にオペをするなど、珍しくありませんでした。これまで医療の現場で普通に行われてきたとはいえ、やはり働き過ぎなのであり、そんな「働き過ぎ」にならない体制を作ることが重要だといえます。

医師の働き方改革の実現は、「コメディカル」への権限委譲ができてこそ

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今回の「働き方改革」に関しては、暫定的に運用する面もあるようです。いきなりこれらを導入・実現するのは、やはり、非常に大変だと思われます。

コメディカルはもちろん、医師の働き方改革を明確に遵守していることをアピールする病院は、今後は増えてくるでしょう。

勤務医からすれば「働き方改革」を明確に順守する病院のほうが働きやすく、勤務医たちへの配慮があると感じられるはずです。医師も、忙しい職場にやりがいを見出すのではなく、無理のない環境で気持ちよく働き、スキルを磨いてキャリアを積みたい、さらに成長したいという思いがあるのではないでしょうか。

就労時間と自身の生活、そしてキャリア形成のバランスがとれているかどうかが、勤務医が職場を評価するポイントになるといえます。また、医療機関側も「医師には医師にしかできない仕事をさせている」と標榜できるところが増えればいいと思います。

一昔前、筆者は救急科にいましたが、当時は救命救急士が病院に駆けつけても、医師がいなければルート確保も気道の挿管行為もできませんでした。しかし現在はルールが変わり、医師の指示の下ではあるものの、ルート確保と挿管が救命救急士によってできるようになりました。

いままで医師にしかできなかったことを、看護師や救命救急士などのコメディカルの方ができるようにならないと、医師の働き方を変えたことにならないのではないでしょうか。

いまは血圧測定やカルテの問診、採血は看護師ができるようになりましたが、臨床検査技師は点滴できない、レントゲンは放射線技師しか撮れないなど、さまざまなルールがあります。

アメリカでは、看護師が医師と比較しても、かなりの裁量を任されています。医師の合格者数を需要に合わせて増やすことはできませんから、看護師も含め、医師をすぐにサポートできる体制が整っていることが大切なのです。

このような体制ができている病院は、勤務医からしてもとても魅力があります。

医師がやるべき仕事は多岐にわたりますが、実際は医師がやらなくてもいい仕事もあります。これらをしっかりと整えてトリアージしてくれる病院は、医師から見ても非常にありがたいと思います。

この改革を通して、医師が医師らしく、医師がやるべき仕事を、そして医師にしかできない仕事に注力できる環境になってほしいと期待しています。

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理事長 梅岡比俊

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