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コラム・インタビュー

「これは気づかなかった」...患者様の心をつかむコミュニケーション術

集患・増患対策
精神科クリニック 医療相談室 勤務/公認心理士/精神保健福祉士/キャリアコンサルタント/看護師/シニア産業カウンセラー 斎藤 利恵

コロナ禍の3年間、医療現場ではマスクが必須となったほか、オンライン診療など非対面のシーンも多く、スタッフと患者様とのコミュニケーションのあり方が課題となりました。しかし、その後も医療現場ではマスク着用が定着し、スタッフと患者様の円滑なコミュニケーションの実現は、診療内容のクオリティを左右する重要なポイントとなっています。患者様の満足度を高めるコミュニケーション術について見ていきます。

マスクが阻む、円滑なコミュニケーション

コロナ禍、医療現場ではマスク着用が必須となりました。しかしその結果、医療従事者・患者様の双方が「声が聞き取りづらい」「表情が見えず、感情がわかりにくい」ことに戸惑い、コミュニケーションに大変な思いをされたのではないでしょうか。

マスクによって、顔のなかでもとくに動きが大きい口元からの情報が制限されると、人はコミュニケーションに不安を感じやすくなってしまいます。

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また、オンライン診療の場面では、診察に必要な情報収集がPCやスマホの画面上だけという制限があるうえ、通信状況や実施場所などの環境の影響もあり、患者様の状態を適切に把握することのむずかしさがありました。

このように、制約のある診療場面で情報を取得するには、より高いコミュニケーション力が求められます。

患者様は、痛み、不安、緊張等といったさまざまな感情を抱えています。そのため、医師の指導や説明だけではなく、安心感や信頼感も強く求めています。

アメリカの心理学者のアルバート・メラビアン氏による「メラビアンの法則」では、他者とのコミュニケーションにおいて、相手から受け取る言語情報は7%に過ぎず、残りの93%は非言語情報だといわれています。つまり、非言語情報である身振り、手振り、表情、目の動き等の視覚情報や、声のトーン、話す速さといった聴覚からの情報等に、大部分を頼っていることになります。

患者様と「伝え合う協働関係」を実現するには、とくに非言語コミュニケーションを意識していくことが重要なのです。

「もっと伝わる」コミュニケーションを目指す

コロナ禍、医療従事者の方々は多くの制約があるなか、患者様とのコミュニケーションに細心の注意を払い、工夫を凝らしてこられたと思います。今後はそれらに一層の磨きをかけ、満足度の高い、円滑なコミュニケーションの実現を目指していきましょう。

「より伝わるコミュニケーション」を実現するための留意点を、以下にまとめてご紹介していきたいと思います。

傾聴の姿勢...患者様を受け止め、安心感を伝える

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患者様とのラポール=信頼関係構築には、「時間」ではなく、相手を理解しようとする「姿勢」が重要です。先入観を持たず、重要な場面では、最後まで聴く。口を挟まず、じっくり聴くことが大切です。

限られた診療時間内で、とくに重要な話題を伝えるとき、つらい心情を話しているときなど、患者様に身体、視線をむけ、「傾聴」の姿勢をはっきり見せていくことで「しっかり聴いてもらっている」という安心感が伝わります。

声のメリハリ...重要情報を際立たせ、信頼感を強める

大切なメッセージを伝えるときは、普段より声を少し高く、少しゆっくり、はっきり話します。そのような話し方で話されると、患者様側も話を聞きやすく、受け止めやすくなり、メッセージがスムーズに伝わります。

また、低めの声で語りかけると、患者様に落ち着いた印象を与え、信頼感を持っていただきやすくなります。そのため、詳しい説明などを行うときには、低めの声で対応することが望ましいといえます。

目元の表情...患者様の不安軽減に有効

笑顔になって口角が上がると、自然と眉尻も下がり、優しい表情になります。この表情によって、患者様の警戒心や不安感が和らぐとともに、こちら側のオープンマインドが伝わります。

患者様にアイコンタクトを取り、目線の高さを合わせることを意識することで、「あなたの存在をちゃんと意識しています」という、傾聴の姿勢が伝わります。

言葉の間合い...内容の理解と集中をうながす

会話をするにあたり、適切なタイミングで「間」を入れると、患者様が内容を理解・受け止める助けになるほか、話を聞き続ける集中力の維持にもつながります。とくに重要な内容を伝えるとき、あるいは話を切り替えるときに「間」を入れると伝わりやすくなります。

また、患者様の話を聞き、返答が思い浮かんでも、相手が話し終わってからひと呼吸(1秒程度)置いてから話し始めるようにしましょう。即座にリアクションを返してしまうと、患者様は話を遮られた、受け流されたと感じやすく、その結果、不信感を募らせ、関係がギクシャクしたものになりやすくなります。

ボディランゲージ...共感の姿勢を伝え、安心してもらう

患者様の話への頷きや相槌を普段の2倍ぐらいの強さで行うと「あなたの話を聞いていますよ」というメッセージが伝わります。「話を聞いてくれている」と実感した患者様は、安堵感を感じ、もっと相談したいという思いにつながります。

また、患者様が「腰が痛い」と腰をさすってみせたとき、こちらも自分の腰をさすり痛みを確認するなどして、患者様のしぐさや身振り手振りの動きに合わせることで、共感していることが伝わります。

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プラスアルファの言葉...気遣い、思いやりを伝える手法

こちらの思いや気持ちが伝わりにくいことをカバーするために、「ひとことプラス」の声掛けを意識しましょう。プラスの声掛けで、患者様の緊張がほぐれ、安心感を得て、この先生なら相談したいという思いにつながります。

たとえば、

「お足元の悪いなかよく来てくださいましたね」
「おひとりで悩まず、いつでも相談してくださいね」

など、患者様を気遣う言葉を添えると、こちらの思いやりの気持ちが伝わります。

言葉はもちろん、非言語の部分もよく意識し、コミュニケーション力の向上をはかっていくことが重要です。患者様に寄り添い、支え、患者様とともに安心できる治療関係の構築を目指していきましょう。

精神科クリニック 医療相談室 勤務
公認心理士/精神保健福祉士/キャリアコンサルタント/看護師/シニア産業カウンセラー
斎藤 利恵

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