コラム・インタビュー
クリニックのウェブサイトにおける広告規制「ガイドライン」からみた注意点
クリニックの運営にあたって極めて注意が必要なものに、ウェブサイトの運営があります。医療に関する広告は法令で様々な規制が課されているため、思いつくままコンテンツ作成・リリースを行ってしまうと、取り返しのつかないトラブルになりかねません。今回は、クリニックのウェブサイトの内容に課せられている規制と留意すべき点について解説します。
医療に関する広告は、法令で厳しく規制されている
近年では、どのクリニックもウェブサイトを運営しており、クリニック名、所在地、診療科目、診察時間、ドクター紹介など、多くの情報が盛り込まれています。いまは患者様がウェブ検索で病院選びを行うケースが多いことから、クリニックの特性や強みを理解してもらうため、いろいろな内容を盛り込み、記載したいと考えるのが通常でしょう。
しかし、医療広告には法律による厳しい制限があり、正しい理解のないままページ作成を行うと、法律に抵触するリスクがあるため、慎重を期す必要があります。
医療法6条の5などでは、医業や診療所に関して、虚偽の広告を行うことを禁止し、広告をする場合も、患者や利用者などの医療を受ける者が医療に関して適切な選択をすることを阻害しない基準で行うことなどを求めています。
そして、これらに反するような場合、都道府県知事などは、必要な報告を求めるほか、立ち入り検査を行うことができ、必要な場合には広告の中止や内容の是正を命じることもできます(医療法6条の8)。
また、虚偽の広告を行った場合には、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金の処せられる可能性があります(医療法87条1項)。
そのため、ウェブサイトが法令に違反していないかどうかは、制作業者に任せきりにせず、しっかりとドクター自身で確認する必要があるのです。
なお、厚生労働省は、医療法に基づく医療に関する広告規制の具体的な運用について、
- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000209841.pdf)
- 医療広告ガイドラインに関するQ&A(https://www.mhlw.go.jp/content/000371812.pdf)
- 医療広告規制におけるウェブサイトの事例解説書(第2版)(以下「事例解説書」)(https://www.mhlw.go.jp/content/000808457.pdf)
を公表していますので、これらの内容をしっかりと確認しておく必要があります。
クリニックの広告で留意すべき具体的なポイント
上記のガイドライン等の内容は多岐に渡るため、ここですべてを詳細に解説することはできませんが、とくに留意しておくべき点をいくつか説明します。
①虚偽広告
医学上あり得ない内容の表現は、虚偽広告とみなされることになります。
事例解説書では、
「どんなに難しい手術でも必ず成功させます!」
「当院の治療はどのような症例でも絶対に安全です!」
といった表記は医学上あり得ない内容の表現の虚偽広告であるとして例示されています。
このような極端な記載ではないにしろ、医学上あり得ない内容になっていないか、医師としてご自身の知見に基づいて判断する必要があります。
また、データの根拠(具体的な調査方法等)を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを示すものについては、虚偽広告として取り扱うこととされています。
事例解説書に記載された例では、
「医療脱毛患者様満足度99%」
とだけ記載するような場合は、データの根拠を明確にせず患者の満足度のみを示しているため不適切である、と示されています。
②比較優良広告
最上級の表現、その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても禁止される表現に該当するとされています。
事例解説書では、
「最高の医療」
「県内一の医師数」
「日本一の実績」
といった表現が挙げられています。
そして特定または不特定のほかの医療機関と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優れている、という旨の記事は、医療に関する広告としては認められないとされています。
事例解説書では、
「『□□医院様』や『△△クリニック様』よりも安く受診できます!」
「他の医療機関と比較して、インプラント手術の成功率が高いです」
といった表現が法令違反であるとして例示されています。
なお、ガイドラインでは、「最上級を意味する表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現を除き、必ずしも客観的な事実の記載を妨げるものではないが、求められれば内容に係る裏付けとなる合理的な根拠を示し、客観的に実証できる必要がある。調査結果等の引用による広告については、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期等を併記する必要がある」とされている点に留意が必要です。
③誇大広告
必ずしも虚偽ではないものの、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現している、一般人が広告内容から認識する『印象』や『期待感』と実際の内容に相違があり、人を誤認させるような広告は、医療に関する広告としては認められないとされています。
事例解説書では、「全身脱毛3年間し放題」という記載は、「実際には毛周期等の関係で回数は限られるが、『無制限』『し放題』『回数制限なく』の表記によって誤認を与える可能性がある」として不適切な記載方法の例に挙げられています。
また、科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の症状に関するリスク、または手術や処置等の有効性を強調することにより、医療機関への受診や手術へ誘導するものは、誇大広告として取り扱うこととされています。
事例解説書には、
「○○療法は免疫機能や細胞を活性化し、様々な効果を引き出します。例えば次の効果が期待でき、おすすめです。
【悪性腫瘍の治療】
肺癌、大腸癌、子宮癌、皮膚癌等の治療に有効です。
【ウイルス性疾患の治療】
肺炎、HIV、インフルエンザを体内から除去します。
【アンチエイジング】
美白・美肌・ダイエットにも効果的です。」
という記載は、「科学的な根拠が乏しい情報であるにもかかわらず、特定の手術や処置等の有効性を強調することにより、有効性が高いと称する手術等の実施へ誘導している」と示されています。
④その他
そのほかにも、事例解説書では、
- データの内訳が示されていない手術件数(ガイドラインでは、手術件数を広告する際には、当該手術件数に係る期間を併記する必要がある等)
- 体験談(ガイドラインでは、医療機関への誘引を目的として紹介することは、個々の患者の状態等により感想が異なり得るものであり、誤認を与えるおそれがあることを踏まえ、医療に関する広告としては認められない)
- ビフォーアフター写真(ビフォーアフター写真のみが掲載され、説明が一切ない又は説明が不十分なもの。ビフォーアフター写真の掲載に必要な情報が十分に記載されておらず治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがあるものについては、広告することができない)
とされていますので、それぞれ留意が必要です。
クチコミサイトやバナー広告にも注意が必要
ウェブサイト以外でも、第三者が運営するクチコミサイトなども留意が必要です。
こうしたサイトについては、医療機関からの影響を受けず、患者やその家族が行う推薦に留まる限りは誘引性は生じず、医療広告に該当しないとされていますが、他方で、医療機関からの依頼によって、当該ウェブサイトの運営者が、体験談の内容を改編したり、否定的な体験談を削除したり、または肯定的な体験談を優先的に上部に表示するなど体験談を医療機関の有利に編集している場合は、医療広告に該当し、禁止される広告(患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談)となる、とされています。
また、ガイドライン上、バナー広告やリスティング広告についても、広告可能事項(医療法6条の5第3項等で定める限定された事項)以外を広告することはできないとされている点に留意が必要です。
日本橋中央法律事務所
弁護士 山口 明
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