コラム・インタビュー
医師の平均年収の最新事情...FPが解説

高収入の代名詞ともいえる医師という職業ですが、診療科によって収入に差異があります。今回は、医師の年収にスポットをあて、平均年収や診療科ごとの平均的な収入について見ていきましょう。
若手医師は規模の大きな病院で働いている傾向
日本には、世界に誇る国民皆保険制度があり、「すべての人が公的医療保険に加入し、全員が保険料を支払うことでお互いの負担を軽減する」ことを実現しています。だからこそ、安い医療費で高度な医療を受けられるのです。
しかし、医療現場では、働き方改革導入後も医師の長時間労働が解決しないなど、問題が山積しています。今後、医療ニーズの変化や医療の高度化、少子化に伴う医療の担い手の減少が進むなか、医師個人への負担はさらに増加する可能性があるのです。
患者様がこれからもよい医療を受けられるシステムを維持するためにも、医師たちが自身の人生設計にマッチした、より健康に働き続けられる環境整備が望まれます。勤務医として働くか、独立開業を目指すか、それも医師の人生設計上の重要な選択肢だといえるでしょう。
厚生労働省の「2023(令和5)年賃金構造基本統計調査」は、主要産業に雇用される労働者の賃金の実態を明らかにする統計調査です。ここには勤務医の賃金についても記載があります。具体的に見ていきましょう。
[図表1]勤務医の年収
出典:厚生労働省「2023(令和5)年賃金構造基本統計調査」
※給与額×12+賞与額にて計算し、筆者作成。給与額は「きまって支給する現金給与額」、賞与額は「年間賞与その他と区別給与額」。
上記の図表1では、一見、企業規模が小さい病院の方が年収は高いように思われますが、平均年齢は高くなっています。一方で、企業規模が大きい病院の年収は低いものの、平均年齢は若いことがわかります。このことから、企業規模の大きい病院は、若手の医師が多く活躍していることが読み取れます。
[図表2]主たる勤務先での勤務形態
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:勤務医の就労実態と意識に関する調査
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
また、若手の医師の場合は、中高年世代の医師よりも非常勤やアルバイトの割合が多く(図表2)、収入面での不足を感じている可能性があると推察されます。
厚生労働省の「第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)」を参照すると、勤務医の平均年収は1,461.0万円でした。しかし一方で、開業医の平均年収は2,636.6万円と、約2倍の差があります(勤務医平均年収は集計1の全体より、開業医平均年収は集計2の全体より)。
診療科によって給与が違う
では、診療科別ではどうでしょうか。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」から、主たる勤務先の年収を診療科別にみると、平均年収は次のとおりです。
[図表3]診療科別平均年収
出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構の「勤務医の就労実態と意識に関する調査」
診療科別にみると、平均金額がもっとも高いのは「脳神経外科」であり、次いで「産科・婦人科」「外科」「麻酔科」と続いています。手術が多く、ハードな診療科のほうが年収は高くなる傾向があるようです。
ここで、年収の多い診療科の平均年齢をみてみましょう。
[図表4]主たる診療科、施設の種別にみた医療施設に従事する医師数及び平均年齢
2022(令和4)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況より一部抜粋し筆者作成
※産科・婦人科は産科・婦人科・産婦人科をまとめたもの
上記の平均年齢から、どの診療科においても、病院より診療所のほうが年齢は高くなっています。前段の年収と同様、若い医師の多くは病院勤務であることがわかります。
このデータの出所である、厚生労働省の「2022(令和4)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」では、2年ごとに調査を実施し、医師、歯科医師及び薬剤師について、性、年齢、業務の種別、従事場所及び診療科名(薬剤師を除く)等による分布も明らかにしていますので、関心のある方はご覧になって見てください。
まとめ
高度なスキルと専門性を持つ医師が高い年収を得ている一方で、若手の勤務医は収入に満足できる状況にあるとはいえないようです。
医師はキャリアだけでなく、勤務形態、診療科によっても年収が異なることから、早い段階で人生設計を立てることが大切です。多くの医師は、若いうちは勤務医としてキャリアを積み、腕を磨いたあとは、専門領域に活躍の場を見出します。勤務医として組織のなかで力を発揮するか、あるいは開業医として自身の理想の医療を追求するか、医師それぞれの人生観に基づいたキャリア設計が必要だといえるでしょう。
社会保険労務士法人エニシアFP
特定社会保険労務士・FP 三藤 桂子(本名三角)
【参考文献】
厚生労働省:医師の働き方改革
https://iryou-ishi-hatarakikata.mhlw.go.jp/
厚生労働省:令和5年賃金構造基本統計調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/z2023/index.html
厚生労働省:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/22/index.html
厚生労働省:第24回医療経済実態調査の報告(令和5年実施)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/database/zenpan/jittaityousa/24_houkoku.html
独立行政法人 労働政策研究・研修機構:勤務医の就労実態と意識に関する調査
https://www.jil.go.jp/institute/research/2012/documents/0102.pdf
監修者 株式会社コスモス薬品
本社は福岡県福岡市博多区。東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33期連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業支援にも注力し、2024年現在、開業物件数は約350店舗。
集患に有利なドラッグストア併設型クリニックを全国各地で提案している。

弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。