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コラム・インタビュー

クリニック開業のアドバイスを行う医師が語る...「開業を決意した勤務医たち」の本音とその後

経営・戦略
株式会社TTコンサルティング 医師 武井 智昭

勤務医として働き続けるか、それとも開業するか...。医師としてのキャリアを考えるとき、多くの医師が迷うところでしょう。開業を決意するとき、どのようなことが動機となったのか、実際の開業を目指した本音とその後の様子をピックアップしていきます。

開業医へのキャリアチェンジ、積極的な理由ばかりでは...

筆者はたくさんのドクターの独立開業の相談に乗るだけでなく、実際の開業のお手伝いも多数行ってきました。ドクターの新規開業について、日本医師会総合政策研究機構が行った『開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査』(2009年)によると、開業動機としては、60%程度が「自らの理想の医療を追求するため」という前向きなものとなっている一方で、「過重労働に疲弊」「医局などの人間関係による精神的ストレス」という回答も多く、考えさせられる結果となっています。

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開業の本音として、自分のイメージ・思い通りにクリニックをつくることができる、当直勤務や休日・夜間の臨時の電話相談・呼び出しという時間的拘束がなく、休暇などを含めて裁量性高く医業に専念できることが多いのは事実です。

病院勤務医やクリニックの勤務医、雇われ院長として働く場合には、医療機関の経営方針・診療方針などの規則が多く管理者・経営者の意向が優先され、これに合わない場合には精神的ストレスが高くなります。

また、2024年以降では「医師の働き方改革」が実施され、時間外労働を含めた労働環境は改善していますが、救急医療や主治医制が持続するなど医療サービスの本質は変わらず、時間外労働の制限による減収となった医師も多数おり、労働環境に不満を感じる医師も一定数存在する現況です。

独立開業した医師の、実際の声を聞いてみましょう。

A医師の場合...「独立の理由は、加齢による診療能力・技術・体力の限界」

20~30代の若い時代も、基幹病院での昼食をとる暇がないほどの激務や、月に多数の当直勤務やオンコールの拘束に、体力の限界を感じていたというA医師。過重労働が原因で、手術で判断ミスをしそうになったり、ときにはイライラと怒りっぽくなったりして、患者さまや家族からのクレームが出たこともあるといいます。

「これから40代になれば、体力や視力の低下は避けられませんが、そのリスクを考え、プライマリケア医としての人生を選択して開業を決断しました」

近年ではコスパを考えて若いうちに開業する医師も増加傾向です。筆者の知人であるA医師も、脳神経外科医師として後期研修を始めましたが、わずか2年で過重労働の割に報われないこと、体力的な限界を感じて、むしろ脳血管疾患にならないために予防こそが重要と考え、4年目に専門医取得してから、365日診療のプライマリケアクリニックを開院しました。

A医師はメスを早期に置いたキャリアですが、当初の激務で培われた体力・気力があるだけでなく、開業後のモチベーションも高いことから、長時間の労働をいとわないため、クリニックは1日150名程度の盛業となっています。

B医師の場合...「ライフスタイルそのものが変化」

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子どもの進学や親の介護、最近では子どもの不登校・発達障害に向き合うなど、ライフスタイルの変化により、プライマリケアとして開業をするケースもあります。大学医局の人事であれば、有無を言わさず地方への転居や単身赴任を余儀なくされる勤務スタイルに疑問を持つケースもあります。

循環器内科のB医師は、医局人事により地方基幹病院で勤務していましたが、単身赴任のうえ、緊急カテーテルの対応や急変などにより自宅に帰れない日々が続き、悶々としていたといいます。一方で、お子さんの発達障害や、不登校といった問題のほか、自身の母親の介護が重なったことで、家族の時間の確保を決意。居住地域のそばに、循環器内科クリニックを開業しました。

「地域に根ざした医療が展開でき、プライベートも充実しました」

家族を中心とした生活が送れる就業状況に、大変満足しているとのことです。

C医師・D医師・E医師の場合...「出世の望みがなくなりました」

とくに多いのが、所属する医局での教授選挙に敗れた、出向先の基幹病院で病院管理者の院長・副院長の選挙に敗れて居づらくなった...といった、「出世の道が閉ざされた」パターンです。

研究者として、医師としての十分なキャリアと実績があっても、人間関係に嫌気がさした、将来の見通しが立たない...といった、ネガティブな開業理由となるケースもあります。

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消化器外科のC医師も上記の例に当てはまりましたが、一方で、転身を素早く決断しました。これまでの研究者としてのキャリアと決別し、地域医療にシフトチェンジしたのです。地域住民と他職種から愛される医師として活躍しています。

「論文を燃やした火で芋を焼き、研究者としての自分と決別しました」

そう語るのはC医師。専門性を生かしながらも、プライマリケア医としてのキャリアと、自分のつらい経験・葛藤を生かした心療内科的な幅広い領域を展開しており、いまは研究者時代の面影はなく、はつらつとした印象です。

筆者、D・E・F医師の場合...「不本意な人事が開業のモチベーションに」

医局人事で左遷された医師も、医局人事と決別するため、開業へのモチベーションが一気に上がります。

神奈川県西部の左遷病院に異動した筆者、静岡県に左遷された脳神経外科のD医師、突如大学へ戻る人事を白紙撤回され栃木県に左遷された神経内科のE医師、茨城県への左遷人事を受けた整形外科のF医師の4人は、いずれも地域に根ざした医療を展開しています。

医療訴訟やクレームを回避したい

病院勤務医の場合、重症患者を日夜問わず対応するために、手術などの侵襲的な治療、日直・当直時の専門外診察等が必要となります。

医療安全の観点として「100%はない」という前提を理解されず、不幸な結果となった場合には、医療訴訟のリスクが生まれます。近年では医療訴訟案件も増加傾向であることから、リスク回避としての開業を決意する医師も多いのです。

近年では、地域医療体制・法制化・スタッフの体制不備による患者トラブルを医師の能力不足として責任転嫁するような事例も増加しています。

このほか、勤務医時代以上にお金を稼ぎたい、テレビなどのメディア出演をして自分の名前をとどろかせたい、株式・FX・不動産などに投資をして早期にFIREをしながらクリニックを開院して悠々自適に過ごしたい...など、さまざまな理由がありました。

ただ、明確にいえるのは「とりあえず開業でもしておくか...」といった「デモシカ」開業では経営が立ちいかないということです。いかに自分のモードチェンジをするか、やり抜くか。そんな姿勢が重要になってくるのです。

株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭

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