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病気で突然就労不能に...「所得補償保険」はどこまで頼れる?【FPが解説】

病気やケガで急に入院することが決まり収入が減ると、どの世帯でも生活に関わる費用に影響を与えます。開業医の場合は、院長が診療を続けられなくなり休院することになれば、患者様からの信頼を維持することが難しくなるかもしれません。働けなくなるリスクに対して備える保険に「所得補償保険」があります。本記事では、所得補償保険の概要、メリット、加入の際の注意点について解説します。
就労不能時の補償の必要性
勤務医が、病気やケガで突然働けなくなった場合には、勤務している病院内の他の医師が代わって診療を行うことができます。仕事を休むと収入の減少が考えられますが、勤務医の場合は、有給、健康保険からの傷病手当金、障害厚生年金・障害基礎年金などが給付の対象となります。

傷病手当金は、支給の要件を満たすと、各月の標準月額額の平均額から求めた日額の3分の2を通算1年6カ月まで受け取ることができます。その後は、障害認定日に障害等級表に定める1~3級に該当すれば厚生年金から障害厚生年金を、障害等級1~2級に該当すれば国民年金から障害基礎年金を受け取ることができます。
開業医は、従業員が5人未満のクリニックでは、国民年金と、国民健康保険か医師国民健康保険を選択しています。加入している公的医療制度によっては、就労不能時の支給の要件を満たすと定額を支給されるなど範囲を限って給付される場合がありますが、給付されない医療保険もあります。さらに、国民年金から給付される障害基礎年金は、障害等級1~2級に該当しなければ受け取ることはできません。
たとえば、院長が病気で急に休まなければならず、診療ができなくなったとしましょう。その間にも、住宅費、食費、光熱費、教育費、クリニックの家賃、従業員の給与、開業のための融資の返済、医療機器などのリース料、光熱費などがかかります。また、長期で休院することになれば、患者様からの信頼を維持することが難しくなる可能性もあります。
以上のような理由から、クリニックの経営が行き詰ってしまわないように、開業医が働けなくなったときの所得の減少に対する備えは大変重要です。
「所得補償保険」の概要

医師が突然の病気やケガで診療ができなくなり、収入減少のリスクに対処できる保険に「所得補償保険」があります。
所得補償保険と混同しやすい保険に、「就業不能保険」「収入保障保険」がありますので、簡単に図表にまとめました。こちらは個人で加入する保険です。
[図表]所得補償保険・就業不能保険・収入保障保険の比較
収入保障保険は、病気やケガで働けなくなることによる収入減少リスクに備えるものではなく、被保険者が亡くなったり所定の高度障害となったりすることによる、収入減少リスクに備える保険です。所得補償保険と就業不能保険の大きな違いは以下の通りです。
- 所得補償保険
- 損害会社が取り扱う。
- 保険期間が1年更新などの短期間で、保障期間も1カ月や1年などの短期間。
- 月額補償額に上限が定められている。
- 被保険者が加入している公的医療保険制度によって、所得の平均月額に対して給付される保険金額の割合が定められている。
- 就業不能保険
- 生命保険会社が取扱う。
- 保険期間と保障期間が10年、20年、75歳までなど長期間。
- 保険期間の更新を行うタイプ、満了時まで更新を行わないタイプを選択できる。
- 月額補償額に上限が定められている。
- 支給限度期間の上限が定められている。
開業医の多くは、クリニック開業のために金融機関などから融資を受けます。返済期間が10年以上になるケースもあり、働けない期間もローンの返済は続きます。病気やケガで寝たきりなどの状態になった場合の収入減少リスクに備えたい方は、「団体長期障害所得補償保険」の検討をおすすめいたします。
医師向けの団体長期障害所得補償保険は、個人で加入する商品に比べると月額補償額の上限が高く、補償期間も長く定められているのが特徴です。
所得補償保険の保障期間は、融資の返済期間や家族の生活費などを考慮し、そのうえでどれくらいの保険金額が必要になるか検討し決定なさってください。
所得補償保険に加入する際の注意点
所得補償保険に加入する際に注意したい点を紹介します。
所得補償保険は、短期補償タイプの商品、長期補償タイプの商品にかかわらず免責期間があります。免責期間とは、補償の対象にならない期間のことです。短期補償タイプの商品の場合は7日間程度、長期補償タイプの商品の場合は、損害保険会社などによって幅があり60日から365日程度です。

短期補償タイプの商品でも長期補償タイプの商品でも、国民健康保険加入者と健康保険・共済組合加入者では、取り扱っている損害保険会社などによって、保険金設定金額に対する給付割合が、85%、50%などと異なります。加入の際にはご自身に適した保険金額を受け取れるか確認が必要です。
所得補償保険の保険金給付の対象となる病気やケガは、他の保険に比べて補償の対象外となる範囲がやや広くなっています。なかには、多くの所得補償保険で補償対象外となっている、精神障害、天災による身体障害、妊娠に伴う身体障害に対する補償を付加できる商品もあります。
精神疾患や妊娠・出産の場合は、公的な制度も利用できますので、助成制度やその給付額を合わせて確認しておきましょう。
どのようなリスクに備えるかによって所得補償保険のタイプを選択する

所得補償保険について解説しました。所得補償保険は、病気やケガで突然働けなくなったときに給付が受けられるように備えておくものです。開業医の場合は、就業不能になった際に公的な保障が受けられないこともありますので、所得の減少リスクに備えることは大変重要です。短期補償タイプと長期補償タイプのどちらか適したほうを選択できます。
所得補償保険を選択するときは、免責期間、保険金額、補償対象を確認しましょう。ご自身の目的や勤務形態に合った所得補償保険を選ぶようになさってください。もしも働けなくなった場合でも、クリニックの費用や生活費などに充てられる十分な資産がある方なら、保険で備えることはしない、と考えるかもしれません。働けないことによる収入減少リスクがどの程度のものか、資産状況も把握して、対策を講じていきましょう。
FP dream
代表FP 藤原 洋子
監修者 株式会社コスモス薬品
本社は福岡県福岡市博多区。東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33期連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業支援にも注力し、2024年現在、開業物件数は約350店舗。
集患に有利なドラッグストア併設型クリニックを全国各地で提案している。

弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。