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コラム・インタビュー

開業を控えるドクターに知ってほしい「開業初日の失敗」回避策...「運営・患者接遇・スタッフ教育」の重要ポイント

採用・教育・労務
株式会社TTコンサルティング 医師 武井 智昭

クリニック開業初日は、ドクターはもちろん、看護師・受付スタッフも、どんな患者様と巡り合うのか、どのようにしてクリニックを盛り上げていくかなど、不安と期待に胸を高鳴らせているものです。そして「開業初日」の運営結果は、今後のクリニック運営に大きな影響をもたらします。ここでは、開業初日で失敗しないための準備について、スタッフ教育なども含めて解説していきます。

スタッフとの連携を大切に、お互いの士気を高める

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長年クリニックを経営し、また、独立開業を目指すドクターたちにアドバイスをしている筆者も当然ですが、自身のクリニックの「開院初日」を経験しています。

スタッフたちと緊張しながらその日を迎えましたが、来院数は午前中・午後ともに10名ずつと、あまり多くはなかった一方で、想像以上に複雑な疾患を抱えている方が多く、血液検査・レントゲン・心電図検査などの設備はフル稼働の状況だったのを記憶しています。

筆者が主導しつつ、スタッフと連携しながらなんとか初日の診察は終了。診察後は、声掛けなどの連携の振り返りを行い、お互いの「よかった点」を称えあうことで士気を高め、翌日以降の業務の円滑な進行につなげていきました。

スタッフ教育・研修で「接遇」「コミュニケーション」を鍛える

開業初日の成否を大きく分けるポイントは、スタッフ教育・研修による接遇・コミュニケーションです。

開業前のクリニックでは、業務内容の全容を把握し切れていなかったり、業務フローが固まっていなかったりするため、最初から完璧な連携を目指すことは困難です。また、クリニックの理念が共有できていないことも起こりえます。

そのためにも、開業前の研修では「できる限りスタッフ同士の連携をスムーズにする」「理念を共有してスタッフのモチベーションを上げる」「未経験者のレベルを引き上げる」といったことが重要になります。

開業前の研修は主に、下記の2つに大別されます。

業務研修: 機器の使い方、患者様への接遇やトラブル対応の方法に関する研修
意識研修: 医療従事者としての心構えや理念の共有についての研修

とくに業務研修においては、クレーム対応(院長へすべて報告して連携する)、混雑時対応(待ち時間が〇〇分以上と見込まれたときの積極的な声掛け)といった、通常業務以外の状況を想定してシミュレーションすることをお勧めします。

さまざまな状況に合わせた対処をスタッフ全員が理解することで、想定外の事態が発生した際も、足並みをそろえて対応できるようになります。

また、シミュレーションでは、チーム連携が重要となるシナリオをいくつか練習することをお勧めします。具体的には、重症者の来院を想定し、救急要請・処置室での対応・基幹病院への連絡...といった連携の流れをスタッフ一丸となって練習します。それにより、スタッフの結束やモチベーション向上に繋がっていきます。

スタッフの研修時には「行き過ぎた指導」に注意

研修中のスタッフを教育する際に気を付けるべきなのは、行き過ぎた指導です。院長が求めているレベルが高すぎるあまり、無理な目標設定、厳しい口調での叱責、理不尽な指導などを求めない、行わないようにしなければなりません。これらの行為はスタッフの自己肯定感を下げるばかりか、組織全体のモチベーションの低下に直結しますので、絶対に避けましょう。

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とくに未経験者のスタッフがいる場合、業務レベルの底上げを図って厳しい指導を重ねてしまうと、スタッフが萎縮し、不必要なミスを誘発しかねません。

指導の際は、否定するのではなく、たとえささやかでも「習得したこと」「可能になったこと」を認め、褒めることで、スタッフの自己肯定感や役割意識の向上につなげていきます。

機器類のチェック、他院への挨拶...すませておくべきことは盛りだくさん

開業初日を迎える前には、電子カルテやレセコン、自動精算機といった機器の稼働状況を徹底的に確認することが重要です。

勤務医時代は担当職員が対応していたことですが、クリニックでは「ヒト・カネ・モノ」のすべてが経営管理者である院長の責任の範疇となります。

また、研修でもさまざまなシミュレーションを実施していると思いますが、血液検査・心電図・レントゲン検査実施時のオーダリングの連携(ラベル出しも含む)、施設基準の再確認も、すべて掌握する必要があります。

開業当日、もしも機器類がうまく稼動せず、来院した患者様を必要以上お待たせする...といった事態は、何としてでも回避しなければなりません。そんな運営面の失敗を防ぐには、準備段階からスムーズな運営体制を構築しておくことが不可欠なのです。

可能であれば、電子カルテを含めた各種機器の業者に、開業初日の半日でもよいので立ち合いを依頼しておくといいでしょう。ハード面の運営面の備えがあれば、スタッフの安心にもつながります。

また、前もって近隣の医療機関や、薬局に挨拶をすませることも忘れないようにしましょう。そうすれば、開院当日、患者様に他院の紹介が必要となった場合もスムーズです。

「医療機器以外」の設備チェックも抜かりなく

気づきにくいのが、照明・空調・電気・給排水設備・照明電気設備といった「医療機器以外」の設備のチェックです。

自動ドアのセンサー感度や開き時間の設定、日照によって照明の明るさをどうするか...といったことも、一から考える必要があります。また、空調は動作のチェックだけでなく、季節に応じたエアコンの強弱や風向きについても、十分な配慮が必要です。

トイレの詰まり、水漏れ、自動ドアを含めたトラブルは、まるで狙いすましたかのように、患者様の利用が始まる開業初日に起きることがあります。少しでも気がかりな点があれば、事前に業者を呼び、点検してもらいましょう。

自動精算機のトラブルも注意が必要です。釣り銭準備金として、精算機に5~10万円ほどを硬貨とお札に分けて準備しますが、窓口精算となった場合や、予想以上に特定の貨幣の減りが早い場合に備え、同じくらいの額を別途用意しておくと安心です。また、クレジットカードやタッチ決済用の決済端末も、センサーまでしっかり確認しておきましょう。

スタッフには「どんな問い合わせも院長を通す」ことを徹底指導

開業初日には、外部からの電話での問い合わせや、患者様からの想定外の質問・依頼が生じることが考えられます。

それらに対し、スタッフが自分の知識の範疇の医学知識で診療に近い説明をする、自分の判断のみで可否を伝える、頭ごなしに否定するといったことがないように、さらには、安易に他院を紹介する、早口でまくし立てる、他院の診療を受け入れず否定的な見解をする、といったことがないよう、十分注意しなければなりません。

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たとえ見当違いな問い合わせであっても、スタッフには必ず院長を通すことを徹底するよう、初日のミーティングで再確認しておきましょう。

開業初日の接遇次第で、患者様の印象は肯定的にも否定的にもなります。そしてその結果は、「リアルなクチコミ」となって拡散されていくのです。

よい接遇・おもてなし力は、研修の繰り返しによって醸成されます。開業当日からまったく問題のないスタートが切れることは極めてまれです。実際の患者様対応の業務から、課題は常に生じます。重要なのは、その解決案を考えることであり、もし反省点が思い当たらないのであれば、なんらかの見落としがあると考えたほうがよいでしょう。

開業初日でよい印象を与えられたのだとしても、逆に来院患者数が少なかった場合も、小さな気付き・反省を放置せず、その都度話し合い、改善することが重要です。

患者様と家族から「かかりつけ医」としての信頼を得て、盤石な経営を行うためには、初日に得た教訓を持ち続けることが重要なのです。

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