お気軽にご相談ください!
クリニック開業お役立ちコラム
見据えるのは5年先...クリニックの「中・長期目線」の財務計画
開業をお考えの先生がいちばん不安に思うのは、開業後にクリニックをうまく運営していけるかどうか、つまり金銭面でしょう。クリニックの収益構造は、小児科・整形外科などの一部の診療科を除いて、急激に患者数の増加は見込めません。開業して5年間という中長期での財務計画・収支計画が重要であり、その過程で収支がどのように変動していくのかをイメージする必要があります。ここでは、かかりつけ医(内科無床クリニック:院外処方)を例に、収入面にフォーカスを当てて解説します。
クリニックの収入を理解する

せっかくクリニックを開院しても、思うように患者数が増加せず収入が入ってこなければ、自分の生活を削って維持するほかありません。自己資金が底をつけばクリニックは廃業・閉院になりますが、閉院もタダではなく、1,000万円弱の費用が必要です。こんな最悪の事態を防ぐには、事前の収支計画が重要なのです。
収支計画は「収入」「支出」の変動を1ヵ月で見積もります。可能であれば、シミュレーションの時点では、遅くとも2年目からは黒字となって、この状態を継続・増加できる見通しが必要です。クリニックの収入は、主には保険診療や健診・予防接種となりますが、極端に診療報酬の単価が高い項目はほぼないため、1日あたりの患者数の増加が大切な目安になり、ここから収入を予測します。
開業1年目...この年は「赤字覚悟」で
クリニックの収支の見積もりは、収入試算から始まります。収入には医業収入(保険)と医業収益(自費・公費)の2種類があります。初年度からの自費・公費の収入はインフルエンザ・コロナワクチン接種と特定健康診断、がん検診となります(2025年からは帯状疱疹ワクチンも収益の要になりそうです)。ただ、初年度であり件数も少ないため、9割以上は保険診療からの収入として収入を考えることが妥当です。
ここで重要なのは、1年目は赤字を覚悟することです。内科の場合、1年目では地域包括診療加算(18点)と機能強化加算(80点:初診時)は基本的には算定できません。1人の通常診療単価は、1年目では初診が多いため7,000円、2年目以降は6,000円が目安です。
ただし、前述の地域包括診療加算や機能強化加算を算定した場合には+500~600円となり、インパクトは大きいです。時間外の電話対応やかかりつけ医の講習、ケアカンファレンスの出席など多くの要件がありますが、ここをクリアすることで、収支が楽になることが多いです。
1年目は、1日あたりの患者数の増加も、認知が低いためにそれほど見込めません。内科の場合、新規患者が慢性疾患を有していることは少なく、はじめは花粉症・感冒・胃腸炎などの1〜2回で終了する受診が多いからです。そのため、1年目は損益が赤字になるのが一般的です。この対策として、ローンの支払い猶予(例として、1年目は利子のみ支払い、2年目からは元本を含めた支払い)なども検討したほうが心理的には楽になります。
開業2年目...資金枯渇対策+プレッシャーとの闘いで勝負どころ

2年目は勝負どころです。いかに1年目に来院した患者が、慢性疾患やほか家族・他人への紹介を発生させられるかがキーポイントです。一般的には、2年目からは利益が出るような計画・来院患者を見積もる必要があります。ただ、利益が出る2年目もキャッシュフローはトータルではマイナスとなります。1年目の赤字を多少解消する程度と思ってください。
2年目からは利益が出たとしても、クリニック経営「のみ」の収支は黒字にはなりますが、自分・家族の生活費と2年目から借入返済(利子追加)もあるため、全体の収支バランスはマイナスになることが多いです。手元の運転資金などが減少していく2年間をいかに心理的にこらえ、改善策をさまざまに考え実行していく2年間。この壁をいかに乗り越えられるかがポイントとなります。
開業3年目...キャッシュフローはプラスでも予断を許さず
3年目からはキャッシュフローもプラスになる可能性が高いですが、さまざまな税金を含めた出費も増えるために、患者数の増加があっても収入の増加スピードはあるところで一定になる傾向があります(落ちることもあります)。
このため、3年目以降の患者数の増加は、1日40人を超えるレベルになれば自然に任せられますし、増患もスタッフのほうが上手になりますので、そのあたりをうまく利用する手もあります。過度に売上を追い求めると、スタッフ離職や患者離反などにつながることが多いので要注意です。
その例として、美容などをメインとした自費診療の増加もありますが、自費で求められる水準は非常に高く、クレームや患者離反につながること、またスタッフも新たな対応に辟易して、本来のあるべきクリニック像から乖離して離職につながることもあります。既存の患者も同様な理由で離反につながりますので、慎重に対応することが大切です。
クリニックの収入上限はどのくらい?
一般的な内科を想定すると、1名の医師が1日に診療可能である患者の数は60~70人くらいです(なかには100人を超える対応ができる、超人的な方も一部いらっしゃいます)。午前と午後で各3〜4時間の診察を仮定すると、稼働日数も診療そのものは週4~5日が限界です。
それでも、開業3年間は「休みゼロ」を覚悟してください。診療時間以外にも、関係業者や税理士との打ち合わせ、レセプト対応などさまざまな業務があります。

週7日のうち4~5日は診察、2~3日をそれ以外の雑務に使うイメージです。最近はクリニック外の業者や、AI/ITをうまく使ってある程度休むドクターもいますが、その設定作業で夜間と休診日が充当されます。休診日は休日ではなく、診察以外の業務をする日くらいに考えておくとよいでしょう。年に数回リフレッシュとして休んで五感を研ぎ澄ませ、情報収集のアンテナを張ることも重要です。ちょっとしたヒントが経営改善のチャンスになることも多いのです。
このように試算していくと、1年間の収入は
5,000円(/1人)×60人(/日)×20日/月×12ヵ月=7,200万円
一般内科を開業した場合、ドクター1人の年間収入としては約8,000~9,000万円程度が上限の目安となります。
一般的に、1人のドクターで年間医療収入が年間で1億円を超えたあたりから無理がかかり、なんらかのひずみが生じることが多くなります。筆者の経験では、無理をした結果のスタッフ離職などもありましたが、このあたりはAI/ITの機器導入やスタッフを含めた外部組織の委託などで解消できますし、次の山を越えるにあたるスキル・経験が生まれます。
まとめ
クリニック開業では、最初の2年間をどう乗り越えるかがカギになっています。収入ばかり追い求めると、自分の心身の負担も心配ですし、せっかく雇用したスタッフの離職なども懸念されます。そのため、診療報酬の増加を求めた無理な検査数の増加、患者数増加、稼働日数や時間の増加などの計画は控え、まずは1日40人程度の来院を週4.5~5日キープすることを目指してください。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

