お気軽にご相談ください!
クリニック開業お役立ちコラム
【勝ち組・負け組】二極化するクリニック経営...「借金苦に陥らない戦略」の打ち立て方
近年では、都市部のクリニック乱立による患者獲得競争の激化、2024年の診療報酬の改定を例とした、診療報酬抑制傾向の政策などにより、クリニック経営の二極化が進んでいます。「勝ち組」と呼ばれるクリニックが一定数ある一方で、「負け組」となり借金苦に陥るクリニックが増加傾向です。これまで安定とされていた内科・小児科ですら、わずか1年で閉院を余儀なくされる厳しい現況があります。ここでは、勝ち残るための経営術について見ていきます。
なぜ二極化が進むのか?...現状を分析する
クリニックの新規開業・継承開業後に立ちはだかるのが「経営」という名の高い壁です。クリニックの経営は、医療の専門知識だけでなく、病院勤務医時代では十分な経験が積みにくい、診療報酬の請求・法律・人事・スタッフ教育などの高度な手腕も求められます。経営への正しい理解がなければ、いくら医師としての腕がよくても「負け組」まっしぐら、借金は膨らむ一方...という悲惨な状況になりかねません。では「負け組」となってしまうポイントはどこにあるのでしょうか?

激化する競争からの脱落
都市部を中心にクリニックの数が増加し、患者獲得競争が激化しています。また、COVID-19の流行により、患者様側では院内感染を避けるため、受診行動を控えるようになりました。これに加え、オンライン診療の導入・拡大も拍車をかけて対面での受診患者数の減少に寄与しています。
近年では、大手医療法人のクリニック事業の参入により、経営資源に乏しい個人クリニックは、人材・診療規模などにおいて不利な状況に置かれる傾向があります。
診療報酬の改定による収益悪化
国の医療費抑制政策により、診療報酬が引き下げられる傾向があります。2024年6月の診療報酬改定では、内科クリニックでは実質的なマイナスとなる「生活習慣病管理料」の導入をはじめ、抑制傾向になっています。
この反面、時間外や休日診療などに関しては診療報酬の請求方法や運用方法によっては、「院内トリアージ加算(300点)」などの活用でプラスになる傾向はあります。こうした状況からは、経営効率の悪いクリニックは収益を圧迫されやすくなります。
ニーズの多様化に伴う集患数の減少
患者様のニーズが多様化し、従来の「待ち時間」「治療技術」のみならず、近年は「アクセスの利便性」「施設の快適性」「情報発信」のほか、「身体・心・自分の社会におかれる立場の3面」などの総合的な診療のように、寄り添う診療・全体的な診療・専門性の高さより家庭医的な親しみやすさ・プライマリケア志向等が高まってきました。
そのため、患者接遇が不十分、あらゆる疾患へのファーストタッチができないクリニックは、患者離れを引き起こし、増患が困難にありました。
経営スキルの差
医師は医療の専門家であり、経営の専門家ではありません。しかし、クリニック経営には経営戦略、マーケティング、財務管理、人材育成と管理などのスキルが求められ、これらの不足はそのまま経営の失敗に直結します。
スタッフ獲得の能力の差
近年では、看護師、リハビリ職、医療事務をはじめとして人材確保が非常に困難となっています。医療以外の多くの業種において賃上げが実施されていますが、保険診療クリニックの収益の要となる診療報酬が抑制されるため、賃上げが困難となり、離職者が増加傾向となります。
大手医療法人は、各種待遇や昇給・有給休暇・福利厚生をはじめ、さまざまな働き方の提案に対応できる人材が豊富であり、経営基盤も盤石です。したがって、テーラーメイドな勤務スタイルへの対応が可能であり、それによって待遇も改善傾向となりますが、個人のクリニックでは太刀打ち困難なケースが少なくありません。そのため、募集をかけても集まらない、あるいは不適切な人材ばかり集まってしまう傾向があります。
借金苦に陥らないための戦略
では、設立したばかりのクリニックが「勝ち組」の立場を獲得するにはどのような行動が必要なのでしょうか?
具体的なノウハウを見ていきましょう。
「風通しのよい職場環境」の維持と「患者コミュニケーション」の差別化

クリニックの心象の良し悪しは、扉を開けたときから評価されています。基幹病院は技術や検査を売りにしていますが、クリニックは技術では太刀打ちできないため、患者心理の「不安」に寄り添い「安心」に変えるような、コミュニケーション能力が基幹病院より求められます。
このため、院長が率先して挨拶を心がける、医師は早口になりがちなのでゆっくり話す、患者様の話を頭ごなしに否定しないなど、接遇に長けることが重要です。米国の心理学者であるアルバート・メラビアンが提唱した「メラビアンの法則」の通り、視覚情報が第一印象を決定するため、身だしなみ・清潔感には院長が気を付けてください。こうした院長の態度や雰囲気が、勤務するスタッフにも、患者様にも第六感で伝わっていき、よい印象を受けて満足しなければ、クリニックの増患は不可能です。
明確なコンセプトと差別化戦略
競争優位性を確立するためには、競合との差別化を図り、特定の分野に特化するのに加え、より多くの患者様から注目されるように、診療の幅を広げることが必須です。
たとえば、内科であれば6歳以上の子どもも対応する、皮膚や整形外科の簡単なことも対応する、小児科であれば保護者などの家族にも診療対応するなど、プラスワンが地域住民のニーズを把握し、独自の強みを活かしたコンセプトを打ち出すことが重要です。
スタッフを大切にする
クリニックはさまざまなスタッフの協力により成り立っています。受付・診療・検査治療・会計と一見シンプルでありますが、その裏側では小銭の用意や診察券作成、会計確認、検査会社や医薬品卸会社とのやりとりなど、数多くの作業・やりとりが発生しています。これまでの基幹病院の医師の診療は「お膳立てされている」ことを肝に銘じたほうがよいでしょう。
診療に参加するスタッフへの感謝と、ITツール(AIのレセプトチェックや自動精算機など)などの導入による省力化、なにより残業ゼロを目指したワークライフバランスを院長自ら実践できるように調整することが重要です。
積極的なマーケティング戦略を練る
都心部のクリニックでは、ホームページのみのアピールでは不十分です。さまざまなSNSを利用した宣伝広告、また、各種媒体での記事執筆、動画コンテンツの作成などを積極的にしてください。テレビ・ラジオなどに出演するというメディアを活用する方法もあります。
地域住民向けのイベントやセミナーを開催し、認知度を高めることも効果的です。同時に、地域の医療に関連する団体、たとえば地域包括支援センター・学校・福祉施設・介護施設・グループホームなどに存在を認知して、往診をする、嘱託医を引き受けるなどの手段も経営にもインパクトは中長期的には有用です。
財務管理を徹底する
資金繰りの計画を立て、常に資金ショートのリスクを意識しましょう。クリニックなど組織の運営において、お金は人体でいう「血液」に相当します。儲けはあるが資金が枯渇して融資が得られない「黒字倒産」を回避する配慮も不可欠です。とくに、診療報酬の一部は診察時に手元に入金となりますが、残りの部分は2ヵ月後の21~25日に振り込みとなるタイムラグがあることを認知してください。このため、運転資金は余裕をもって6ヵ月程度の運営ができる分を確保しておく必要があります。
税理士やコンサルタントなどの専門家と連携し、月次報告を確認してください。
開業して3ヵ月~6ヵ月までに黒字達成(1日受診30名程度)ができない場合には、診療サービスの改善が早急に必要になる目安です。
その他重要なポイント
さらに、身近すぎて見過ごしがちなポイントについても触れておきましょう。
患者様との良好な関係構築
患者様の声を真摯に聞き、信頼関係を築くことが重要です。良質なコミュニケーションによる患者満足度を高めることが、クリニック経営の最大の肝であります。患者満足度が高い場合、自分の家族や知り合いなどにリアル口コミで紹介ができるからです。リピーターを増やし、口コミによる集患ができているか、再診率を指標に判断をするとよいでしょう。

時代の変化への対応
医療業界は常に変化しています。最新の情報を収集し、柔軟に経営戦略を見直すことが重要です。特に、さまざまな新薬や治療は、クリニックに出入りするMR・医薬品卸・検査会社などとの接点や、医師会といった他とのつながりで得られますし、医師に特化したSNSでも得られます。知識のアップデートがないと取り残され、患者数が激減していきます。
まとめ
クリニック経営は医療の専門知識だけでなく、経営手腕も求められる厳しい世界です。しかし、明確なコンセプトや差別化戦略、効率的な経営、積極的なマーケティングなどを実践することで、借金苦を回避し、持続可能なクリニック経営を実現できます。
この根幹となるのが、クリニックスタッフのおもてなし力、院長のコミュニケーション能力と社会性です。
クリニック経営者の皆様の戦略にお役立てれば幸いです。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

