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クリニック開業お役立ちコラム
保険請求手続きもこれで安心! 開業医のための「よくわかる診療報酬」超キホン
クリニック経営の基本ともいえる「診療報酬」。しかし、この言葉を聞くだけで「面倒そう...」と、苦手意識を持つドクターもいらっしゃるかもしれません。しかし、基本的なしくみと手続きを理解できれば、経営の安定化につながります。本記事では、診療報酬の基本と具体的な手続きの流れについて解説します。
診療報酬とは?

診療報酬とは、医療機関が提供した医療サービスに対して、保険者(国民健康保険や社会保険など)から支払われる対価のことです。国民皆保険制度のもと、その算定ルールは国によって定められています。保険診療を行ううえで、このルールに則った請求が不可欠となります。
診療報酬は「点数」で計算され、1点=10円として換算されます。
診療報酬の構成要素
診療報酬は大きく分けて「基本診療料」と「特掲診療料」で構成されます。
基本診療料
初診料、再診料、入院料など、医療行為の種類や提供場所、時間帯などに応じて算定される基本的な料金です。
特掲診療料
検査、投薬、注射、処置、手術、リハビリテーション、画像診断など、具体的な医療行為ごとに定められた料金です。
さらに、特定の条件を満たす場合に加算される「加算」があります。開業初期として比較的算定しやすいものとして、特定疾患療養管理料、時間外加算・休日加算、機能強化加算、在宅自己注射指導管理料、院内トリアージ実施料などがあります。
小児科を開業するか、内科として開業したとしても2番目以降に小児科を標榜する場合、6歳未満の患者を診察した際の算定は「小児科外来診療料(包括)」か「出来高」のどちらかを選択することになります。
包括では、6歳未満の患者にどのような診療行為を行っても、初診と再診などの基本診療料が同一点数となります。出来高払いは、一般の患者さんと同じように、診察や検査の内容に応じて点数を算定することになります。
アレルギー検査や感染の診療、処置など、病院外来に相当する診察を行う場合は出来高払いを選択することをおすすめしますが、6歳未満の小児は検査が必要なケースも少ないため、レセプト提出などの簡略性を考えた結果、包括を選択しているクリニックも多くなっています。
診療報酬請求の基本的な流れ...外来診療の場合
診療報酬が医療機関に支払われるまでには、以下のステップを経ます。
1.診療・カルテ記載
患者さんの診察を行い、診断名、実施した医療行為、使用した薬剤などを診療録(カルテ)に正確かつ詳細に記録します。このカルテの記載が、診療報酬請求の根拠となります。

2.診療報酬明細書(レセプト)の作成
カルテの記載に基づき、診療行為ごとに定められた診療報酬点数やコードを記載した「診療報酬明細書(レセプト)」を作成します。現在、多くの医療機関で電子カルテやレセプト作成ソフトを利用しており、効率的に作成できます。
3.レセプトの提出
作成したレセプトを、審査支払機関(国民健康保険団体連合会または社会保険診療報酬支払基金)に提出します。
提出方法は、オンライン請求(電子媒体またはインターネット)が原則となり、診療月の翌日10日(休日であっても)が締め切りとなります。紙媒体での請求は、特別な理由がない限り認められません。
4.審査
審査支払機関は、提出されたレセプトの内容が診療報酬のルールに適合しているか、カルテの記載と整合性が取れているかなどを確認します。
5.支払い
審査を通過したレセプトに基づき、医療機関の指定口座に診療報酬が支払われます。支払いは2ヵ月後の20日から25日となります。
この流れを具体的な日程にすると、4月に診療を行った分の診療報酬は、5月10日までにレセプトを作成し提出、6月20日から25日ころに一部負担金を除いた部分が入金、という流れとなります。
開業する自治体によっては、小児や高校生以下を対象とした医療費の助成制度があり、自己負担分が免除されることがあります。そのような場合、審査支払機関とは別の時期に各自治体から入金があります。
電子カルテ・レセプト作成ソフトの活用
現在、多くの開業医の先生方が電子カルテやレセプト作成ソフトを導入しています。これらのシステムを活用すれば、診療情報の記録だけでなく、診療報酬の自動計算、レセプト作成、オンライン請求までを一元的に行うことができ、業務効率化に大きく貢献します。
導入にあたっては、費用や操作性、サポート体制などを比較検討することが重要です。
診療報酬請求における注意点
以下に、診療報酬請求における注意点を挙げます。
正確なカルテ記載
診療行為の内容、診断名、患者さんの状態、治療方針などを詳細かつ正確に記載することが適切な診療報酬請求の基本となります。
正確なカルテ記載ができているかどうかは、診療報酬との関連で、おおむね開業1年後に実施される各都道府県厚生局が実施する「新規個別指導」でチェックが行われます。
新規個別指導の流れとしては、指導1週間前の正午に対象患者名10名が通知され、選ばれた患者のカルテの内容が適切であるか、それに基づいた適切な加算算定をしているか、といったチェックが入ります。
新規個別指導については、以前の記事『クリニックの新規開業で必ず通過する「新規個別指導」の概要と対策』で解説しているため、詳しくはこちらをご確認ください。
適応病名の確認
薬剤や検査など、一部の医療行為には適応病名が定められています。請求時には、適切な病名が付与されているかを確認する必要があります。
特に検査を行った場合は注意が必要で、血糖検査では「2型糖尿病の疑い」、白血球数・CRP検査では「菌血症の疑い」など、逐一な病名の算定をし、疑い病名は当月の末日には「中止」にする、などのチェックが必要です。
算定要件の確認
加算を算定する際には、各都道府県に提出して認められた特掲診療料の算定要件を十分に理解し、満たしていることを確認する必要があります。
最新情報の把握
診療報酬は2年に1度改定されます。厚生労働省の通知や関連情報を常に確認し、最新のルールに基づいた請求を行う必要があります。
審査支払機関からの返戻・査定への対応
審査の結果、請求内容に誤りや疑義がある場合、レセプトが返戻されたり、査定(減額)されたりすることがあります。特に、開業初期では病名を付けた日付が、初診・再診の算定日や処方箋を発行した日付と異なるケースで返戻・査定が多い傾向がありますので、注意をしてください。
比較的算定しやすい加算
機能強化加算は、内科では、地域包括診療加算、小児科では小児かかりつけ診療料を算定した際に「かかりつけ医」としての機能を評価される加算です。こちらはすべての初診に80点の加算となり、その他にも経営面ではプラスとなる面が多いです。
また、外来感染対策向上加算と医療DX体制推進加算も算定しやすいため、こちらも算定ができるような体制を作ってください。
ほかにも、小児科では包括支払いを選択した場合には「小児抗菌薬適正使用加算」も比較的併算定しやすい傾向にあります。
診療報酬に関する情報収集
診療報酬に関する情報は、厚生労働省のホームページや、医療関係の専門誌、医師会などが提供しています。また、診療報酬に関するセミナーや研修会も定期的に開催されています。
各都道府県には保険医協会が存在します。保険医協会は保険医の経営・生活と権利を守り、国民医療の充実と向上を目的にしている団体で、保険請求上の疑問やレセプトの作成に関して相談ができたり、説明会を開催したりしているため、加入をおすすめします。
「基本的な構成要素」と「請求の流れ」を理解しよう

診療報酬のしくみは複雑に感じるかもしれませんが、基本的な構成要素と請求の流れを理解することで、日々の業務における不安は軽減されるはずです。
電子カルテやレセプト作成ソフトを有効活用し、正確なカルテ記載と最新情報の把握を心がけることが、適切な診療報酬請求、ひいては安定した医院経営に繋がります。
難しく考えすぎず、一歩ずつ理解を深めていきましょう。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
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