コラム・インタビュー
クリニック内のトラブルの早期解決...問題別に考える「適切な相談相手」とは?

クリニックの院長が抱える悩みは、医療現場の問題だけではありません。人材管理、資金繰り、運営、さらには地域社会との関係性や将来の事業承継など多岐にわたります。これらはいずれもクリニックの経営に大きな影響を及ぼすため、早期の対処が不可欠ですが、問題の先送りや、相談相手の選定ミスがあれば、経営そのものを揺るがす大問題になりかねません。ここでは、専門家に任せる手続きや、相談すべきトラブルについて、具体的なケースとその流れを解説します。
行政手続や許認可は「行政書士」へ
クリニックの運営にまつわる各種行政手続や許認可は行政書士の管轄です。行政書士は行政の各種手続に精通し、必要書類の作成や申請手続の代行を行います。たとえるなら、一般企業の総務部の領域です。
●開業までに各タイミングで必要となる行政手続の実施
内装工事に入る前に保健所に図面を持っていき、事前確認を行います。保健所との調整の上、問題がなかったら工事を開始します。また、保健所へ開設届を提出し、オンライン資格確認の手続きを経て厚生局に保険医療機関指定申請を行います。必要に応じてX線設置届など各種届出のサポートも行います。
クリニック内の労務管理、組織運営の問題は「社会保険労務士」へ
クリニックを開業したので就業規則を作成したい。診療が忙しすぎて、社保手続や給与計算といった事務業務まで手が回らない...。これらは、独立開業した院長の多くが突き当たる最初の壁だといえます。
また、経営が軌道に乗ってきても、勤務態度の悪いスタッフへの対処、労働環境等をめぐるスタッフとの対立など、労使の信頼関係が揺らぐこともあります。たとえるなら、一般企業の総務部や人事部の管轄ですが、このような問題は社会保険労務士に相談しましょう。
●就業規則の策定
労働時間、休暇、懲戒処分などのクリニックのルールを作ることで労務トラブルの防止や労務管理の基盤づくりを進めます。
●入退職の手続き/給与計算
入退職に伴う社会保険の手続き、雇用保険の手続き、給与計算の代行や労務管理システムの導入等などについて、アウトソーシングでの支援、DXの推進の支援を行います。
●問題のあるスタッフへの対応
問題の背景の聞き取りを行い、指導方法や本人への伝え方についての検討、改善に向けたルール作り、懲戒処分の検討など、個別の事案に応じて適切な提案を行います。
●労働環境・労働状況を巡るスタッフとの対立
たとえば、スタッフから未払い残業等の指摘があった場合、遡っての未払い賃金の算定と支払い、労働条件や就業規則の見直しなど、法令に則した労働環境の実現に向けた助言を行います。
●その他
その他、雇用関係の各種助成金や、院長個人の年金相談なども社会保険労務士の対応となります。
クリニックの法人化手続、不動産登記は「司法書士」へ
司法書士は、医療法人の設立やクリニックの法人化に伴う手続きをサポートします。たとえるなら、一般企業における法務部の領域です。
●医療法人設立や登記の変更を実施
医療法人の設立時、あるいはその後の理事変更、所在地変更など、法人登記に関する手続きは司法書士の分野です。また、MS法人の設立に関しても司法書士が窓口となって相談を行うケースが増えています。
●不動産登記手続
クリニックが所有または賃借している建物・土地に関する不動産登記の手続き(所有権移転)は、司法書士に依頼することで確実な権利の保全が可能となります。また、金融機関の融資手続(抵当権設定登記)においては、司法書士による手続きが金融機関実務上必須の運用になっています。
税金相談、融資サポート、記帳代行などのお金回りは「税理士」へ
税金に関する相談はもちろん、開業時の税務署や都道府県税事務所への届出書類作成、融資のサポート、毎月の記帳代行や決算業務などは税理士に依頼します。たとえるなら、一般企業における経理部や財務部の領域です。税理士はクリニック運営のいちばんはじめに関わる士業として不可欠な存在なのです。
●開業時の資金まわり全般のサポート
開業時の税務書類の届出(法人設立届、青色申告申請など)、会計ソフト導入による経理体制構築支援、資金繰り計画・収支計画を策定し、融資申請のアドバイスも行います。
●毎月の会計業務の管理・指導
日々の売上・経費を確認し、会計ソフトへの記帳・仕訳のチェックを行い、月次決算で試算表、キャッシュフロー計算書を作成します。毎月発生する経理業務の管理や指導役になります。
●決算や確定申告のサポート
決算業務や確定申告は、クリニックの1年間の経営状態を明らかにする重要な業務です。税理士は節税対策・経営アドバイスを通じて、クリニックの適正な決算(決算書の作成・税務申告)をサポートします。
訴訟からM&Aまで...法律トラブルの要は「弁護士」へ
医療過誤や患者様とのトラブル、インターネット上の誹謗中傷、その他クリニックの事業承継(M&A)、労働トラブルなどは弁護士が対応すべき領域です。
●患者から医療ミスを理由とした訴訟が起こされた
医療過誤問題や訴訟に関するトラブルを解決するためには、医療の専門知識だけではなく法律知識が必要不可欠となります。過去に医療過誤問題に取り組んだことのある弁護士など実績のある専門家に相談されることが必要です。

●インターネット上のクチコミで事実と異なることを書かれた
インターネット上の掲示板などで事実と異なるクチコミを書かれた場合には、名誉毀損や信用毀損といった法律問題に該当する可能性があります。そのような行為によって生じる損害への対応方法を検討したり、必要に応じて削除請求等の法的措置を講じたりするのも、弁護士が対応すべき領域となります。
●事業承継(M&A)や他クリニックとの経営統合
事業承継やM&A、他クリニックとの経営統合といった重要な経営判断に伴って法的手続を執る必要がある場合には、弁護士による対応を求めることが重要です。当該手続における法的リスクの評価や契約書の作成、チェックについても相談されることをお勧めします。
●従業員から訴えられた
不当解雇や未払残業代請求といった労働トラブルの場面でも、弁護士への相談が必要不可欠です。なお、労働トラブルについては、クリニック側で適切な労務管理が行われていることも重要であり、トラブルになった際のリスクを日常的に意識したうえで、弁護士と適切な対応を行っておくことも大切です。
弁護士にもそれぞれ得意とする分野があることから、普段から取引関係にある税理士や社労士に問題に合った弁護士の紹介を求めることも有効です。
各士業との連携が、クリニック経営に安定をもたらす

クリニック経営においては、医療行為以外にも、法務・税務・労務・許認可・登記など、さまざまな分野にリスクが潜んでいます。なにより、今後も法制度や社会情勢の変化が予想されますが、そのようななか、クリニック経営者は各士業と良好な関係を維持することが、安定的なクリニック経営の鍵となるでしょう。
なぜなら、専門性のある士業との連携はトラブル予防策として有益であり、また、万一のトラブル発生時にも迅速な問題解決を可能にするからです。
クリニック経営は、医療の質だけでなく、経営全体のリスク管理が問われるビジネスです。事前に各専門家とのネットワークを構築しておくこと、そして実際にトラブルが発生した際に迅速に対応できる体制を整えることが、クリニックの未来を守るための最善策となります。
社会保険労務士法人WILL
代表社労士 山本 達矢
監修者 株式会社コスモス薬品
本社は福岡県福岡市博多区。東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33期連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業支援にも注力し、2024年現在、開業物件数は約350店舗。
集患に有利なドラッグストア併設型クリニックを全国各地で提案している。

弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。