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クリニック開業お役立ちコラム
人手不足の医療業界、いますぐ人材が欲しいが...ベテラン社労士が教える「採用時、慎重に確認すべきポイント」とは?
すぐに人材がほしいばかりに採用を急ぐと、「よくわからないまま採用してしまった」「期待していた人材ではなかった」といったミスマッチが起き、現場に大きな混乱を招いてしまうことがあります。ここでは、医療業界を数多く支援してきた社会保険労務士の視点から、採用時にぜひとも留意したい、確認すべきポイントについて解説します。
深刻さが際立つ「医療従事者」の人手不足
厚生労働省が発表した「一般職業紹介状況(令和7年2月分)」の参考統計表によると、全職種の有効求人倍率は1.32倍に対し、看護師などの医療従事者に限っては有効求人倍率が3.22倍となっています。
これは求職者1人に対して3件以上の求人がある状況を示しており、医療従事者の人手不足がほかの職種と比較しても際立って深刻なことが明確となっています。
医療業界の人手不足とその背景
まず押さえておきたいのは、なぜ医療業界がこれほどまでに人手不足に陥っているのかという点です。
高齢化が進む日本の医療ニーズは、年々高まり続けています。一方で、現場で働くスタッフの数はそれに比例して増えておらず、むしろ疲弊による離職や、ライフイベントに伴う退職も少なくありません。とくに看護師のような資格職は、一般的な事務系の職種と比べて転職がしやすいため、職場に満足ができない場合は環境を変える選択を取ることが多くなっています。
さらに、医療の現場では「業務の属人化」が進みがちで、ひとり辞めると診療体制全体が不安定になるというリスクも抱えています。とくに小規模なクリニックでは、スタッフの存在が業務を大きく左右するため、採用の重要性は極めて高いといえるでしょう。
理解しておきたい「看護師の転職事情」
採用を成功させるには、看護師特有の転職傾向を理解しておくことも大切です。
日本の看護師全体のうち、女性看護師の割合は約92%となっています(出典:厚生労働省「令和2年衛生行政報告例」)。女性が多い職種であることから、結婚・出産・育児などのライフステージの影響を受けやすく、勤務形態に対する希望が強い傾向にあります。
「午前中だけ働きたい」「週3日以内にしたい」「子どもの行事がある日は休みたい」といった希望があることも多く、それらをしっかりと考慮せずに採用してしまうと、早期退職や勤務トラブルにつながりかねません。
また、小規模のクリニックは病棟勤務に比べて「比較的楽そう」という理由から勤務を選ぶ人もおり、現場での忙しさや幅広い業務内容に戸惑うケースもあります。「こんなはずではなかった」というミスマッチを防ぐためにも、相手の動機や期待値をしっかり確認することが大切です。
採用前に必ず確認しておきたいポイント
では、実際に採用活動を行う際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。以下に、社労士として多くの医療機関を見てきた経験から、とくに重要と感じるポイントを5つにまとめました。
1.志望理由と離職理由の確認
看護職は職業意識が高い傾向にあり、患者様のために最善を尽くしたいという責任感や、自身のスキルアップへの気持ちを持つ人が多くいます。前職の離職理由がそんな職業意識とのミスマッチである場合は、応募者の仕事観とクリニックの実務に乖離がないか、しっかり確認する必要があります。

2.勤務条件のすり合わせ
シフトの希望、扶養内勤務の可否、子育てとの両立希望など、勤務に関する希望を丁寧に確認しましょう。口では「大丈夫です」といっていても、実際には制限がある場合もあります。面接時には、応募者が遠慮なく本音を言える工夫が必要です。
3.既存スタッフとの相性

小規模なクリニックでは、職場の雰囲気やチームワークが業務効率に直結します。経験やスキルが十分でも、協調性が欠けていると現場がギクシャクすることもあります。第一印象や会話のやりとりから、「いまいるスタッフとうまくやっていけそうか」を見ておきましょう。
4.スキルや資格の確認
ブランクが長かった方や、前職で特定の業務にしか携わっていなかった方の場合、現在の業務にどの程度対応できるのか確認する必要があります。少ししか経験がない業務も、面接時には背伸びして「できます」と伝えてしまう場合もあります。入職前にできる業務とできない業務をしっかりと仕分けしておくことで、採用してからのミスマッチを防ぐことができます。
5.患者対応への考え方やスタンス
スキルや経験が十分でも、患者様への接し方に問題があるとトラブルの原因になります。地域のクリニックでは、一度対応の悪さが広まってしまうと、信頼を取り戻すのに相当な時間と労力を要します。面接時に、理不尽なクレームを受けたときや、高齢の患者様への接遇などについて尋ね、実際の対応のスタンスを確認しておくといいでしょう。
採用の失敗がもたらすリスク
採用を誤ると、単に人を入れ替えるだけではすまない問題が発生します。職場内に不協和音が生じ、既存のスタッフの離職を招くこともあります。また、スタッフの欠員によって診療が滞り、患者からのクレームが発生するなど、クリニックの信頼性にも影響を及ぼしかねません。
さらに、再度の求人費用や教育コストなど、目に見えない出費も増加します。とくに小規模なクリニックでは、こうしたリスクが経営に与えるダメージは深刻なため、採用の段階での見極めは極めて重要だといえます。
焦らず、確実な採用を目指すために

「いますぐにでも来てほしい!」という気持ちは痛いほどよくわかりますが、採用は「急がば回れ」です。焦って採用して失敗するより、慎重・丁寧に選ぶほうが、結果的に職場の安定と診療の質向上につながります。
また、既存スタッフが働きやすい職場環境を整えて、定着率を上げることで、人員不足による突発的な採用活動ではなく、ゆとりを持った戦略的な採用活動が可能になります。
数ヵ月に1度スタッフとの面談の機会を設ける、意識的にコミュニケーションを図る...といった取り組みを通じて、「働きやすさ」について丁寧なヒアリングをしておくことが大切です。
採用は、クリニックの未来をつくる大切な経営判断です。現場に合った、長く働ける人材を見極めるために、まずは「知ること」「確認すること」を意識しましょう。それがクリニックの安定運営へのいちばんの近道となるはずです。
社会保険労務士法人WILL 代表社労士
山本 達矢
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

