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クリニック開業お役立ちコラム
クリニックの承継開業のキモ...患者様に不便をかけない「スムーズな院長交代」の秘訣
地域に根ざしたクリニックの承継開業は、信頼と安心を未来へつなぐ重要なステップです。しかし、長年親しまれた院長から新院長への交代は、患者様やスタッフにとって大きな変化であり、不安を生むことも少なくありません。この点をうまく乗り切れるかどうかが、クリニックの承継開業の成否を左右するカギとなります。
承継開業は、患者様やスタッフにとっても大きな変化

地域医療の灯を絶やさず、長年培ってきた信頼を新たな医師へ承継し、未来へとつなぐクリニックの承継開業。しかし、その過程は、新しい院長にとっても、そしてクリニックの主人公となる患者様やスタッフにとっても大きな変化だといえます。
なかでも、長年にわたって信頼関係を築いてきた院長から新しい院長への交代は、かかりつけ医療機関への安心感を揺るがしかねません。だからこそ、「患者様に不便をかけないスムーズな院長交代」は、クリニックの承継開業の成否を左右する最重要課題といえるでしょう。
患者様に寄り添い、スタッフやシステム変更による混乱を最小限に抑え、スムーズな院長交代を実現するための秘訣には、どのようなものがあるのでしょうか。
価格に関する情報は、ここでは一般的な原則と考慮すべき点に触れるに留めながら、具体的な事例を用いて解説していきましょう。
エピソード①
突然の告知を受け、スタッフも患者様も大混乱したケース
承継開業を考えていたAクリニックでは、後継者の準備が整った段階で、院内掲示とホームページで「〇月〇日より院長が交代します」と突然の告知を行いました。なんと、スタッフも承継と院長交代を知らされておらず、寝耳に水という状態です。長年通院していた患者様からも「なぜもっと早く教えてくれなかったのか」「新しい先生はどんな人なのか」といった不安の声が多数寄せられました。
ここから学べるのは、患者様への告知は段階的に、そして丁寧に、時間をかけて行う必要があるということです。
承継の計画が具体化し始めた段階から、スタッフへの通知や、院内掲示やホームページで「将来的に院長交代の可能性がある」ことを示しつつ、患者様に心の準備期間を与えることが大切です。
具体的な告知のステップは以下の通りです。
1.初期告知(承継の数ヵ月前)
院内掲示やホームページで、院長交代の予定があることを告知します。具体的な時期は未定としながらも「よりよい医療提供体制を目指して準備を進めています」といった前向きなメッセージを添え、不安を煽らないように配慮します。
2.中期告知(承継の1ヵ月〜2ヵ月前)
新院長の氏名・専門分野・経歴・人柄などについて院内掲示をするほか、ウェブサイト、予約時の案内などで告知します。新院長の顔写真やメッセージ、旧院長からの紹介文などを添えることで、親近感と安心感を醸成します。可能であれば、「〇月〇日に患者様向け説明会を開催予定です」といったイベントによる告知も有効です。
3.最終告知(承継の直前)
改めて院内掲示、ウェブサイト、個別のお知らせなどで最終確認を行います。新旧院長の共同挨拶状を送付したり、予約確認の電話の際に口頭で伝えたりすることも効果的です。
エピソード②
共同診療によるスムーズな移行と着地ができたケース

Bクリニックの承継開業では、新旧院長が3ヵ月間の共同診療期間を設けました。この期間中、旧院長は診察の際に積極的に新院長を紹介し、「〇〇さんの今後の診療は、△△先生が担当させていただきます。△△先生は〇〇の専門で、これまでも多くの患者さんを診てこられましたのでご安心ください」といった具体的な言葉で患者様の不安を和らげました。また、新院長も積極的に患者様とコミュニケーションを取り、自身の専門性や熱意を伝えることで、徐々に信頼関係を築いていきました。共同診療期間が終わるころには、多くの患者様が新院長への交代を自然に受け入れていました。
このエピソードが示すように、新旧院長による共同診療期間を設定することで、患者様は安心して新院長の診察へ移行できます。
旧院長による新院長の紹介は、患者様にとって大きな信頼の担保となり、新院長が直接患者様と接することで、顔の見える関係性を築くことができるのです。
さらにスタッフも引き継いだ場合には、旧院長がどのようにスタッフと連携をとっているかを新院長も実地で学ぶことができ、スタッフ側とも信頼関係を築きやすくなります。
共同診療期間おおむね3ヵ月程度が適切です。
共同診療期間中は、
- 旧院長が新院長の診療スタイルや得意分野を紹介する
- 新院長が患者様の病歴や治療方針を旧院長から丁寧に引き継ぐ
- 新旧院長が、承継後においても連携して診療にあたり、患者様の疑問や不安に共同で答える
といった取り組みが重要となり、患者様・ご家族へ新院長に代替わりしても、スムーズな診察が可能であることをアピールすることにも繋がります。
エピソード③
説明不足によるスタッフの不安が、患者様へ伝播・増幅したケース
Cクリニックの承継開業では、院長交代の告知が患者様に行われたあとも、スタッフへの十分な説明が行われませんでした。そのため、スタッフ間では「新しい院長はどんな人だろう」「自分の仕事はどうなるのだろう」といった不安が広がり、患者様からの質問にも曖昧な返答しかできず、それが患者様の不安を増幅することにも繋がってしまいました。
結果として、既存スタッフたちは承継後のCクリニックで継続して勤務をすることはなく、新院長はスタッフ採用に苦戦する結果となりました。
このエピソードから、スタッフへの丁寧な情報共有と連携が重要なのはもちろん、それをおろそかにすると患者様の不安感に直結することがわかります。

スタッフは、患者様にとってクリニックの顔であり、最初の接点となる存在です。患者様・ご家族からは「スタッフの〇〇さんがいるから安心」と思われている場合や、スタッフがクリニックの円滑な運営に関与していることも多いためです。
そんなスタッフが安心して業務に取り組めるよう、環境を整えることが、スムーズな院長交代をするうえで重要なカギとなります。
具体的には、
- 承継計画の初期段階からスタッフに情報を共有し、意見や不安を聞く機会を設ける
- 新院長からスタッフへ、自身の経歴、診療方針、クリニックへの想いを丁寧に説明する機会を設ける
- 新体制におけるスタッフの役割分担を明確にし、安心して業務に取り組めるようにする
- 必要に応じて研修や教育機会を提供し、新しい診療体制やシステムへのスムーズな移行を支援する
- 旧院長からスタッフへ感謝の気持ちを伝え、新体制への協力を仰ぐ
といった取り組みが求められます。
同時に、医療人材の確保は近年困難であることから、承継後の労働条件(時間や内容)に関しても事前の面談・理解を求めることが重要です。
エピソード④
システム刷新と説明不足で混乱と患者離れを招いたケース
Dクリニックでは、院長交代と同時に電子カルテシステムと予約システムが刷新されました。しかし、事前の告知や説明が不十分だったため、多くの患者様が新しいシステムの操作に戸惑い、電話が繋がりにくい状況も発生しました。
診療時間内でも予約が取れない、また予約が取りにくい、会計に時間がかかる、といった点を不便に感じた患者の3割程度が、他のクリニックへ移ってしまいました。
この事例は、院長交代に伴うシステム変更は、患者様の利便性を最大限に考慮し、慎重に進めるべきである、ということを示唆しています。
もしシステム変更が避けられない場合は、
- 変更の目的、内容、スケジュールを患者様に丁寧に説明する
- 新しいシステムの操作方法に関する説明会や資料を提供する
- 移行期間中は、旧システムと新システムを並行運用するなどの猶予期間を設ける
- 問い合わせ窓口を設置し、患者様の疑問や不安に迅速に対応する
といった対策を講じる必要があります。可能な限り、診療時間、休診日、予約方法、支払い方法など、患者様が慣れ親しんだ診療体制は維持することが、混乱を避けるためには重要となります。
価格に関する考慮事項
クリニックの承継開業における価格は、クリニックの立地、規模、診療科目、患者数、設備、経営状況、地域性など、さまざまな要因によって大きく変動するため、一概に「〇〇円が相場」といった情報を示すことは困難です。
一般的には年間売上の半額から60%、あるいは年間の利益が営業権となり、これに医療機器・スタッフの承継の部分が追加となる傾向があります。
価格交渉においては、以下の点を考慮することが重要です。
デューデリジェンス(詳細な調査)
財務状況、法務状況、診療実績、患者情報などを詳細に調査し、適正な価格を判断するための材料を収集します。たとえ小規模なクリニックであっても、公認会計士など第三者による監査が必要です。
専門家の活用
社労士、会計士(税理士)、行政書士、コンサルタントなどの専門家の意見を聞きながら、承継価格と承継内容の交渉を進めることが賢明です。
将来性への投資
単に過去の収益だけでなく、今後の成長ポテンシャルや地域医療への貢献度なども考慮に入れることが重要となります。
承継後の運営資金
承継費用だけでなく、承継後の運転資金や設備投資なども含めた資金計画を立てる必要があり、銀行融資は必要であることが多いです。
価格交渉においては、感情的にならず、客観的なデータに基づいた冷静な判断が求められます。第三者の仲介による対応があれば、客観的意見に基づく取引となるため、安心材料になります。
「患者様中心の承継」で成功を掴む
クリニックの承継開業を成功させるための最も重要な秘訣は、常に患者様の視点に立ち、不安や不便を最小限に抑えるための配慮を尽くすことです。
段階的な情報公開、新旧院長の協働、スタッフとの連携が承継開業において重要なポイントとなります。
診療体制の引き継ぎの理解を患者にしていただくこと、丁寧なコミュニケーションを通じて患者様の信頼と安心感をしっかりと引き継ぐことこそが、スムーズな院長交代を実現し、クリニックの未来を明るく照らすカギとなります。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

