コラム・インタビュー
閑古鳥のクリニック経営...脱却を焦っても「絶対にやってはいけない」こと

苦労を重ねてようやく開業にこぎつけたのに、3ヵ月経過しても患者数は増加せず、経営は赤字のまま。運転資金はどんどん目減りしていく...。こんな状況では、院長が焦るのも無理もありません。しかし、状況を打開しようとあがくことで、さらなる悪化を招くこともあります。どんな行動が「NG行為」となるのでしょうか? ここでは、集患できないクリニック経営者が「絶対にやってはいけないこと」をピックアップして解説します。
安易な値下げや過剰な広告宣伝はNG!
患者を増やしたい一心で、保険診療・公費診療以外(自費診療)の安易な値下げ、過剰な広告宣伝に走るのは危険です。
●自費診療の値下げ
任意接種ワクチン、プラセンタ・白玉点滴などの自由診療項目は、保険医療機関のメインストリームではありません。値下げによって一時的に患者様は増えるかもしれませんが、中長期的な視点でみると、本来あるべきクリニックの存在意義・ブランドイメージを損ねる可能性が高いといえます。客単価の高い自由診療を主軸に切り替えるのはいいですが、「安いから」という理由で来る患者様は継続的な通院に繋がりにくい傾向があり、クリニックへの信頼がなければ、すぐに離反してしまいます。
●過剰な広告宣伝
保険医療機関においては、ビラなどの紙媒体は医師会などの紳士協定により新規開業時あるいは院長交代時などに限られます。無理に患者来院を促す心理状況であれば、ターゲット層に響かない広告、誇大広告となり、費用対効果も悪くなります。

スタッフのモチベーション低下を放置するのはNG
患者様が来ない状況が続けば、スタッフのモチベーションはかなりのところまで低下する可能性があります。それにより、まずはクリニック内の雰囲気悪化が懸念され、スタッフ間のコミュニケーション不足・不満が募ることも増えてきます。
患者数が低下すれば、雇用先であるクリニックの存続自体が危ぶまれます。それにより、本来支払われる給与の踏み倒しや整理解雇なども懸念されることから、退職・転職へと気持ちが傾くスタッフが増え、その結果、せっかく患者様が来院しても満足いただけるサービスの提供ができないばかりか、ささいなミスも生じやすくなってしまいます。
焦って新たな治療法やサービスを導入するのはNG

患者様を呼び込みたいからといって、焦って新しい治療法やサービスを導入するのは危険です。知識やサービス内容など準備不足の状態で患者様への施術・投与をした場合、患者様に不利益をもたらす可能性があり、さらに悪いクチコミが発生します。
費用負担も軽視できません。新たな機材・設備やそれを使いこなす人材の育成には費用と時間がかかります。患者様が増えなければ、負担だけが増え、逆効果となります。
患者様の意見に耳を傾けないのはNG
患者様が来ない原因が、患者様の声のなかに隠されていることがあります。開院初期には「試し受診」もありますが、3ヵ月程度経過すれば一定の評価が生じます。この中で多いのが、患者様とのコミュニケーション・診療態度・院内の雰囲気など、サービスやコミュニケーションに関連したものが多くなります。
そのため、アンケートの実施、クチコミの確認などを通してフィードバック・改善を試みてください。
改善策としては「自分が病気になったとき、自分のクリニックにかかりたいか」ということを厳しく突き詰めて考えてみるとよいでしょう。また、院長自身が、休診日に非日常の空間(ホテルなど)でゲストとしておもてなしを受けてみて、クリニック内の接遇と比較してみるなども重要です。
無理な資金繰りを実施するのはNG
あまりにも集患できない状態が続くと、経営改善を諦めてしまう院長も出てくるかもしれません。厳しい状況下でも諦めずに努力を続けることが重要ですが、その部分を勘違いして、他院で救急外来などのアルバイトに精を出し始める院長もいるのです。
本業であるクリニック院長の職務を全うできなくなると、患者様から逆に心配されてしまうといった逆効果になることもあります。

以前に筆者が聞いた話ですが、都内のある駅前で小児科を開院したドクターは、開業から6ヵ月経過しても1日10人の来院もなく、運転資金も底をつき、毎月の保険収入のみではスタッフの人件費どころか家賃すら払えない状況でした。実際には、腕も接遇も不良であり、客観的に見れば、現状は起こるべくして起こっているものでしたが、当のドクターは平日週3回と土日ほぼすべて、給与のよい他院(換言するとハードな勤務)で非常勤となり、月150万円の給与を自身のクリニックの赤字補填にしていました。しかし、最終的には体を壊し、精神的にも再起が困難になってしまいました。
ほかにも、一獲千金を狙って株式の信用取引を行ったり、高いレバレッジをかけたFX取引などに手を出したりした医師の例も知っています。もちろん、追い込まれた状況ではまともな判断などできるはずもなく、赤字が雪だるま式に膨らみ、閉院を選ぶ結果になりました。
また、こうした資金繰りの悪化により、追加融資を受ける場合もあります。ただ、新規開業での金利は2.0%弱(2025年現在)が相場ですが、追加融資の場合は銀行・ノンバンクなどの貸与側ではハイリスクとなるため、金利が高く設定されることが多く、戦略のない安易な借入によって、自分の首を絞める結果になりかねません。
まとめ
経営難から脱却するためには、焦らず、冷静に状況を分析し、適切な対策を講じることが大切です。焦りと慢心こそがビジネスのNG行為です。
即効性のある施策も悪くはありませんが、まずは冷静に「自分は開業してなにをしたいのか」を改めて自身に問うことです。そのうえで、スタッフや患者様、家族の声に耳を傾けつつ、クリニックの運営や集患で重要となる「接遇」「コミュニケーション」「宣伝広告の更新」などの改善を、一歩ずつ進めていきましょう。くれぐれも、法令違反、本末転倒なアルバイト、無茶な資金繰りは控えてください。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者 株式会社コスモス薬品
本社は福岡県福岡市博多区。東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33期連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業支援にも注力し、2024年現在、開業物件数は約350店舗。
集患に有利なドラッグストア併設型クリニックを全国各地で提案している。

弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。