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クリニック開業お役立ちコラム
クリニック開業が茨の道、リスクとなっているウソホント
以前に比べて困難になっているクリニック開業。そこには複数の要因がありますが、なかでも、金利上昇、コロナ禍以降の受診行動の変化、人件費・材料費の高騰は、とくに大きな影響を与えているといえます。複数の側面からクリニック開業の厳しい現状を見ていきます。
資金調達の問題...金利上昇、材料費、人件費の高騰
クリニックの開業には、初期投資として物件取得費、内装工事費、医療機器購入費など、多額の資金が必要です。とくに内装工事は、材料費や技術者の給与水準が上がったこともあり、坪単価100万円を超えるケースも出てきました。
初期投資以外にも、開業後の運転資金として3ヵ月から6ヵ月分を確保しておく必要がありますが、その多くは金融機関からの融資に頼らざるを得ません。しかし、2020年以降の金融緩和政策の転換に伴い、世界的に金利が上昇傾向です。金利上昇は借入金の返済負担を増大させ、開業希望者の資金計画を大きく狂わせる可能性があります。
とくに、不動産の取得や高額医療費機器の導入など、長期にわたる返済計画がある場合は、金利の変動が経営に与える影響は無視できません。
変動金利型で融資を受けた場合、将来的な金利上昇リスクも考慮する必要があり、開業への慎重な姿勢を促す要因となります。
また近年では、金融機関側が医業を「リスク産業」とみる傾向があります。医業が安定産業と考えられていた時代では、金利が2.0%を切るケースも少なくありませんでしたが、近年では融資審査も厳格化され、「融資不可」の判定を受ける割合も増加しています。
たとえ審査が通っても、金利が3.0%近くになれば、総合的に見て開業資金の調達自体が難しくなる可能性もあります。
経営環境の問題...コロナ禍以降に起きた受診状況の激変
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、医療業界全体に大きな変化をもたらしました。クリニック経営に大きな影響を与えたものとして、以下の点が挙げられます。
患者数の減少
感染への不安から、軽い疾患・慢性疾患など、緊急性の低い受診を控える、あるいは受診頻度を下げる患者様が増加。感染対策としての外出自粛や行動制限も、患者数の減少に拍車をかけました。そして、外出自粛等がなくなった現在でも、パンデミック前の水準まで戻ったとはいいがたい状況です。
これにより、開業当初の見込み患者数を確保できず、経営が不安定になるリスクが高まっています。同時に、コロナ禍の影響でオンライン診療の導入も拡大傾向で、対面の診療件数が減少している側面もあります。
感染対策費用の増加

コロナ禍によって、医療関係者のみならず患者様側も感染対策への意識が高まったことにより、院内感染を防ぐ設備投資(空気清浄機、換気設備の強化など)や、マスク、消毒液、防護具などの衛生用品の購入費用が大幅に増加しました。
とくに発熱や風邪症状を取り扱う診療所では必須となり、これらの費用は、開業時の初期投資だけでなく、継続的に発生する費用として、経営圧迫の要因になります。
診療体制の変化への対応

オンライン診療の導入や、発熱患者と一般患者の動線分離など、コロナ禍で求められた感染対策は「新たな基準」として広く定着し、それに対応した診療体制が求められるようになりました。
これらの対応には、既存のクリニックではシステムの導入費用や運用コストの増大・人員配置の変更などが、新規開業のクリニックでは初期投資金額の大幅な増加が発生し、いずれも経営的な負担が重くなります。
医療従事者確保のむずかしさ
ただでさえ感染リスクの高い医療現場を敬遠する流れのなか、医療従事者たちの感染による休職などを想定したうえでの「ゆとりある人員確保」を求められ、そもそも困難だった人材確保が、なお一層むずかしくなりました。
とくに看護師や医療事務などの専門職の人材不足は深刻で、開業後の安定的な運営を揺るがす不安要素となっています。
人件費・材料費の問題...あらゆる費用の増加
医療業界における人材不足は以前から指摘されていましたが、コロナ禍を経て深刻さが増しています。
とくに、経験豊富な看護師、医療事務などの専門職の採用はむずかしく、人材獲得競争が激化しています。人材確保のため賃金も上昇傾向で、クリニックの運営コストを押し上げる大きな要因となっています。

また、働き方改革関連法の施行により、時間外労働の削減や有給休暇の取得促進などが義務付けられ、人員配置の最適化や業務効率化が求められています。これらの対応が不十分な場合、人件費の増加に拍車がかかる可能性があります。
さらに、近年では物価上昇の影響も無視できません。従業員の生活を支えるためには、給与水準の維持・向上も考慮する必要があり、経営者にとっては大きな負担となります。
その他の要因
上記以外にも、クリニック開業を困難にしている要因はいくつか存在します。
医療法規制の厳格化
医療安全や患者保護の観点から、医療法や関連法規の規制が年々厳格化しています。これらの規制を遵守するための設備投資や運営体制の構築には、時間と費用がかかります。
競合の激化
近年では都市部を中心に、クリニックの数が増加傾向にあります。診療圏調査を十分に行わずに開業した場合、近隣の医療機関との競合に晒され、患者の獲得に苦労する可能性があります。
診療報酬改定の影響
政府による診療報酬改定は、クリニックの収益に直接的な影響を与えます。とくに2024年の医療費抑制の流れから診療報酬が引き下げられる傾向にあり、経営の安定化がむずかしくなっています。
IT化への対応
電子カルテの導入やオンライン診療の推進など、医療現場のIT化が進んでいます。これらのシステム導入や運用には費用がかかるだけでなく、スタッフのITスキル習得も必要となります。
後継者不足
地方のクリニックにおいては、院長の高齢化に伴う後継者不足が深刻化しています。後継者がなく閉院を余儀なくされるケースもあり、新規開業の意欲を減退させる要因にもなりかねません。
まとめ
クリニック開業が困難になっている背景には、金利上昇による資金調達のむずかしさ、コロナ禍による患者数減少や感染対策費用の増加、人件費の高騰といった直接的な要因に加え、医療法規制の厳格化、競合の激化、診療報酬改定の影響、IT化への対応、後継者不足など、複合的な要因が絡み合っています。
これらの課題を克服し、持続可能なクリニック経営を実現するには、徹底的な市場調査に基づいた事業計画の策定、効率的な資金調達、感染対策と診療体制の最適化、人材確保と育成、IT化への積極的な対応などが求められます。
また、地域社会のニーズを的確に捉え、患者様にとって価値のある医療を提供して信頼を得ていくことが、なにより重要となるでしょう。
以前と比べて開業の成功確率が減少しているため、開業を検討する際には、これらの多岐にわたる要因を十分に理解し、慎重な判断と周到な準備・差別化などのストラテジーが不可欠だといえます。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
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