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クリニック開業お役立ちコラム
医療機器「買う? 借りる?」... 税務・財務から読み解く賢い選択のポイント
開業準備において頭を悩ませることのひとつが、医療機器の導入でしょう。高額な医療機器は、クリニックの初期投資に大きな影響を与え、経営の今後を左右します。「買うか、借りるか」の明確な答えを出すには、それぞれのメリット・デメリットについて税務と財務の両面から深く理解したうえで、経営戦略に合った選択をすることが重要です。今回は、多くの開業医の方々がよく導入を検討される心電計、エコー(超音波診断装置)、レントゲン(X線撮影装置)を例に挙げながら、賢い選択のポイントを解説していきます。
医療機器導入の選択肢:購入・リース・レンタル
まずは、医療機器を導入する際の主な選択肢を整理しましょう。

購入(現金購入・ローン購入)
<メリット>
資産計上と減価償却
機器はクリニックの資産となり、法定耐用年数(一般的に心電計5年、エコー8年、レントゲン10年など)に応じて減価償却費を計上できます。減価償却費は、実際に現金が出ていかなくても経費として計上できるため、課税所得を圧縮し節税効果が期待できます。
所有権の獲得
機器が完全に自院の所有物になるため、使用年数や使い方に制限がなく、将来的に売却することも比較的スムーズです。
総支払額の抑制
金融機関からのローン金利は、後述のリースの金利よりも低い場合が多く、最終的な総支払額はリースよりも安くなる可能性があります。
<デメリット>
初期費用の負担
高額な機器の場合、現金購入であれば多額の現金が一度に流出し、ローンの場合も2割程度の頭金が必要となることが多く、開業時の資金繰りを圧迫する可能性があります。
陳腐化リスク
医療技術の進歩は速く、数年でより高性能な機器が登場することも。購入した機器が陳腐化した場合でも、その機器を使い続けなければなりません。
固定資産税の負担
償却資産として固定資産税がかかります。
メンテナンス費用や修繕費の自己負担
故障などの修理費用は全て負担が発生します。
リース
リースとは、リース会社が医療機器を購入し、それをクリニックに賃貸する契約形態です。多くの場合、5年~7年程度の長期契約となります。
<メリット>
初期費用の抑制
頭金不要で、月々のリース料を支払うだけで高額な機器を導入できます。開業時の資金繰りを楽にできます。
経費処理の明確さ
リース料は全額が経費(リース料)として計上できるため、会計処理がシンプルです。
減価償却の不要
減価償却費の計算が不要になります。
陳腐化リスクの軽減
契約期間終了後、新しい機器に乗り換えることが容易であり、最新の機器を導入・アップデートしやすいです。
固定資産税の負担なし
機器の所有権はリース会社にあるため、固定資産税はリース会社が負担します。
メンテナンス費用を含む契約も可能
リース契約によっては、メンテナンス費用や保守契約などをリース料に含めることができるため、突発的な修理費用の発生を抑えられます。
<デメリット>
総支払額の増加
リース会社の手数料や金利が上乗せされるため、一般的に購入するよりも総支払額は高くなります。金利としては2%程度と高めに設定されています。
中途解約の困難さ
原則として中途解約はできません。やむを得ず解約する場合は、残存期間のリース料を一括で支払い上乗せされた違約金が発生することがあります。
リース期間満了時の選択肢
期間満了後、再リース(廉価で契約延長)するか、返却するか、買い取るかを選択することになります。再リース料は安価ですが、機器が古くても継続して使い続けることになります。
レンタル
レンタルは、リースよりも短期間(数日から数年)で機器を借りる形態です。
<メリット>
超初期費用の抑制
非常に短期間の利用や、特定の期間だけ必要な場合に最適です。
柔軟性
契約期間が短いため、必要な時に必要な期間だけ利用できます。
メンテナンスの負担なし
通常、レンタル料金にメンテナンス費用が含まれています。
最新機器の利用
レンタル会社が所有する最新機器を利用できる場合があります。
<デメリット>
総支払額の高さ
リースよりも割高な月額費用になることが多く、長期的に利用すると購入やリースよりも大幅に総支払額が高くなります。
資産計上・減価償却不可
経費処理は可能ですが、資産計上はできません。
所有権なし
当然ながら所有権はありません。
在庫状況に左右される
人気の機器は、使いたい時にすぐに借りられない可能性があります。
税務・財務から読み解く賢い選択のポイント
ここからは、具体的な医療機器を例に、税務・財務の視点から「買うべきか、借りるべきか」を深掘りします。
簡易的な心電計(数十万円)、一般的な12誘導心電計:100万円~250万円程度
資金繰りを重視するなら「リース」が有力な選択肢です。高額な心電計を購入すると、開業初期の資金繰りを圧迫する可能性があります。リースであれば頭金なしで導入でき、月々の支払いに平準化できるため、手元資金を他の設備投資や運転資金に充てることができます。また、会計処理もシンプルです。
節税と長期的な総コストを重視するなら、簡易的な心電計の場合、「購入」も十分に検討の余地があります。医療技術の進歩は早いとはいえ、心電計の基本的な機能は大きく変わることは少ないため、陳腐化のリスクもエコー・レントゲンほど高くはないかもしれません。耐用年数も5年と短めであり、陳腐化リスクも他の高額機器に比べれば限定的です。
エコー(超音波診断装置)(100万円~1,000万円以上)の場合
診療に不可欠な画像診断装置であり、機種によって価格帯が大きく異なります。

"税務"面での購入とリース比較
購入
→資産計上し、耐用年数8年で減価償却を行います。減価償却費は毎年経費計上され、長期的な節税効果があります。開業初年度は全額経費にはなりませんが、数年かけて着実に節税効果が得られます。
リース
→リース料は全額経費として計上できます。購入に比べて初年度の経費計上額は大きくなる可能性があります(リース期間による)。
"財務"面での購入とリース比較
購入
→導入コストが高いため、現金購入は資金繰りを大きく圧迫します。ローンを組む場合は、借入金が負債となり、キャッシュフローに影響を与えます。
リース
→月々の支払いに抑えられるため、初期投資を抑え、開業時の資金繰りの安定に貢献します。
エコーの導入のために...賢い選択のポイント
価格帯と開業時の財務状況によって判断が分かれます。
開業資金を温存したい、もしくは頻繁に最新機種に切り替えたい場合
リースが有利です。初期費用を抑え、数年ごとの新しい機種への移行が容易です。ただし、総支払額は購入より高くなることを許容する必要があります。
特定の期間限定で専門外来を開設するなど、一時的な利用の場合
レンタルが推奨です。
レントゲン(X線撮影装置)(500万円~2,000万円以上)の場合
設置工事が必要となるケースが多く、高額な設備投資になります。

"税務"面での購入とリース比較
購入
資産計上し、耐用年数10年で減価償却を行います。償却期間が長く、毎年の減価償却費が経費となり、長期的な節税効果が期待できます。
リース
リース料は全額経費として計上できます。レントゲンはリース期間を長めに設定することが多いため、月々の支払額を抑えられます。
"財務"面での購入とリース比較
購入
多額の初期投資が必要となり、資金繰りへの影響が最も大きいです。銀行からの融資が必須となります。
リース
初期費用を大幅に抑えられ、開業時の資金繰りの安定に最も貢献します。リース期間も長いため、月々の支払負担も分散されます。
レントゲンの導入のために...賢い選択のポイント
レントゲンのような高額機器は、リースを選択する開業医が非常に多いです。初期投資の負担を最大限に軽減したい、早期の黒字化など資金繰りを安定させたい場合には、リースが最も現実的な選択肢となります。
将来的に医療法人の設立を検討しており、法人に資産を持たせたい、あるいは長期的な資産形成を重視する場合
慎重に検討した上で購入も選択肢になりますが、開業時の財務状況と照らし合わせて無理のない範囲で検討すべきです。
賢い選択のためのチェックリスト
医療機器の導入は、一度決めると売却など簡単には変更できません。
自院の経営戦略と診療方針の明確化
ターゲット患者層と提供する医療サービス
どのような患者層に、どのような医療を提供したいのか? これにより、必要な機器の種類や性能が決まります。例えば、整形外科でスポーツ外傷を多く診る、呼吸器内科や循環器内科であれば高性能なエコーやレントゲンは必須でしょう。
税務上のメリット・デメリットの比較
開業初年度の利益見込み
開業初年度から利益が出そうであれば、少額減価償却資産の特例や、高額機器の減価償却費で節税効果を狙う購入が有利な場合があります。
キャッシュフローへの影響
減価償却費は現金支出を伴わない経費ですが、リース料は毎月現金支出を伴います。
財務(資金繰り・キャッシュフロー)の検討
開業資金の総額と手元資金
潤沢な自己資金があるのか、それとも融資が中心になるのか。
月々の固定費のシミュレーション
賃料、人件費、薬品代、そして医療機器の支払い(ローンの返済額やリース料)など、固定費をしっかりシミュレーションし、無理のない経営計画を立てましょう。
まとめ
医療機器の導入は、開業医にとって大きな決断です。簡易的な心電計や、(本文では触れませんでしたが)呼吸機能検査機器のような安価な機器は購入(特に特例を利用した一括経費計上)が税務上有利なケースが多いです。この一方、100万円を超える12誘導心電計・エコー・レントゲンのような高額機器は、初期費用の抑制と資金繰りの安定を重視するならリースが有力な選択肢となります。
最終的な判断は、皆さんの開業資金の状況、将来の経営計画、そして税務上のメリット・デメリットのどちらを重視するかによって異なります。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

