ホーム > クリニック開業お役立ちコラム > 準備・片付け時間は労働時間ですよね?...クリニックにおける「労働時間」の規定と考え方

クリニック開業お役立ちコラム

準備・片付け時間は労働時間ですよね?...クリニックにおける「労働時間」の規定と考え方

採用・教育・労務
社会保険労務士法人WILL 代表社労士・特定社会保険労務士 山本 達矢
準備・片付け時間は労働時間ですよね?...クリニックにおける「労働時間」の規定と考え方

クリニックにおいて「勤務時間の境界」をめぐる疑問・不満は非常に多くあります。医療現場では「患者様対応が最優先」「診療が押すのはやむを得ない」という感覚がある一方、スタッフ側は「時間外の業務を強いられている」という認識になることもあり、トラブルの火種となるのです。ここでは、クリニックにおける労働時間の考え方と、トラブルにならない就業ルールづくりのポイントをお伝えします。

「労働時間」とは何か?...まずは基本を押さえよう

「スタッフが勤務時間前に出勤して掃除や準備をしていますが、これは労働時間ですか?」
「診療が終わってからの片付けや報告作業は残業になりますか?」
「スタッフがタイムカードの時間に不満を感じているようですが、どのように対応したらいいかわかりません」

開業したばかりの先生からは、上記のような質問がよく寄せられます。

まず前提として、「労働時間」とは、法律上、使用者(=クリニック)が労働者に対して業務を命じ、その拘束下に置いている時間を指す、ということを覚えておきましょう。

「始業前の掃除・白衣への着替え」「終業後のカルテ整理・片付け」などについても、業務の一環として行われている場合は労働時間と見なされることになります。

column260119-08-1.jpg

つまり、スタッフが「7時45分に来て掃除をして、8時30分からの診療開始に備える」場合、その掃除が業務命令であるならば、7時45分から労働時間としなければなりません。

勤務実態と「就業規則」のズレがトラブルを呼ぶ

column260119-08-2.jpg

たとえば、就業時間を「8時30分〜17時30分」と定めている場合に、実際には8時15分から掃除や機器の立ち上げを行っていたり、診療が終了する17時30分を過ぎても、片付けのために18時00分まで残っていたりするケースは珍しくありません。

このような状況を放置すると、以下のような問題が生じます。

  • タイムカードと給与支給時間が一致せず、不満が募る
  • 「サービス残業だ」として労基署に申告される
  • 過去の未払い残業代を請求される

こうしたリスクを避けるには、「実態に合った労働時間の管理」と「スタッフとの認識共有」が必要です。

解決の第一歩は「時間の見える化」

最初に行うべきは、実際の業務フローを洗い出し、「何時から何時まで」「どのような作業をしているのか」を見える化することです。

たとえば、

①8時15分〜8時30分:掃除・準備(患者対応前)
②8時30分〜12時30分:午前診療
③12時30分〜13時30分:休憩
④13時30分〜17時30分:午後診療
⑤17時30分〜17時50分:片付け・カルテ整理

というように、「準備」や「片付け」も含めて実働時間を正しく把握します。そのうえで、何時から何時までを「所定労働時間」とするかを明確にしましょう。

規定の見直しと「グレーな働き方」への対応

「診療準備だから仕方ない」「みんな黙ってやっている」といったグレーな働き方は、好意や善意のもとで行われることが多く、すぐに問題化しないこともあります。

しかし、これを当然と位置づけてしまうと、スタッフが交代したときに「話が違う」「聞いていない」などと不満が噴出することもあります。また、勤続年数の長いスタッフほど「私のときはサービスでやっていたのに」という不公平感が生まれる原因にもなります。

したがって、暗黙のルールは明文化し、運用の基準を揃えることが重要です。たとえば、準備作業に対して「1日あたり15分の前倒し勤務をあらかじめ業務命令として組み込み、労働時間とする」といった形にすれば、トラブルの芽を事前に摘むことができます。

就業規則や雇用契約書の見直しが必要な場合も

実態を把握したら、就業規則や雇用契約書に記載されている労働時間や始業・終業時刻が、現場の運用と合致しているかを確認してください。

もし「8時30分始業」としているのに、準備のために8時15分に出勤を義務づけているような場合、それは未払い労働の温床になります。

対応としては、就業時間を「8時15分〜17時45分」と実態に合わせて変更し、賃金を調整するほか、始業前・終業後の業務を明確にし、任意での対応として扱うといった選択肢があります。もし後者を選ぶ場合、「参加は任意」「給与対象外」とする旨を明文化しておく必要があります。曖昧なまま「みんなやってるから」「前任者もそうだったから」と放置すると、後々大きな問題になります。

タイムカード等の管理とスタッフの理解

タイムカードや勤怠システムを使用している場合、スタッフが早めに出勤して打刻するだけで、実際の労働時間よりも長く記録されることがあります。

このような誤差に対応するには、「打刻=労働時間開始」とは必ずしも見なさず、勤務指示の実施時間に基づいて賃金を支払う旨を、労働条件通知書や雇用契約書で明確にしておくことが有効です。

column260119-08-3.jpg

また、スタッフの理解を得ることも重要です。勤務時間の扱いは、感情的な不満に発展しやすい領域です。

一方的な制度変更ではなく、「なぜこうするのか」「何をもって労働時間と判断するのか」を、スタッフミーティング等で丁寧に説明することで、トラブルを防ぐことができます。

労働時間の「あいまいさ」を見過ごさない

クリニックにおける労働時間の管理は、単に「何時から何時まで働くか」という問題にとどまらず、スタッフの納得感や信頼関係、そして法的リスクに直結する重要なポイントです。

とくに開業間もないタイミングでは、「とりあえず始めてしまおう」と業務を先行させがちですが、当初から就業ルールを明確にしておくことが、後のトラブル防止につながります。

労働時間の実態と規定のズレをなくし、準備や片付けといった診療の周辺業務も正しく評価される職場をつくることで、スタッフのモチベーションも大きく向上します。

これらの問題を軽視することなく、ぜひこの機会に勤務時間の見直しを行ってみてください。明確な労務管理は、健全なチーム運営の土台となるのです。

社会保険労務士法人WILL
代表社労士・特定社会保険労務士 山本 達矢

おススメの記事

監修者

株式会社コスモス薬品

本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。

2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。

クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。

弊社が開業支援をさせていただきました

弊社が開業支援をさせていただきます

コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。
その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。
コスモス薬品がトータルで医院開業をサポート

コスモス薬品がトータルで医院開業をサポート

医院・クリニックの開業支援ならコスモス薬品にお任せください。
集患有利なドラッグストア併設の医療物件を多数取り扱っております。
開業、移転、物件に関することなどお気軽にご相談ください。

開業セミナー

開業セミナー

開業するうえでおさえておくべきポイントを開業支援の実例を交えてご紹介するセミナーです。

無料開業相談

無料開業相談

全国で開業に関するご相談を無料で承ります。お悩み・ご質問など、お気軽にご相談ください。

物件検索
物件検索
無料相談
無料相談
開業セミナー
開業セミナー
お問い合わせ
お問い合わせ