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クリニック開業お役立ちコラム
かかりつけ医機能報告制度における医療機関のメリット
2025年4月から開始された「かかりつけ医機能報告制度」。これは、医療機関が地域における「かかりつけ医」としての機能を都道府県に報告し、その情報が公開される制度です。今回は、かかりつけ医機能報告制度で予想されるメリットについて解説していきます。
地域における役割の明確化と認知度向上~専門性と連携による患者誘導~
これまで地域住民は、居住地域にある医療機関の存在や、それぞれの医療機関が対象としている患者・疾患・機能を必ずしも明確に把握できていませんでした。
しかし、「かかりつけ医機能報告制度」が施行されたことにより、各医療機関は自院の強みや特徴を具体的に示すことができるようになりました。

現時点では、この制度によってクリニックの収入に直結するインセンティブはありませんが、積極的に対応することで、紹介・逆紹介の増加による患者増や、地域住民からの医療の可視化など、間接的な要素では医療機関は多岐にわたるメリットを享受できる可能性があります。以下、具体的な事例と方策を見ていきましょう。
かかりつけ医機能報告制度によって強みをアピール
具体的な診療内容や連携体制を報告することで、医療機関は自院の強みを明確にアピールでき、地域住民や他の医療機関からの信頼と認知度を高めることができると予想されます。その結果、専門的な治療を求める患者や、連携を必要とする患者はもちろん、医療機関へのスムーズな誘導につながる可能性があります。
●Aクリニック(内科・生活習慣病専門)
報告書に、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病管理に特化した診療体制、管理栄養士による栄養指導、運動療法指導、合併症早期発見のための定期的な検査体制などを詳細に記載します。これによって「生活習慣病の管理ならAクリニック」という認知度が地域住民に浸透すれば、専門的な治療を求める患者の来院が増加する可能性があります。
●Bこども診療所(小児科・アレルギー科)
夜間・休日診療の電話対応や、月3回程度の休日夜間診療所への出動、アレルギー専門(食物アレルギー負荷試験の実施やアトピー性皮膚炎の生物学的製剤使用)、保育園・幼稚園との連携状況などを報告します。それにより「子どものアレルギーの相談や治療を含め、家族で急な病気のときはBこども診療所」というイメージが広がれば、子育て世代からの信頼を得やすくなります。
●C病院(総合診療科)
他の専門医療機関との連携体制、紹介・逆紹介の実績、在宅医療への対応状況、地域の介護事業所との連携状況などを具体的に報告します。「初期診療から専門医療、在宅医療までトータルにサポートしてくれるC病院」という認識が広がれば、地域包括ケアシステムにおける重要な役割を担う存在として認知されるようになるでしょう。
他の医療機関・介護事業所との連携強化で、効率的な医療提供ネットワークを構築
報告された情報は、地域のほかの医療機関や介護事業所も参照することができます。これにより、互いの機能や得意分野を理解しやすくなり、より効率的で質の高い医療提供ネットワークの構築が促進されます。
想定される他の医療機関とのネットワーク構築例
各医療機関が自院の機能や連携体制を公開することで、地域全体での情報共有が進み、患者の病状やニーズに応じた適切な医療・介護サービスの連携が強化されます。
●D病院(急性期病院)
地域のかかりつけ医からの紹介患者をスムーズに受け入れるための診療情報提供書の共有体制、緊急時の連絡体制、退院後の患者のかかりつけ医への情報提供などを報告します。これにより、地域のかかりつけ医との連携が強化され、患者の急性期治療後のスムーズな地域移行や逆紹介先の確保が促進されます。
●E診療所(在宅医療中心)
訪問診療の対応、提供可能な医療処置、緊急時の対応体制、連携している訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所などを詳細に報告します。これにより、地域の病院や診療所から在宅医療が必要な患者の紹介を受けやすくなり、地域における在宅医療のニーズに応えることができます。
●F介護老人保健施設
協力医療機関との連携内容、入所者の急変時の対応、情報共有のしくみなどを報告します。地域の医療機関は、F介護老人保健施設の医療連携体制を把握することで、入所者の急変時など、状態に応じた適切な医療連携を図ることができます。
上記の例からもわかるように、患者はよりスムーズに適切な医療を受けられるようになり、医療機関間の連携も効率化されます。今後、福祉施設との連携も予測されるため、地域における医療・介護・福祉を完結的に実施する横のつながりが期待できます。
診療報酬上の評価の可能性...将来的なインセンティブへの期待
2025年現在では、かかりつけ医機能報告制度への対応が直接的に診療報酬に反映されることはありません。しかし、かかりつけ医の1つの機能として、初診時に算定可能である「機能強化加算(80点)」や「地域包括診療加算(18点)」「小児かかりつけ診療料1・2」などは存在します。
今後は、報告内容や地域医療への貢献度に応じて、透明性の高い評価から診療報酬上の評価・加算などが検討される可能性があります。
将来的に検討される可能性のある評価項目・加算対象
現時点での直接的なメリットは限定的ですが、制度の浸透や今後の政策動向によっては、積極的に情報公開や地域連携に取り組む医療機関に対して、診療報酬上のインセンティブが付与される可能性があり、経営的なメリットにつながることも期待されます。
●質の高い情報公開へのインセンティブ
積極的に詳細な情報をわかりやすく公開している医療機関に対して、情報提供に関する加算が設けられる可能性があります。
●地域連携への貢献度評価
地域医療連携ネットワークに積極的に参加し、他の医療機関との連携実績が豊富な医療機関に対して、連携強化加算などが設けられるかもしれません。
●在宅医療・介護連携の推進
在宅医療や介護サービスとの連携を積極的に行っている医療機関に対して、在宅医療連携加算などが設けられる可能性があります。
医療の質向上と患者満足度の向上...透明性の確保と信頼性の向上
自院の機能や提供している医療サービスの内容を公開することは、患者にとって医療機関を選択する際の重要な判断材料となります。透明性の高い情報公開は、患者の安心感や信頼感を高め、医療の質向上と患者満足度の向上につながります。それにより、紹介・逆紹介の増加が見込まれ、収益稼働の増加にも寄与することが予測されます。
かかりつけ医報告がもたらす、「患者様からの信頼性の向上」のイメージ

医療機関が積極的に情報を公開することで、患者は自身のニーズに合った医療機関を主体的に選択できるようになり、医療に対する満足度が高まります。また、医療機関側も患者からの信頼を得ることで、より良好な医療提供関係を築くことができます。
●Gクリニック(内科)
初診時の丁寧な問診、検査結果の説明方法、セカンドオピニオンへの対応、患者からの相談への対応などを具体的に報告します。これにより、患者は安心して受診できると感じ、Gクリニックへの信頼感の向上にもつながります。
●H病院(外科)
手術実績、術後のケア体制、合併症への対応、患者相談窓口の設置などを詳細に報告します。手術を検討している患者は、H病院の情報を比較検討することで、より安心して治療に臨むことができるようになります。
●I薬局
服薬指導の内容、他の医療機関との連携状況、在宅患者への薬剤配達の対応などを報告し、24時間対応をします。患者は、I薬局の情報を得ることで、自身のニーズに合った薬局を選択しやすくなり、服薬アドヒアランスやコンプライアンスの向上につながる可能性があります。
医療従事者のモチベーション向上...地域医療への貢献実感とチーム医療の推進
自院の機能が地域住民の健康維持にどのように貢献しているのかが可視化されることで、医療従事者は自身の仕事の意義を改めて認識し、モチベーション向上につながります。また、多職種連携の推進は、チーム医療の充実にも貢献するといえます。
医療従事者のモチベーション向上につながる例
かかりつけ医機能報告制度は、医療機関の透明性を高め、地域医療連携を促進するだけでなく、医療従事者自身のモチベーション向上やチーム医療の推進にも寄与する可能性があります。
●J病院の整形外科医師
報告書作成を通じて、自分が地域医療のなかでの役割を担っているのかを再認識することで、地域医療への貢献意欲の向上が見込めます。
●Kクリニックの看護師
他の医療機関や介護事業所との連携状況を把握することで、地域の医療チーム医療の一員としての意識が高まり、情報共有や連携に積極的に取り組む動機付けになり得ます。

●L訪問看護ステーションの理学療法士
連携している医療機関の情報を得ることで、患者の状態に応じたより適切なリハビリテーション計画を立案できるようになり、専門職としてのスキルアップにつながります。
さまざまなメリットをもたらす可能性を秘める制度
かかりつけ医機能報告制度は、医療機関にとって単なる報告義務ではなく、地域における自院の役割を明確にし、認知度向上、連携強化、診療報酬上の評価への期待、医療の質向上や患者満足度の向上、医療従事者のモチベーション向上など、多岐にわたるメリットをもたらす可能性を秘めています。
積極的にこの制度を活用し、地域医療への貢献をアピールすることで、医療機関は持続的な成長と地域社会からの信頼獲得、持続的な医療展開が予測されます。
株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭
監修者
株式会社コスモス薬品
本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。
2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。
クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。
弊社が開業支援をさせていただきます
コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。

