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クリニック開業お役立ちコラム

なくてはならない診療科目なのに...少子高齢化に伴う「小児科倒産激増」の現実と「集患対策」の重要ポイント

経営・戦略
株式会社TTコンサルティング 医師 武井 智昭
なくてはならない診療科目なのに...少子高齢化に伴う「小児科倒産激増」の現実と「集患対策」の重要ポイント

小児科はなくてはならない診療科目であるにもかかわらず、少子高齢化が進展するいまの日本では、経営状況が厳しく、倒産も増加傾向です。ここでは小児科が置かれている厳しい状況の背景、これから小児科開業をする方への集患対策の重要なポイントを解説しています。

小児科倒産増加の背景

少子高齢化が進展する日本では小児科の倒産が増加傾向にあり、問題は深刻です。筆者が知る限り、2024年に産声を上げたものの、2025年早々に閉院を余儀なくされた小児科が6件あります。しかし一方で、「未来を担う大切な子ども」に対して家族が希望する医療水準は高く、休日・夜間の診療も当然という風潮になっており、小児科医たちは苦しい立場に立たされています。

なぜそのような状況にあるのか、具体的な理由を見ていきましょう。

少子化による患者数の減少

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2024年の出生数は72万人と、筆者自身が20年前に小児科研修を始めたときの約半分になっています。都市部においても出生数の減少に伴い、小児科を受診する患者数も減少しています。これにより、1医療機関を受診する小児患者は減少傾向となっていることも事実です。

医療費抑制政策

国の医療費抑制政策により、診療報酬は抑制される傾向にあります。小児科においては、収益のボリュームゾーンの6歳未満(とくに感染などで体調を崩しやすい・ワクチンなどが多い3歳未満)の患者を獲得することが重要です。

ご存じの通り、小児科クリニックは包括支払い(1名あたりの診療報酬が一定)あるいは出来高払い(検査・処置によって加算があり)を1医療機関ごとで選択をしますが、政府の政策誘導で「小児かかりつけ診療料1・2」と「機能強化加算初診80点」を掲げることで前者への誘導となり、過剰な検査による医業収益を抑制しています。

結果として、前者を選択した場合には「数」を、後者を選択した場合には「専門性・質・単価」を求める必要があり、選択に難渋する傾向があります。

医師の高齢化と後継者不足

現状として、小児科クリニックの開業医は、20~30年前に開業された方の割合が多くなっています。この時代には、まだ多くの子どもがいました。クリニック開業医(小児科医)の高齢化が進み、加齢による診療能力や体力の低下の自覚と、後継者となる若手医師の不足により、診療所の閉院や廃業が増加しています。

新型コロナウイルス感染症の影響

新型コロナウイルス感染症の流行により、子どもの院内感染を警戒して受診を控える家庭が増えました。この結果、小児科の患者数が減少し、経営に大きな打撃を与えました。

また、救急外来においても同様の傾向があります。インフルエンザ流行期でも、以前は小児患者が多数でしたが、ここ数年は成人患者の方が圧倒的に多くなり、救急の受診そのものの考え方(ホームケアの浸透)のひとつの要因に挙げられます。

ワクチンの浸透、アレルギー疾患の変化

2005年ごろから気管支喘息に対して予防治療が普及してきたこと、また2010年から髄膜炎関連ワクチン(肺炎球菌・ヒブワクチン)を皮切りに、ロタウイルスワクチン・水痘ワクチンなどの定期接種化により、重篤な疾患となる子どもが減少するなど、疾病構造が変化しました。結果、病気になる子どもが減少したことも要因となります。

集患対策の重要ポイント

小児科の経営を安定させるためには、集患対策が不可欠です。以下に重要なポイントをまとめました。

地域ニーズに合わせた診療体制の構築

地域住民のニーズを把握し、それに応じた診療体制を構築することが重要です。都心部では、規模の大きな医療法人により365日診療(9時から21時まで)を多数展開するなど、夜間・休日診療の導入はスタートラインのレベルになっています。

時間外対応をどこまで行うかは1名の医師では困難であり、早期から非常勤医師を含めたチーム体制構築が必要です。

予防医療の強化

予防接種は複雑になっていますが、乳幼児健診と併せて、確実な来院動機および収益の大きな柱となります。

院内感染に十分な配慮のもと、午前中・午後・準夜など、どの曜日においてもこうした予防医療を強化することで、定期的な患者獲得につなげることができ、結果として他疾患の継続的な診療にもつながります。

情報発信の強化

ホームページやSNSなどを活用し、診療内容や医療情報を積極的に発信することが重要です。また、地域住民向けの健康講座やイベントを開催することも効果的であり、行政や市民団体の動向にも注目してください。

患者満足度の向上

丁寧な診療や待ち時間の短縮など、患者満足度を高める取り組みを行うことで、リピーターの獲得やクチコミによる新規患者の獲得につなげることができます。

医療連携の強化

地域の医師会・医療機関や保育園、幼稚園などとの連携を強化することで、患者紹介や情報共有をスムーズに行うことができます。可能であれば、自身が基幹病院小児科で週0.5日程度でもよいので非常勤勤務をする、あるいは医師会関連の休日夜間診療へ積極的に参加することも手段のひとつです。地域の4ヵ月・3歳健診や幼稚園・保育園の嘱託医を引き受けることも、認知力増加となります。

オンライン診療の導入

オンライン診療を導入することにより、通院の負担を軽減し、遠隔地の患者様や忙しい保護者の利便性を高めることができます。オンライン診療は、感染症流行時の受診控えによる患者数減少を抑制する効果も期待できます。ただ、小児のオンライン診療の対象として適切な疾患は、皮膚科疾患・花粉症や喘息の発作予防などに限られる傾向があります。

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休日・夜間の診療の実施

共働きの家庭が増える現代において、休日診療のニーズは高まっています。休日診療を実施することで、平日に受診できない患者の利便性を高め、集患効果も期待できます。

診療報酬も平日日中と比べて優遇されており、とくに「院内トリアージ加算(300点)」や「地域連携小児夜間・休日診療料1(450点)」が、休日加算に加えて算定可能となり、6歳未満の1名の患者で、1200から1500点と高くなります。施設基準にもよりますが、平日日中の約2倍の診療報酬が見込まれます。

保護者を含めた内科的診療の対応

近年では、家庭医専門医・プライマリケア医の浸透により、家族をワンストップで診療する医師が増加傾向となり、小児科外来部門への進出が多くなっています。このため、小児科のみの診療では太刀打ちできないため、内科診療(とくに親御さんの年齢)など、幅広い対応を行うことでの利便性・訴求性が強くなり、集患の手段のひとつとなります。

緊急時の対応

子どもの発熱や体調不良は、いつ起こるかわかりません。休日診療を行うことで、緊急時にも対応できる体制を整え、保護者の不安を軽減できます。小児かかりつけ診療料の算定要件として、時間外での電話等での対応をすることが記載されており、普段のかかりつけの医師での安心感を時間外でも提供することもアピールポイントとなります。

他科との連携

開業の敷地に余裕があれば、外科系、とくに外傷に対応できる整形外科との併設あるいは連携が有効です。小児科は内科疾患がメインであるため、整形外科・皮膚科との連携が重要となります。

小児精神保健分野

近年では不登校・起立性調節障害・発達障害などの精神神経系の疾患患者が増加しており、これらの疾患のニーズに応じる体制も必要となります。とくに中高生の不登校では、学校面での課題(試験や人間関係のプレッシャー)による身体症状が多いため、時間はかかりますがニーズがかなり高いです。

こちらは、昨今の診療報酬改定により「小児慢性疾患カウンセリング料」の診療報酬の増加および算定許可が2年から4年間に延長になった背景からも、ニーズは高いといえます。

その他の領域

このほかにも、新生児医療や小児集中治療の技術向上により、自宅で医療デバイス(胃ろう・気管切開・人工呼吸など)をしながら生活をする医療的ケア児も増加傾向で、基幹病院のフォローもパンク寸前になっています。医療的ケア児は2万人を超え、訪問診療や緊急時対応などもニーズが高く、診療報酬でも優遇されています。

アレルギー分野は参入障壁が低下傾向であるため、アトピー性皮膚炎・気管支喘息などの在宅自己注射(生物学的製剤)や、食物負荷試験、N吸入など、一歩踏み込んだ検査・治療をすることで差別化となります。

まとめ

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小児科の倒産は、地域医療の崩壊につながりかねない深刻な問題です。医療機関は、集患対策を強化し、経営の安定化を図る必要があります。その中でも休日診療の導入や児童精神科領域、内科を含めた診療範囲の増加は、倒産防止の有効な手段のひとつとなります。

また、大規模な医療法人がさらに展開するクリニック群の診療圏を避けるなど、他医療法人の動向にも注目は必要です。

株式会社TTコンサルティング
医師 武井 智昭

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監修者

株式会社コスモス薬品

本社を福岡県福岡市に置く東証プライム市場上場。
「ドラッグストアコスモス」の屋号で、九州を中心にドラッグストアチェーンを展開。

2024年5月期決算売上高は9,649億8,900万円。
M&Aを一切行わず、33年連続増収。
日本版顧客満足度指数の「ドラッグストア」において14年連続第1位を獲得。

クリニックの開業サポートにも注力し、2024年8月現在、開業物件店舗数は約350店舗。 集患に有利なドラッグストア併設型物件を全国各地で多数取り扱っている。

弊社が開業支援をさせていただきました

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コスモス薬品が運営するドラッグストアは、日常生活に必要なものが何でも揃う生活の拠点となるお店。
その地域で便利に安心して暮すために欠かせない、電気や水道のような社会インフラであるお店。
そこに専門性が高いクリニックが加われば、さらに「豊かな生活」を提供することができます。
コスモス薬品は、地域医療の担い手である開業医を全力でサポートしてまいります。
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集患有利なドラッグストア併設の医療物件を多数取り扱っております。
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