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クリニック開業お役立ちコラム
医師の副業はできる?認められる働き方や注意点を解説
収入の選択肢を広げたり、将来のキャリアに備えたりするために、副業を検討する先生方もいるかもしれません。医師の副業は一律に禁止されているわけではありませんが、勤務先の就業規則や雇用契約によっては、事前の届出や許可が必要です。また、研修医や公務員の身分を持つ医師には、個別の制限があります。
医師の副業には、非常勤勤務や健診、当直などの診療業務に加え、医療記事の執筆・監修、講演、教育活動などがあります。ただし、副業を始める際は、本業と合わせた労働時間や税金、守秘義務、利益相反などにも注意しなければなりません。
本記事では、医師が副業できる条件や主な仕事の種類、始める前に確認すべきポイントを解説します。副業をキャリア形成や将来の開業準備に活かす考え方もあわせて紹介します。
医師は副業できる?
医師が副業できるかどうかは、医師という職業だけで決まるものではありません。勤務先の種類や雇用形態、本人の立場によって、適用されるルールや必要な手続きが異なります。
医師の副業は法律で一律に禁止されているわけではない
一般の勤務医について、医師法に副業そのものを一律に禁止する規定が設けられているわけではありません。民間の医療機関に勤務する医師であれば、スポット勤務や定期非常勤などの副業が認められる場合があります。
ただし、自由に始められるとは限りません。勤務先の就業規則や雇用契約、兼業規定を確認し、届出や許可が必要な場合は、勤務を引き受ける前に手続きを行う必要があります。労務提供に支障が生じる場合や、秘密情報の漏えい、勤務先の信用低下、競業による不利益のおそれがある場合などには、副業を制限される可能性もあります。
副業では本業と合わせた勤務負担を確認し、患者様の安全や健康に支障のない範囲で行うことが大切です。
研修医や公務員医師は副業に制限がある
臨床研修中の研修医は、一般の勤務医と扱いが異なります。厚生労働省の「医師臨床研修に関するQ&A(研修医編)」では、研修医には臨床研修に専念することが求められるため、研修期間中に診療のアルバイトをすることはできないと示されています。診療以外の活動についても、研修への影響や研修先独自の規定を確認し、事前に相談する必要があります。
また、国や地方公共団体の機関などに勤務し、公務員の身分を持つ医師は、兼業に関する法令上の制限を受けます。国家公務員には国家公務員法第103条・第104条、地方公務員には地方公務員法第38条が適用され、兼業の内容によっては事前の承認や許可が必要です。
参考:
内閣官房内閣人事局「国家公務員の兼業について」
e-Gov法令検索「地方公務員法」
公立病院勤務でも公務員に該当しない場合があるため、運営主体や雇用形態、勤務先の兼業規定を確認しましょう。
医師に多い副業の種類

医師の副業は、診療を行う仕事だけではありません。医師資格を直接活かす働き方、医療知識を活かす仕事、医療以外の事業や投資などがあります。それぞれ必要な時間や責任、収入の安定性が異なるため、本業への影響も踏まえて選ぶことが大切です。
医師資格を活かせる副業
医師資格を活かせる副業には、単発のスポット勤務や定期非常勤のほか、健診、当直、外来診療、オンライン診療などがあります。これまでの臨床経験を直接活かしやすく、比較的収入につながりやすい点が特徴です。
なお、副業先でも診療上の責任を負います。本業と副業を合わせた労働時間や移動時間、当直後の休息を確認し、患者様の安全に支障のない範囲で行いましょう。
オンライン診療は場所の制約を抑えやすい働き方ですが、単に通信機器を使えば実施できるわけではありません。オンライン診療を行う医師には、厚生労働省が定める研修の受講が求められます。また、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に沿って、患者様確認や診療体制、安全性、情報管理などに配慮する必要があります。
医療知識を活かした副業
臨床現場以外では、医療記事の執筆・監修、医療系セミナーの講師、医療関連企業へのコンサルティング、学生や医療従事者を対象とした教育活動などがあります。案件によっては時間や場所を調整しやすく、診療との両立を図りやすいことが特徴です。
ただし、情報発信では医学的根拠に基づいた内容を心がけ、患者様を特定できる情報や勤務先の内部情報を使用しないことが重要です。医療関連企業と関わる場合は、利益相反の有無を確認し、必要に応じて関係性を明示します。所属先の名称や肩書を使用できるかについても、事前に確認しましょう。
医療以外の副業・投資を行う場合の注意点
不動産投資や株式投資、事業運営などを検討する医師もいます。これらは勤務による副業とは性質が異なり、就業規則上の扱いや税務上の所得区分も一様ではありません。
投資には、空室や金利上昇、価格変動、元本割れなどのリスクがあり、利益は保証されません。事業運営に関わる場合は勤務先への届出・許可を、所得が生じた場合は所得区分や確定申告の要否を確認しましょう。判断に迷う場合は、税理士などの専門家への相談が必要です。
医師が副業を始める前に確認すべきこと
医師が副業を始める際は、収入や仕事内容だけでなく、勤務先の規定、労働時間、税務、守秘義務などを確認する必要があります。確認が不十分なまま始めると、本業への影響や勤務先とのトラブルにつながる可能性があります。

就業規則・兼業規定・勤務先への申請を確認する
副業先を探す前に、現在の勤務先の就業規則、雇用契約、兼業規定を確認しましょう。副業が認められていても、事前の届出や許可が必要な場合があります。
申請時には、副業先の名称、業務内容、勤務日、勤務時間、報酬、契約期間などの提出を求められることがあります。許可を得た後に勤務条件が変わった場合は、再申請が必要かどうかも確認が必要です。
また、大学病院などでは、医局が外勤先を調整していることがあります。個人で副業先を選べるとは限らないため、就業規則だけでなく、医局や診療科の方針も確認しましょう。
労働時間の通算と医師の働き方改革に注意する
本業と副業の双方で雇用される場合、労働時間は原則として通算されるため、副業先の勤務時間を本業の勤務先へ申告します。業務委託による執筆・監修などは通算対象外となることがありますが、実際の作業時間や休息時間は自分でも管理しましょう。
参考:厚生労働省「副業・兼業における労働時間の通算について」
医師には時間外・休日労働の上限規制が適用されており、副業・兼業先の労働時間も含めた管理が求められます。副業先で当直を行う場合は、宿日直許可の有無も労働時間の扱いに関係します。
収入を増やせても、連続勤務や睡眠不足によって判断力が低下すれば、本業や患者様の安全に影響しかねません。本業と副業を合わせた勤務時間、移動時間、勤務間インターバル、当直後の休息などを確認し、無理なく継続できる働き方かを判断しましょう。
税金・確定申告・所得区分を確認する
副業による収入は、契約形態や業務の実態によって税務上の扱いが異なります。医療機関に雇用されて行う非常勤勤務や当直の報酬は、一般的に給与所得として扱われます。一方、業務委託による原稿料、講演料、監修料などは、雑所得や事業所得に該当する場合があります。
給与所得者でも、副業による収入が一定の条件に該当すると確定申告が必要です。確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があるため、居住する自治体の案内も確認しましょう。
また、複数の勤務先で社会保険の加入要件を満たす場合には、主たる事業所を選ぶための手続きが必要になることがあります。経費にできる範囲や所得区分、住民税、社会保険の扱いに不安がある場合は、税理士や社会保険労務士などへ相談しましょう。
守秘義務・医療広告規制・信用管理にも配慮する
医療記事の執筆・監修、講演、SNSでの情報発信などでは、患者様情報や勤務先の内部情報を外部へ持ち出さないことが重要です。患者様の氏名を伏せていても、年齢や症状、治療経過などの組み合わせから個人を特定できる可能性があります。症例を取り上げる場合は、所属先の規定や必要な手続きを確認しましょう。
医療機関や診療内容への誘導を目的とするウェブサイトやSNS投稿などは、内容によって医療広告規制の対象になる場合があります。虚偽・誇大な表現や、他の医療機関より優れていると誤認させる表現、効果を保証するような表現は避けなければなりません。記事やSNS投稿がすべて医療広告に該当するわけではありませんが、特定の医療機関や治療への誘引性がある場合は注意が必要です。
医療関連企業から依頼を受けて執筆や講演を行う場合は、利益相反についても確認します。報酬を受け取っている事実や企業との関係性を、必要に応じて明示することが大切です。
副業を選ぶ際は、収入だけでなく、患者様や勤務先からの信頼を損なう内容ではないかを判断しましょう。医師としての専門性や信用を守ることが、長期的に副業を続けるための前提となります。
副業をキャリア形成や開業準備に活かす考え方
副業は収入を増やす手段であるだけでなく、本業では得にくい経験を積み、将来の選択肢を広げる機会にもなります。副業を選ぶ際は、報酬だけでなく、自分が身につけたい知識や経験、実現したい働き方とのつながりを考えることが大切です。
副業は収入だけでなく経験や人脈づくりにもつながる
医療記事の執筆・監修、講演、教育活動、医療関連企業へのコンサルティングなどは、医師として培った知識や経験を診療以外の場で活かせる副業です。情報をわかりやすく伝える力や、異なる職種と協働する力を身につける機会にもなります。
また、普段とは異なる医療機関で外勤を行えば、別の診療体制や患者様層、地域の医療ニーズに触れられます。将来の転職や開業を考えている医師にとっては、自分に適した診療環境や働き方を見直す材料になるでしょう。
執筆や講演などの実績を積むことで、専門分野を外部に示しやすくなり、医療関係者とのつながりが生まれる可能性もあります。ただし、実績を公表する際は、勤務先の規定や守秘義務、利益相反に配慮し、経歴や専門性を誇張しないことが重要です。
収入の選択肢を広げたい場合は開業も選択肢になる
自分の裁量で診療方針や勤務時間を決め、収入の選択肢を広げたい場合は、将来的な開業も選択肢になります。ただし、開業は副業とは異なり、医師自身が経営責任を負う働き方です。開業すれば必ず収入が増えるわけではありません。
開業後の売上からは、家賃、人件費、医療機器費、広告宣伝費、水道光熱費、融資返済などを支払う必要があります。患者数が想定を下回る場合も考慮し、初期投資や固定費、スタッフ採用、資金繰りを具体的に試算しておくことが大切です。
収入の安定には、物件選びも関係します。診療圏の人口や年齢構成、地域の受診ニーズ、競合する医療機関を調べるとともに、生活動線、視認性、交通アクセス、駐車場、賃料などを確認します。診療圏調査による患者数はあくまで推計値であるため、現地調査を行い、周辺環境や地域連携の可能性も含めて判断しましょう。
ドラッグストア併設・近接立地は、日常の買い物で訪れる地域住民にクリニックを認知してもらいやすく、受診後の薬局利用や買い物を同じ生活動線上で行いやすい点が特徴です。ただし、併設・近接しているだけで集患が保証される訳ではありません。地域の受診ニーズや予定する診療内容、競合状況などとの相性がよければ、開業物件として有力な選択肢の一つといえます。
医師の副業に関するよくある質問
医師は副業できますか?
一般の勤務医は、副業ができる場合があります。医師法などで副業そのものが一律に禁止されているわけではありませんが、勤務先の就業規則や雇用契約、兼業規定に従う必要があります。
届出制や許可制が設けられている場合は、副業先と契約する前に必要な手続きを行いましょう。副業が本業に支障を及ぼす場合や、情報漏えい、信用低下、競業のおそれがある場合などには、制限される可能性があります。
研修医は副業できますか?
臨床研修中の研修医は、診療のアルバイトをすることができません。厚生労働省は、研修医には臨床研修に専念することが求められるため、研修期間中の診療アルバイトは認められないと示しています。
診療以外の執筆や講演などを検討する場合も、研修への影響や研修先独自の規定を確認し、事前に担当者へ相談しましょう。
公立病院の医師は副業できますか?
公立病院に勤務しているだけで、一律に副業できないとは限りません。病院の運営主体や雇用形態によって、公務員に該当するかどうかが異なるためです。
公務員の身分を持つ医師には兼業制限があり、国家公務員の場合は国家公務員法第103条・第104条、地方公務員の場合は地方公務員法第38条に基づく承認や許可が必要になることがあります。制度上認められる内容でも、許可を得る前に始めることはできません。
参考:
人事院「一般職の国家公務員の兼業について(Q&A集)」
e-Gov法令検索「地方公務員法」
公務員に該当しない場合も勤務先独自の規定が適用されるため、人事・労務担当者や自治体の担当部署に確認しましょう。
医師が副業を始める前に確認すべきことは何ですか?
まずは、次の事項を確認しましょう。
- 就業規則や雇用契約で副業が認められているか
- 届出や許可などの事前手続きが必要か
- 本業と副業を合わせた勤務時間や休息を確保できるか
- 副業収入の所得区分や確定申告、住民税の扱い
- 守秘義務、利益相反、医療広告規制に抵触しないか
- 本業や患者様の安全、勤務先の信用に影響しないか
副業の契約形態によって、労働時間や税金、社会保険の扱いが異なります。判断に迷う場合は、勤務先の担当部署に加え、税理士や社会保険労務士などの専門家へ相談しましょう。
医師の副業はルールと将来のキャリアを踏まえて選ぼう
医師の副業は一律に禁止されているわけではありませんが、勤務先や本人の立場によって可否や必要な手続きが異なります。副業を始める前に、就業規則や雇用契約、兼業規定を確認し、必要な届出や許可を済ませましょう。研修医や公務員の身分を持つ医師は、一般の勤務医とは異なる制限を受けるため、特に注意が必要です。
副業の種類を問わず、本業と合わせた勤務負担や患者様の安全、税金、守秘義務、利益相反などを確認することも欠かせません。報酬だけで選ばず、医師としての信用を守りながら無理なく継続できるかを判断することが大切です。
副業は収入を補うだけでなく、専門性を高め、新たな経験や人脈を得る機会にもなります。将来開業を検討する場合は、副業で得た経験を活かしつつ、初期投資や固定費、資金繰り、物件選びまで具体的に計画しましょう。地域住民に認知されやすく、受診後の薬局利用や買い物にも便利なドラッグストア併設・近接立地は、条件が合えば開業物件として検討しやすい選択肢です。
開業・経営の成功には、立地や集患設計、地域連携など、診療以外の要素も大きく影響します。
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医療経営コンサルタント
土光 宜行
医療業界にて経営支援およびマーケティング業務に従事。
開業支援、医療制度、集患戦略などを専門領域とし、現場経験とデータに基づいた実践的な情報発信を行っている。
医療機関が将来を見据えた意思決定を行えるよう、制度動向や経営課題をわかりやすく解説。
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