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クリニック開業お役立ちコラム

「開業医はやめとけ」と言われる理由とは? 失敗事例から学ぶ開業戦略

経営・戦略
医療経営コンサルタント 土光 宜行
「開業医はやめとけ」と言われる理由とは? 失敗事例から学ぶ開業戦略

「開業医はやめとけ」という言葉を目にして、不安を感じたことはないでしょうか。実際、クリニック開業には高額な初期投資や収益の不確実性、診療以外の業務負担といったリスクが伴います。

一方で、開業は収入の上限を広げ、自分の理想とする医療を実現できる選択肢でもあります。そのため、「開業すべきかどうか」で迷う医師は少なくありません。

重要なのは、「開業は危険かどうか」ではなく、どのような条件で開業するかです。実際に失敗するクリニックには共通する設計ミスがあり、それらを回避できるかどうかが、その後の経営を大きく左右します。

本記事では、「開業医はやめとけ」と言われる理由を整理したうえで、失敗事例から見える共通点、そしてリスクを抑えて安定した経営を実現するための開業戦略について解説します。

開業医は「やめとけ」と言われる理由

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「開業医はやめとけ」という言葉は、単なるネガティブな意見ではなく、開業というビジネスモデルが持つ構造的なリスクに対する警戒心を示したものです。開業医は医療従事者であると同時に経営者でもあり、診療だけでなく資金管理や人材マネジメントといった経営課題に向き合う必要があります。

特に大きな負担となるのが、高額な初期投資・キャッシュフローの不安定さ・人的マネジメントの難しさの3点です。これらは開業直後に全て後から直面する課題であり、事前の戦略設計が不十分な場合、短期間で経営が不安定化する可能性があります。

ここでは、「開業医はやめとけ」と言われる具体的な理由を整理します。

初期投資が大きく、回収リスクがある

クリニック開業には、多額の初期投資が必要です。一般的にはテナント開業でも5,000万円~1億円程度の資金が必要とされ、内装工事や医療機器の導入に加え、開業後すぐに発生する人件費や賃料などの固定費も含めて設計する必要があります。

このように、開業は固定費の比率が高いビジネスモデルであるため、患者数が想定を下回った場合には、売上が伸びずに損益分岐点を割り込むリスクがあります。さらに、投資回収には数年単位の時間がかかるのが一般的であり、短期間での黒字化を前提とした計画は現実的ではありません。

そのため、開業の成否は初期段階での設計精度に大きく左右されます。特に、立地選定や診療圏分析の精度は、将来的な患者数と収益に直結する重要な要素です。感覚的な判断ではなく、データに基づいた慎重な意思決定が求められます。

収入が安定するまで時間がかかる

開業後すぐに安定した収入が得られるとは限りません。保険診療の場合、診療報酬はレセプト請求から入金までに約2か月のタイムラグがあるため、売上が立っていても実際の資金が手元に入るまでには時間がかかります。

また、開業初期は認知が十分に広がっていないため、患者数が安定せず、売上の見通しが立てにくい状況が続きます。その結果、帳簿上は黒字であっても、手元資金が不足する「黒字倒産」に近い状態に陥るケースもあります。

こうしたリスクに対応するためには、運転資金として最低でも3~6か月分の固定費を確保することが重要です。さらに、開業初期は一定期間の赤字を前提とした資金計画を立て、キャッシュフローを重視した経営設計を行う必要があります。

診療以外の業務負担が大きい

開業医は、診療に専念できる立場ではありません。実際には、採用や教育、労務管理といった人材マネジメントに加え、シフト作成や給与計算、トラブル対応など、多岐にわたる運営業務が発生します。

さらに、患者さまからのクレーム対応やスタッフ間の人間関係の調整など、最終的な責任は全て院長が負うことになります。加えて、集患施策の検討や経営判断も並行して行う必要があり、「診療」と「経営」の両方を担うことによる負荷は決して小さくありません。

このように、開業医は医療の専門家であると同時に経営者としての役割も求められます。診療スキルだけでなく、組織運営や意思決定の能力が求められる点が、勤務医との大きな違いといえるでしょう。

失敗するクリニックの共通点

クリニック経営の失敗は偶然ではなく、開業前の設計ミスが積み重なった結果として生じます。特に重要なのは、立地・集患・資金・人材の4領域であり、初期段階の判断がその後の経営を大きく左右します。

以下のとおり、失敗につながりやすい共通点を整理します。

※ 横にスクロールできます

項目 よくある失敗 なぜ問題になるのか 経営への影響
立地 駅近・人通りなど感覚で決定 診療圏分析不足(人口構成・年齢層・生活動線・競合の未考慮) 集患不振・差別化できず選ばれない
集患 開業後に考える/設計なし 認知不足・ターゲット不明確・導線未整備 初期患者数が伸びず、その後の経営も停滞
資金 設備投資偏重/運転資金不足 固定費構造・入金タイムラグを考慮していない 資金繰り悪化・黒字でも資金不足に陥る
人材 採用・教育の基準が曖昧 ミスマッチ・教育不足・組織運営不全 離職・サービス品質低下・運営負荷増大

このように、失敗するクリニックには明確な共通点があります。重要なのは、それぞれを個別に対処するのではなく、開業前に全体を設計することです。

開業で後悔しやすいポイント

開業後に後悔を感じる主な要因は、「開業前の想定」と「実際の経営」のギャップにあります。特に、時間・ストレス・経営結果の3点に集中しており、これらは経営者としての責任を過小評価した場合に顕在化しやすい傾向があります。

以下のとおり、後悔につながりやすいポイントを整理します。

※ 横にスクロールできます

項目 開業前のイメージ 実際に起こること 後悔につながる理由
時間
(自由度)
自由な働き方ができる 診療以外の業務(採用・労務・経営判断)が増加し、拘束時間が長くなる 自由度と責任がトレードオフである点を見落としやすい
ストレス
(経営負担)
高収入・裁量の大きさ 収益の不確実性、借入返済、資金繰り、人材問題への対応が発生 売上が患者数に依存し、精神的負担が想定以上に大きい
経営結果
(ギャップ)
計画通りに経営できる 患者数の未達、立地判断のズレ、集患不足、スタッフ問題が発生 初期設計のズレが修正困難で長期的に影響する

このように、開業後の後悔は個別の問題ではなく、事前設計と現実のギャップから生じる課題といえます。重要なのは、理想だけでなく現実の負担を前提に開業を設計することです。

それでも開業が選ばれる理由

ここまで見てきたように、開業には一定のリスクが伴います。しかし、それでも多くの医師が開業という選択をするのは、勤務医にはない明確なメリットがあるためです。実際には、リスクとリターンを冷静に比較した上で、自らのキャリアや価値観に照らして開業を選択しています。

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開業の主な動機は、収入の上限の拡大・診療の裁量・地域医療への貢献といった3点に集約されます。これらは経営者としての責任と引き換えに得られるものであり、適切な設計と運営によって実現可能な価値といえます。

収入の上限が広がる

開業医の収入は、基本的にクリニックの売上に連動する構造となっており、勤務医のように給与が固定されているわけではありません。そのため、診療体制の最適化や業務効率の向上、患者数の増加などによって、収益を拡大していく余地があります。

例えば、診療効率を高めることで時間あたりの診療件数を増やしたり、患者さまのニーズに応じた診療体制を整えたりすることで、利益の最大化を図ることが可能です。このような取り組みが成果につながれば、勤務医よりも高い年収は十分に期待できます。

一方で、収入は患者数や経営状況に左右されるため、不安定になりやすい側面もあります。つまり、収入の上限が広がるというメリットは、同時にリスクと表裏一体であることを理解しておく必要があります。

自分の理想の医療を実現できる

開業の大きな魅力の一つが、診療方針や設備、診療内容を自ら決定できる点です。勤務医の場合、病院の方針や制約の中で診療を行う必要がありますが、開業医であれば、自身の専門性や考え方を反映した医療を提供することができます。

例えば、特定の分野に強みを持つ診療体制を構築したり、患者さまとのコミュニケーションを重視した運営を行ったりと、自分の理想とする医療のかたちを実現しやすくなります。また、診療時間や休診日の設定など、働き方についても一定の裁量を持つことができます。

こうした自由度は、責任の大きさと引き換えではありますが、勤務医では実現しにくい医療を形にできる点は、開業を選ぶ大きな理由の一つです。

地域医療への貢献

開業医は、地域に密着した医療を提供する存在として重要な役割を担います。患者さま一人ひとりと継続的な関係を築きながら、日常的な健康管理や早期発見・早期治療を支えることができます。

特に内科や小児科、整形外科などの診療科では、地域住民の生活に密接に関わる医療提供が求められます。かかりつけ医として、患者さまの健康を長期的に支える役割は、開業医ならではのやりがいといえるでしょう。

また、地域のニーズに応じた診療体制を柔軟に構築できる点も特徴です。高齢化が進む地域では慢性疾患の管理を重視したり、子育て世帯が多い地域では予防医療や小児医療を充実させたりと、地域特性に合わせた医療の提供が可能になります。

失敗しないための開業戦略

クリニック開業の成否は、個別の施策ではなく全体設計の精度によって決まります。特に、「立地・集患・資金・体制」を一体で設計することが重要であり、準備段階での判断がその後の安定経営を左右します。

以下のとおり、失敗を防ぐための主要な戦略を整理します。

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項目 戦略のポイント なぜ重要か 設計のポイント
立地 診療圏分析に基づく選定 患者数と収益に直結する 人口構成・年齢層・生活動線・競合を分析し、中長期視点で評価
集患 開業前からの導線設計 初期患者数の立ち上がりを左右する ターゲット設定→コンセプト設計→認知→来院の流れを構築
資金 初期費用と運転資金の分離 キャッシュフロー安定のため 固定費の3~6か月分を確保し、入金タイムラグを考慮
体制 診療と経営の分業 過重負担による経営不安定を防ぐ 業務の仕組み化・役割分担・外部連携を活用

このように、開業成功の鍵は個別の対策ではなく、全体を一体として設計することにあります。準備段階での精度を高めることが、長期的な安定経営につながります。

開業リスクを下げるために

開業リスクは避けられないものではなく、立地や仕組みの選択によって大きくコントロールすることが可能です。特に重要なのは、開業初期に不確実性をどれだけ減らせるかという点であり、そのためには「集患・導線・連携」をあらかじめ確保できる環境を選ぶことが重要になります。

開業直後は認知不足や患者数のばらつきにより、経営が不安定になりやすいフェーズです。この初期の立ち上がりをいかに安定させるかが、その後の経営に大きく影響します。ここでは、開業リスクを下げるための具体的な考え方を整理します。

ドラッグストア併設・近接立地のメリット

ドラッグストア併設・近接立地は、開業初期のリスクを抑える上で有効な選択肢の一つです。最大の特徴は、すでに存在している来店客の流れを生かし、自然な認知を獲得できる点にあります。

クリニック単独の立地では、開業後に広告などを通じて認知を広げていく必要がありますが、生活導線上に位置するドラッグストア周辺では、日常的に多くの人が訪れるため、意識せずともクリニックの存在に触れる機会が生まれます。これにより、「知っているから安心」という心理が働き、来院のハードルを下げる効果が期待できます。

さらに、日常的な買い物の中で繰り返し接触することで、来院の想起が高まりやすくなります。例えば、「体調が気になる」「どこに行こうか」と考えた際に、生活動線上で見慣れたクリニックが選択肢に入りやすくなります。

このように、認知から来院までの流れが自然に形成されるため、開業初期から一定の集患が見込める点が大きなメリットです。

医療連携による患者導線の確保

開業リスクを下げる上では、単に来院してもらうだけでなく、その後の動線まで設計することが重要です。薬局との連携は、その代表的な例といえます。

診療後にスムーズに薬を受け取れる環境は、患者さまにとって大きな利便性となります。こうした利便性の高さは、患者満足度の向上につながり、結果として継続的な来院にも影響を与えます。

また、医療連携が確立されていることで、患者さまの動線が分断されず、一連の流れで医療を提供できる点も重要です。これにより、単発の来院ではなく、長期的な関係構築につながりやすくなります。

このように、医療連携は単なる機能的な利便性にとどまらず、安定した患者導線を構築するための重要な要素となります。

広告宣伝による立ち上がりの安定

開業初期においては、認知の獲得と来院のきっかけづくりが不可欠です。広告宣伝を適切に活用することで、短期間での認知拡大と来院機会の創出が可能になります。

特に、既存の集客基盤を活用できる場合には、ゼロから認知を築く必要がないため、効率的に患者さまへアプローチすることができます。継続的な露出を確保することで、「見たことがある」「知っている」という状態を作り出し、来院につなげることが重要です。

また、広告宣伝は単発ではなく、一定期間継続することが効果的です。継続的に情報に触れることで信頼感が醸成され、来院の意思決定を後押しします。

こうした取り組みにより、開業初期における集患のばらつきを抑え、経営の立ち上がりを安定させることができます。

開業医は本当にやめるべき?よくある質問

「開業医はやめとけ」といった情報に触れると、不安を感じるのは自然なことです。ただし重要なのは、断片的な情報ではなく、自身の状況に照らして判断することです。

ここでは、よくある疑問に対して意思決定の観点から整理します。

Q1 開業医は本当に儲からないのですか?

結論として、「儲からない」というわけではありませんが、収益は経営の設計と実行力に大きく依存します。

開業医は売上に連動した収入構造であるため、診療体制や立地、集患設計が適切であれば、勤務医より高い年収は十分に期待できます。一方で、開業初期は患者数が安定せず、収益も不安定になりやすいのが実情です。

判断のポイント

  • 短期的な安定収入を重視する → 勤務医が適している
  • 中長期で収益拡大を目指す → 開業が選択肢になる

Q2 開業して後悔する人の特徴は?

後悔するケースには共通点があります。多くは、開業前の設計不足に起因しています。

具体的には、診療圏や立地の分析が不十分であったり、集患の仕組みが整っていなかったり、資金計画が甘かったりするケースです。また、スタッフマネジメントに課題を抱え、組織運営がうまくいかないことも大きな要因となります。

判断のポイント

  • データに基づく意思決定が苦手 → リスクが高い
  • 経営やマネジメントに向き合う意欲がある → 適性あり

Q3 開業資金はいくら必要ですか?

一般的には、テナント開業で5,000万円~1億円程度が目安とされています。ただし、診療科や導入する医療機器、内装の仕様によって大きく変動します。

また、初期費用だけでなく、運転資金も含めて設計する必要があります。特に開業初期は売上が安定しないため、固定費の3~6か月分の運転資金を確保しておくことが重要です。

判断のポイント

  • 自己資金+借入で無理のない返済計画が立てられるか
  • 初期投資と運転資金を分けて設計できているか

Q4 勤務医と開業医はどちらが良いですか?

どちらが良いかは一概にはいえず、安定性と自由度のトレードオフの関係にあります。

勤務医は収入が安定しており、経営リスクを負わずに診療に専念できる点がメリットです。一方で、収入や働き方の自由度には一定の制約があります。

開業医は収入の上限がなく、診療方針や働き方の裁量も大きい反面、経営リスクや責任も伴います。

判断のポイント

  • 安定志向・リスク回避 → 勤務医
  • 裁量・成長志向 → 開業

Q5 開業で失敗しないためにもっとも重要なことは?

もっとも重要なのは、開業を部分最適ではなく全体で設計することです。

具体的には、立地選定(診療圏・競合分析)、集患設計(認知から来院までの導線)、資金計画(初期費用と運転資金)、体制づくり(診療と経営の分業)を一体で考える必要があります。

特に立地は、その後の集患や収益に直結するため、もっとも優先度の高い要素といえます。

判断のポイント

  • 立地・集患・資金・体制を分断せず設計できているか
  • 初期フェーズの不確実性をどれだけ減らせているか

開業で失敗しないための設計ポイント

「開業医はやめとけ」と言われる背景には、高額な初期投資やキャッシュフローの不安定さ、診療以外の業務負担といった、構造的な経営リスクが存在します。実際に失敗するクリニックには、立地・集患・資金・人材といった重要な要素を十分に設計できていないという共通点があります。

一方で、開業は収入の上限を広げ、自分の理想とする医療を実現し、地域医療に貢献できる選択肢でもあります。つまり、「開業すべきかどうか」ではなく、どのような条件で開業するかが成功を分けるポイントといえます。

特に重要なのは、立地選定・集患導線・資金計画・運営体制を個別ではなく一体で設計することです。これらが分断されたままでは、開業初期の不確実性をコントロールできず、経営の不安定化につながります。

その中でも、立地はもっとも影響の大きい要素です。生活動線上での認知獲得や来院のしやすさ、医療連携による患者導線の確保といった観点から、ドラッグストア併設・近接立地は、開業初期の集患リスクを抑えやすい現実的な選択肢の一つといえます。

最終的には、「リスクがあるからやめる」のではなく、リスクを前提に設計できるかどうかが判断基準となります。開業を検討する際は、自身の志向やリスク許容度を踏まえた上で、再現性のある戦略をもとに意思決定することが重要です。

開業・経営の成功には、立地や集患設計、地域連携など、診療以外の要素も大きく影響します。

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医療経営コンサルタント

土光 宜行

医療業界にて経営支援およびマーケティング業務に従事。開業支援、医療制度、集患戦略などを専門領域とし、現場経験とデータに基づいた実践的な情報発信を行っている。医療機関が将来を見据えた意思決定を行えるよう、制度動向や経営課題をわかりやすく解説。

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