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開業医は儲からない?収益が伸び悩む理由と黒字経営に必要な準備を解説

経営・戦略
医療経営コンサルタント 土光 宜行
開業医は儲からない?収益が伸び悩む理由と黒字経営に必要な準備を解説

開業医は高収入というイメージがある一方で、「開業しても本当に儲かるのか」「勤務医のままの方が安定しているのではないか」と不安を感じる先生もいるかもしれません。

クリニック経営では、診療による売上だけでなく、初期投資や借入返済、人件費、家賃、広告宣伝費など、さまざまな支出を踏まえて収益を考える必要があります。そのため、年収や売上の大きさだけでは、開業後にどれだけ利益が残るかを判断できません。

しかし、開業医が一律に儲からないわけではありません。開業前に資金計画や診療圏調査、立地選び、集患設計を具体化しておくことで、収益は伸びやすくなります。

本記事では、開業医が儲からないと言われる理由や、収益が伸び悩むクリニックに共通する特徴、黒字経営を目指すために必要な準備について解説します。

開業医は儲からないと言われるのは本当か

開業医の収益性は、診療科、立地、患者数、固定費、借入状況によって大きく変わります。高収入を得るケースがある一方で、支出や返済負担が大きければ、売上があっても手元資金は残りにくくなります。

そのため、開業医が儲かるかどうかを判断する際は、年収や売上の大きさだけでなく、経費や返済を差し引いた後に利益が残るかを見ることが重要です。

開業医が一律に儲からないわけではない

開業医のなかには、勤務医時代よりも高い収入を得ているケースがあります。そのため、「開業医は儲からない」と一括りに考えるのは適切ではありません。地域に必要とされる診療科で、患者数を安定して確保でき、固定費や借入返済を無理のない範囲に抑えられていれば、収益性の高い経営を目指すことは可能です。

一方で、開業すれば必ず高収入になるわけでもありません。例えば、想定より患者数が伸びない、家賃や人件費が重い、医療機器や内装への投資が過大になると、売上があっても利益が残りにくくなります。開業医の収益性は、医師としての専門性だけでなく、事前の事業計画や立地選び、集患設計によって左右されます。

平均年収だけでは実態を判断しにくい

厚生労働省「第25回医療経済実態調査の概要」では、令和6年度の一般診療所・医療法人における院長給与は平均2,898万円、中央値2,280万円と示されています。一般病院の医師給与(平均1,484万円、中央値1,700万円)と比べると高い水準にあります。

ただし、平均値が中央値を上回っていることから、一部の高収入層が平均を押し上げている可能性があります。平均年収は実態を把握するうえで参考になるものの、個々のクリニックの経営状況をそのまま表すものではありません。

また、院長給与や医業収益の数字だけでは、実際の経営余力までは見えません。開業医は、税金、借入返済、設備更新、スタッフ採用、広告宣伝、将来の再投資なども考慮する必要があります。額面上の収入が高くても、固定費や返済負担が大きければ、手元に残る資金は少なくなることがあります。

そのため、開業医としての収益性を見る際は、「いくら売上があるか」「いくら給与を取れるか」だけでなく、「経費や返済を差し引いた後に、安定して資金が残るか」を確認することが重要です。

開業医が儲からないと言われる理由

開業医が儲からないと言われる背景には、売上の問題だけでなく、開業時の投資負担や毎月の固定費、患者数の伸び悩み、人材確保、経営判断の難しさなどがあります。勤務医の場合は給与として収入を得るのに対し、開業医はクリニックの売上から各種費用を支払い、借入返済や将来の再投資も見込まなければなりません。

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厚生労働省の資料「第25回 中医協医療経済実態調査(医療機関等調査)結果報告に対する見解」でも、一般診療所の損益率が悪化し、赤字施設の割合が一定数あることが示されています。また、給与費や材料費などの費用上昇も指摘されており、医業収益があっても利益を確保しにくい経営環境がうかがえます。

つまり、開業医が儲からないと言われるのは、単に患者数が少ないからではありません。開業前の資金計画、立地選び、固定費の設計、採用計画、集患施策が十分でない場合、売上が伸びても利益が残りにくくなる点に注意が必要です。

初期投資と借入返済の負担が大きい

クリニックを開業するには、物件取得費、内装工事費、医療機器費、電子カルテなどのシステム導入費、広告宣伝費、運転資金など、さまざまな費用が必要です。開業形態や診療科、物件条件によって金額は異なりますが、テナント開業の場合の一般的な開業資金は5,000万~1億円程度が目安とされています。

開業資金の多くを金融機関からの借入でまかなう場合、開業後は毎月の返済が発生します。患者数が十分に安定する前から返済が始まるため、開業初期は資金繰りに余裕がなくなりやすい点に注意が必要です。

また、初期投資を大きくしすぎると、開業後の損益分岐点が高くなります。内装や設備にこだわることは大切ですが、想定患者数や診療単価に対して投資額が過大になると、売上が一定程度あっても返済負担によって利益が残りにくくなります。

開業資金の内訳や診療科別の費用感については、関連記事「クリニック開業資金はいくら必要?内訳・診療科別相場・融資と自己資金の考え方」でも詳しく解説しています。

人件費・家賃・水道光熱費など固定費が重くなりやすい

クリニック経営では、患者数に関係なく毎月発生する固定費があります。代表的なものとして、スタッフの人件費、家賃、水道光熱費、医療機器のリース料、システム利用料、保守費用、広告宣伝費などが挙げられます。

特に人件費と家賃は、経営に大きな影響を与える費用です。受付、医療事務、看護師、リハビリスタッフなどを雇用する場合、患者数が少ない月でも給与の支払いは必要です。また、駅前や幹線道路沿いなど視認性の高い物件は集患面で有利に働く一方、賃料が高くなることもあります。

固定費が高い状態で開業すると、黒字化に必要な患者数も増えます。開業初期に患者数が想定を下回ると、売上よりも支出が先行し、資金繰りを圧迫する原因になります。そのため、開業前には月々の固定費を具体的に洗い出し、無理なく運営できる費用構造を作ることが重要です。

患者数が想定より伸びないと収益が安定しにくい

クリニックの収益は、患者数、診療単価、診療日数によって大きく左右されます。保険診療中心のクリニックでは、診療単価を自由に高く設定しにくいため、安定した患者数を確保できるかどうかが経営の重要なポイントになります。

開業前の想定より患者数が伸びない場合、固定費や借入返済をまかなうことが難しくなります。例えば、地域の人口構成と診療内容が合っていない、近隣に競合クリニックが多い、生活動線から外れている、駐車場が使いにくいといった要因があると、開業後の来院数が伸び悩む可能性があります。

また、広告宣伝や認知獲得の設計が不十分な場合も、開業初期の集患に時間がかかります。ホームページ、Googleビジネスプロフィール、看板、チラシ、内覧会などを組み合わせ、地域住民にクリニックの存在や診療内容を知ってもらう準備が必要です。

スタッフ採用・教育・定着にコストがかかる

クリニックを安定して運営するには、医師の診療だけでなく、スタッフの採用・教育・定着も欠かせません。看護師、医療事務、受付スタッフなどを採用する際には、求人広告費、面接対応、採用手続き、入職後の教育などに時間と費用がかかります。

採用できたとしても、すぐに円滑な運営ができるとは限りません。受付対応、会計、電話対応、電子カルテの操作、診療補助、患者様への説明など、クリニックごとの運用ルールを整え、スタッフに浸透させる必要があります。マニュアルや業務フローが整っていないと、院長が細かな確認や指示に追われ、診療に集中しにくくなることもあります。

さらに、離職が続くと再採用・再教育の負担が増えます。スタッフ不足によって予約枠を増やせない、待ち時間が長くなる、患者様応の質が安定しないといった問題が起きると、収益面にも影響します。人材確保を開業後の課題として後回しにせず、開業前から採用計画や教育体制を整えておくことが重要です。

医師としての診療に加えて経営判断が求められる

開業医は、医師であると同時に経営者でもあります。診療の質を高めるだけでなく、資金繰り、採用、スタッフ管理、広告宣伝、設備投資、地域連携、患者様対応など、幅広い判断が求められます。

勤務医時代は、経理、人事、広報、設備管理などを病院や法人の担当部署が担っているケースが多くあります。一方、開業後は院長自身が最終的な意思決定を行う場面が増えます。どのタイミングで広告宣伝を強化するか、スタッフを増員するか、設備投資を行うか、診療時間を見直すかといった判断が、経営結果に直結します。

経営判断が後手に回ると、固定費の増加、患者数不足、人材定着の失敗、資金繰りの悪化につながりやすくなります。開業医として収益を安定させるには、診療だけでなく、経営数値を確認しながら改善を続ける姿勢が必要です。開業前の段階から、資金計画や集患計画、採用計画を具体化し、必要に応じて専門家や支援先と連携できる体制を整えておくことが大切です。

儲からないクリニックの共通点

儲からないクリニックには、開業後の努力不足だけでなく、開業前の設計が十分でないという共通点があります。

診療圏の需要、競合との差別化、資金計画、立地と患者層の相性、広告宣伝の設計が曖昧なまま開業すると、想定した患者数を確保できず、固定費や借入返済の負担が重くなりやすくなります。

儲からないクリニックの共通点は、以下のとおりです。

共通点 起こりやすい問題
診療圏の需要を確認していない 地域の人口構成や医療ニーズと診療内容が合わず、患者数を確保しにくい
競合との差別化が曖昧 患者さまに選ばれる理由を作れず、既存クリニックとの比較で埋もれやすい
資金計画が甘い 診療報酬の入金までの運転資金や固定費の支払いに苦労しやすい
立地と患者層が合っていない 診療科ごとの患者層と生活動線がずれ、来院につながりにくい
広告宣伝や認知獲得の設計が不十分 地域住民に存在を知ってもらえず、開業初期の集患に時間がかかる

このようなリスクを抑えるには、開業前の段階で診療圏調査、競合分析、資金計画、物件選定、広告宣伝を一体で考える必要があります。

開業医が黒字経営を目指すために必要な収益設計

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開業医が黒字経営を目指すには、開業前の段階で売上、経費、運転資金、返済計画を具体的に確認しておくことが重要です。患者数が増えれば売上は伸びますが、固定費や借入返済が大きい場合、利益が十分に残らないこともあります。収益設計では、主に以下の点を確認しましょう。

売上見込みを具体化する
クリニックの売上は「患者数×診療単価×診療日数」で考えます。診療科によって診療時間や必要なスタッフ数は異なるため、無理なく対応できる患者数を設定することが大切です。

経費差し引き後の利益を見る
医業収益だけでなく、人件費、家賃、医薬品費、医療材料費、システム費、広告宣伝費、借入返済などを差し引いた後に利益が残るかを確認します。

運営効率を高める
保険診療中心の場合は診療単価を自由に設定できないため、患者数の確保と運営効率が重要です。予約管理、受付・会計導線、スタッフ配置を整える必要があります。

開業前の調査と事業計画を実施する
診療圏調査、競合分析、広告宣伝を行い、現実的な患者数を確保します。初期投資だけでなく、診療報酬の入金までの運転資金も含めて計画しましょう。

収益を安定させるには立地選びと開業前の設計が重要

クリニックの収益を安定させるには、診療内容や設備だけでなく、立地選びと開業前の設計が重要です。立地条件が良く見えても、診療科ごとの患者層や地域ニーズと合っていなければ、想定した患者数につながりにくくなります。

開業予定地を検討する際に確認したい主なポイントは、以下のとおりです。

確認項目 収益への影響
生活動線上にあるか 通勤、買い物、通学などの日常動線上にあると、地域住民に認知されやすく、来院のきっかけを作りやすい
視認性が高いか 道路沿いや商業施設の近くなど、目に入りやすい立地は、開業初期の認知獲得につながりやすい
駐車場・駐輪場を利用しやすいか 車や自転車で通院する患者様にとって利便性が高く、継続受診につながりやすい
周辺住民の年齢層や世帯構成が診療科と合っているか 地域住民の年齢層、世帯構成、生活動線と診療内容が合っていると、安定した来院を見込みやすい
ドラッグストア併設・近接立地か 買い物や薬の受け取りなどで日常的に利用される場所に近く、地域住民との接点を作りやすい
薬局との連携を図りやすいか 診療後に処方薬を受け取りやすく、患者様の利便性向上や地域医療連携につながりやすい
賃料や初期投資が過大でないか 固定費や返済額が大きくなりすぎると、患者数が増えても利益が残りにくくなる

開業地を選定する際は、立地の利便性だけで判断するのではなく、月間患者数、診療単価、診療日数、固定費、返済額をもとに損益分岐点を確認することが大切です。あわせて、開業初期の認知獲得に必要な広告宣伝も事前に設計しておきましょう。

「開業医は儲からない?」よくある質問

開業医は本当に儲からないのですか?

開業医が一律に儲からないわけではありません。収益性は、診療科、立地、患者数、固定費、借入返済、経営設計によって変わります。平均年収だけでなく、経費差し引き後の利益や手残りを見ることが重要です。

開業医が儲からない原因は何ですか?

主な原因は、初期投資や固定費の負担、患者数不足、競合との差別化不足、広告宣伝や認知獲得の設計不足です。開業前の診療圏調査や資金計画、物件選定が不十分だと、収益が安定しにくくなります。

開業医は勤務医より年収が高いですか?

開業医は勤務医より年収が高くなる傾向があります。ただし、人件費、家賃、設備費、借入返済、税金、再投資などを負担するため、額面収入と実際の手残りは分けて考える必要があります。

開業して黒字化するまでどれくらいかかりますか?

黒字化までの期間は、診療科、立地、初期投資、患者数、固定費によって異なります。診療報酬の入金にはタイムラグがあるため、開業直後の資金繰りには注意が必要です。

開業医として収益を安定させるには何が重要ですか?

開業前に診療圏調査、競合分析、資金計画、立地選定、広告宣伝を行うことが重要です。開業後も、来院数、診療単価、固定費、返済額を確認し、必要に応じて改善を続ける必要があります。

開業前の収益設計が重要

開業医は勤務医より高い収入を得られる可能性がある一方で、開業すれば必ず安定した収益を得られるわけではありません。売上だけでなく、経費や借入返済を差し引いた後に利益が残るかを確認し、開業前から収益設計を具体化しておくことが重要です。

そのためには、診療圏調査や競合分析を行い、地域の患者ニーズに合った立地や診療体制を検討する必要があります。資金計画や広告宣伝が不十分なまま開業すると、患者数が想定より伸びなかった場合に資金繰りが苦しくなる可能性があります。

また、ドラッグストア併設・近接立地は、日常的な買い物や薬の受け取りの場に近く、地域住民との接点を作りやすい点が特徴です。生活圏内で自然にクリニックを認知してもらいやすいため、地域に根ざした診療を行うクリニックにとって、開業初期の認知獲得や来院のきっかけづくりにつながる可能性があります。

開業・経営の成功には、立地や集患設計、地域連携など、診療以外の要素も大きく影響します。

コスモス薬品では、ドラッグストア併設・近接立地を中心とした物件のご提案や、広告宣伝の支援、薬局としての医療連携を通じて、クリニック運営をサポートしています。

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医療経営コンサルタント

土光 宜行

医療業界にて経営支援およびマーケティング業務に従事。開業支援、医療制度、集患戦略などを専門領域とし、現場経験とデータに基づいた実践的な情報発信を行っている。医療機関が将来を見据えた意思決定を行えるよう、制度動向や経営課題をわかりやすく解説。

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